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ウサギと靴

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 オレは、寝そべって空を見つめていた。青い空に白い雲。地球と変わらないなぁ。
 そよそよと吹く風は潮を含み、波の心地よい音が段々とオレを落ち着かせてくれる。

 「おいおい。どうしたんだよ」

 ロンドさんが、青白いだろうオレの顔を覗き込む。声は青年なのに見た目は獣人。ここが地球ではないと物語る。視線を避ける様に顔を横にそむけると、二人の足が目に入った。
 毛もじゃのごつい足。そう動物の足だ。靴などいらない。でも……。

 「オレは、靴がないと歩けないじゃないかぁ!!」
 「うお」

 オレが腹筋をするように叫びながら上半身を起こせば、ロンドさんが驚く。
 現実逃避をしていても仕方がない。

 「クツ?」
 「足に履くものだよ。知らない?」

 二人は顔を見合わせ、知っているか、いや知らないと言い合っている。
 あっそ。なんかオレだけ場違いな召喚されたような気がするんだけど。しかも戻れないなんて! どうすんだよぉ。
 動物の足には靴は必要ないのか。でもオレはただの人間、素足では外を歩けない。どうせなら靴も用意してくれたらよかったのに。まあ、本当は船から出す気がなかったのなら渡さないか。

 『ねえ、大丈夫? 靴になってあげようか』
 「へ?」

 今、かわいい声が聞こえたような。辺りを見渡すもオレ達しかいない。見張りがいるかもしれないが、声は出さないだろう。

 「今度はどうした」

 レックスさんが困り顔でオレを見ている。
 あ、めんどくさいやつだと思ってないか?

 「いや、今かわいい声聞こえませんでした?」
 「声? 聞こえたか?」
 「いや、何も。あ、鳥の鳴く声ぐらいは聞こえるな」

 レックスさんの問いにロンドさんが、空を見上げ答えた。空にはカモメだと思われる白い鳥が飛んでいる。うむ。ちゃんと鳥もいるんだな。

 『かわいいだなんて。ありがとう。声を褒められたのは初めてだわ』
 「………」

 オレは、声の主に振り返った。そう、あの黒いウサギだ。ウサギがしゃべっている! あ、夢だから何でもあり――いや夢じゃないんだった。この世界はなんでもありなのかぁ?

 「あー!! 何が何だかもうわかんない」

 オレは、頭を抱えた。
 いや、獣人の二人とも普通に会話が出来ているんだから、ウサギとも会話出来ても不思議じゃない。うん。
 今更ながら、話せる状況安堵した。言葉が通じなかったら置いてけぼりにされていたかもしれないし。

 「彼、大丈夫か? この状況に耐えられないみたいだけど」
 「子供だからなぁ。まだ泣き叫ばないだけいいが……」

 二人ともオレの事、子供だと思ってるんだ。しかもきっと小さな子供。
 彼らでかいから、オレぐらいの背丈だと子供扱いなんだ。あいつらもそう言っていたし。
 ほ、本当は泣き叫びたいんだけどね。
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