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第9話
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「お父様!」
屋敷の中に入れば、ポールアード伯爵と同じ髪色をしたエリザが驚きの声を上げた。彼女との面識はない。なので初めて会うけど、それは彼女も同じはず。なのに、思いっきり睨まれた。そっちが悪いんだろう!
「どういう事ですの?」
「あら、こちらのお嬢様ですか? 初めまして。私はシーダー。冒険者ギルドのサブリーダーをしております。でこちらは、ルトルゼン・クレットさん。ご存じですよね? リサ・クレットさんの弟です」
「私は、アドルフ・リダルです。たった今、あなたのお父様はルトルゼン・クレットさんを貶めたと審議で確定しました」
「え……どういう事?」
それは知らなかったか。まあ、毒殺未遂は彼女の協力がなければできないからある程度は知っているだろうけど。
「む、娘は関係ない!」
「そのようですね」
シーダーさんが言うと、ポールアード伯爵は頷く。
「だが、監禁の事は知らないわけはないでしょう。何せ今日は、ここでお茶会を開いたのですから」
アーバンさんが言うと、エリザがビクッと体を震わせた。
「だから娘は関係ないと言っている」
「では、毒殺の件はいかがです? あなたが証言したのですよね?」
そうスカモンレさんが聞くと、エリザが青ざめる。
「わ、私は、被害者ですわ」
「そうですか、ではもう一度証言願います」
「なぜ! 一度で十分でしょう」
「そうですか。では、容疑のかかっているリサ・クレットさんにお聞きしましょう。彼女はまだ審議を受けていないと聞きました」
「おやめ頂けますか? お嬢様は、今日の事でお疲れになっています」
「あなたは?」
水色の髪をきっちりと真ん中で分けた年配の執事だと思われる男が現れた。
「失礼致しました。私は、執事長のイマールと申します。リサ様は、お部屋で休んでおられます。少し誤解があるようですが、彼女はショックを受け休んでおられるだけです。迎えに来たクレット男爵様とご一緒です」
何が迎えに来ただ。連行したくせに。
「そうですか。お会い出来ますか」
「はい。今、呼んでまいります」
「いや結構。こちらから出向きます。案内をお願いします」
「……承知致しました」
イマールに皆ついて行く。
トントントン。
「クレット様、お客様がお見えです」
「はい。どうぞ」
イマールが扉を開けると、父さんがこっちを向いて立っていた。その横にベッドがあり姉さんが横たわっている。
「姉さん!?」
「大丈夫だ。寝ているだけだ」
父さんの言葉に安堵する。僕は、二人に近づいた。
「連れて来てくれたのだな。ありがとう」
「うん。僕が頑張ったというよりは、シーダーさんの手腕が凄いと思う」
僕がシーダーさんを指さすと、なるほどと頷いた。
もしかして知っている?
「彼女の噂は聞いている。男顔負けのやり手だとね」
「そうなんだ」
「寝ているようね」
安堵したようにエリザが言った。
「そのようね。では、代わりに違う方に聞きましょう」
「違う方?」
「えぇ、お茶を入れた方。彼女は毒を飲んでいないのだからぴんぴんしているでしょう?」
「シーダーさんの言う通りですね。では、その方を呼んで来て下さい」
「な、彼女にはお暇を出しました」
スカモンレさんの言葉に驚いてエリザが言う。逃がしたのか。
「それは本当ですか?」
「そ、そうよ」
「では、マコトのオーブで検証しましょう」
「なぜ、そこまで!」
「彼女の言葉を判断できるのは、オーブのみですので。それにポールアード伯爵。あなたには発言権はないのですよ。今すぐに警察署に連行されたくなければ、お静かに」
にっこりとシーダーさんが言った。今、エリザの味方になって意見を強く言えるものなどここにはいない。ポールアード伯爵には、発言の権利はないのだから。
エリザは青ざめる。
「失礼します、お嬢様。彼女は、疲れて部屋で寝ているだけで、出て行ってはおりませんよ。少し混乱なさっているようですね。お部屋でお休みください」
「勝手をしてもらっては困ります」
「お嬢様が倒れられたらどういたします。クレアを連れてまいります。それでよろしいのではないでしょうか」
スカモンレさんにイマールがそう答えた。彼もやり手みたいだ。
「そうですか。それならいいでしょう」
スカモンレさんが、納得し頷いた。
少しすると、エリザと入れ替わりにお茶を入れたメイドが現れた。本当にいたんだ。
「し、失礼します」
彼女は、俯き震えている。
まあ彼女も被害者と言えば被害者だよね。無理やり協力させられただろうから。
「では、刑事部調査室スカモンレが見届け人を引き受けた。シーダー殿、あなたは毒殺未遂の件についてのみ質問できます。クレア殿、その件については必ず答える様に、両者よろしいですね」
「はい」
「は、はい……」
震える手でクレアは、マコトのオーブに手を乗せた。
「まず、あなたはクレアさんで間違いありませんね」
「はい」
青く光った。クレアさんだ。
「では、クレアさん。今日行われたお茶会でお茶を入れましたか?」
「はい。入れました」
これも青く光った。今日のお茶会でお茶を入れたのは彼女だ。
「では、あなたはお茶に毒を入れましたか」
「いいえ」
しっかりと答えた。それにも青く光った! 入れたのは彼女ではない!?
「では、毒を入れたのはエリザ嬢ですか?」
「わかりません」
「「………」」
これにも青く光った。どういう事?
「では、エリザ嬢がティーポットに何かを入れましたか?」
「私は、見ておりません」
また青だ。嘘は言っていない。
「……では、リサ・クレットさんがティーポットに触れましたか?」
「わかりません」
なんと、それも青く光った。どういう事?
さすがにシーダーさんにも焦りが見える。
「もう宜しいでしょうか? 彼女も疲れておりますので……」
イマールさんがそう言った。
「それに私も忙しいので、そろそろ仕事に戻ってもよろしいでしょうか?」
「くそう。どうなっていやがる」
アーバンさんがそう呟く。皆言葉に出さないけど、アーバンさんと同じだろう。
毒を入れたのは、クレアさんではないのは確かだ。でもこれでは、姉さんの嫌疑は晴れない。
まずいかもしれない。今、ポールアード伯爵の作戦がわかった。今更思い出したけど、マコトのオーブが使用できるのは、事があった時から二十四時間以内とされていたはず。記憶というものは、曖昧になりやすく、時間が経つとすり替わる事もある為だ。
なので、今証言を取れないと、連行したくてもポールアード伯爵のみになる。
その間に、手を打たれる可能性がある!
というか、毒殺未遂については、エリザの証言が有効になる。そうなれば、僕の方は、なんとでもできる。たまたまマスターが出かけていたのを知っていたので、僕を動けないようにした。手配は、事が起こってから。理由は、僕の逆恨みでさらに被害が出ないようにとでもいえばいい。
冒険者を使い、僕を閉じ込めた事は認めても毒殺未遂のでっち上げの事は認めなくてもいい。
どうしたらいいんだ!
屋敷の中に入れば、ポールアード伯爵と同じ髪色をしたエリザが驚きの声を上げた。彼女との面識はない。なので初めて会うけど、それは彼女も同じはず。なのに、思いっきり睨まれた。そっちが悪いんだろう!
「どういう事ですの?」
「あら、こちらのお嬢様ですか? 初めまして。私はシーダー。冒険者ギルドのサブリーダーをしております。でこちらは、ルトルゼン・クレットさん。ご存じですよね? リサ・クレットさんの弟です」
「私は、アドルフ・リダルです。たった今、あなたのお父様はルトルゼン・クレットさんを貶めたと審議で確定しました」
「え……どういう事?」
それは知らなかったか。まあ、毒殺未遂は彼女の協力がなければできないからある程度は知っているだろうけど。
「む、娘は関係ない!」
「そのようですね」
シーダーさんが言うと、ポールアード伯爵は頷く。
「だが、監禁の事は知らないわけはないでしょう。何せ今日は、ここでお茶会を開いたのですから」
アーバンさんが言うと、エリザがビクッと体を震わせた。
「だから娘は関係ないと言っている」
「では、毒殺の件はいかがです? あなたが証言したのですよね?」
そうスカモンレさんが聞くと、エリザが青ざめる。
「わ、私は、被害者ですわ」
「そうですか、ではもう一度証言願います」
「なぜ! 一度で十分でしょう」
「そうですか。では、容疑のかかっているリサ・クレットさんにお聞きしましょう。彼女はまだ審議を受けていないと聞きました」
「おやめ頂けますか? お嬢様は、今日の事でお疲れになっています」
「あなたは?」
水色の髪をきっちりと真ん中で分けた年配の執事だと思われる男が現れた。
「失礼致しました。私は、執事長のイマールと申します。リサ様は、お部屋で休んでおられます。少し誤解があるようですが、彼女はショックを受け休んでおられるだけです。迎えに来たクレット男爵様とご一緒です」
何が迎えに来ただ。連行したくせに。
「そうですか。お会い出来ますか」
「はい。今、呼んでまいります」
「いや結構。こちらから出向きます。案内をお願いします」
「……承知致しました」
イマールに皆ついて行く。
トントントン。
「クレット様、お客様がお見えです」
「はい。どうぞ」
イマールが扉を開けると、父さんがこっちを向いて立っていた。その横にベッドがあり姉さんが横たわっている。
「姉さん!?」
「大丈夫だ。寝ているだけだ」
父さんの言葉に安堵する。僕は、二人に近づいた。
「連れて来てくれたのだな。ありがとう」
「うん。僕が頑張ったというよりは、シーダーさんの手腕が凄いと思う」
僕がシーダーさんを指さすと、なるほどと頷いた。
もしかして知っている?
「彼女の噂は聞いている。男顔負けのやり手だとね」
「そうなんだ」
「寝ているようね」
安堵したようにエリザが言った。
「そのようね。では、代わりに違う方に聞きましょう」
「違う方?」
「えぇ、お茶を入れた方。彼女は毒を飲んでいないのだからぴんぴんしているでしょう?」
「シーダーさんの言う通りですね。では、その方を呼んで来て下さい」
「な、彼女にはお暇を出しました」
スカモンレさんの言葉に驚いてエリザが言う。逃がしたのか。
「それは本当ですか?」
「そ、そうよ」
「では、マコトのオーブで検証しましょう」
「なぜ、そこまで!」
「彼女の言葉を判断できるのは、オーブのみですので。それにポールアード伯爵。あなたには発言権はないのですよ。今すぐに警察署に連行されたくなければ、お静かに」
にっこりとシーダーさんが言った。今、エリザの味方になって意見を強く言えるものなどここにはいない。ポールアード伯爵には、発言の権利はないのだから。
エリザは青ざめる。
「失礼します、お嬢様。彼女は、疲れて部屋で寝ているだけで、出て行ってはおりませんよ。少し混乱なさっているようですね。お部屋でお休みください」
「勝手をしてもらっては困ります」
「お嬢様が倒れられたらどういたします。クレアを連れてまいります。それでよろしいのではないでしょうか」
スカモンレさんにイマールがそう答えた。彼もやり手みたいだ。
「そうですか。それならいいでしょう」
スカモンレさんが、納得し頷いた。
少しすると、エリザと入れ替わりにお茶を入れたメイドが現れた。本当にいたんだ。
「し、失礼します」
彼女は、俯き震えている。
まあ彼女も被害者と言えば被害者だよね。無理やり協力させられただろうから。
「では、刑事部調査室スカモンレが見届け人を引き受けた。シーダー殿、あなたは毒殺未遂の件についてのみ質問できます。クレア殿、その件については必ず答える様に、両者よろしいですね」
「はい」
「は、はい……」
震える手でクレアは、マコトのオーブに手を乗せた。
「まず、あなたはクレアさんで間違いありませんね」
「はい」
青く光った。クレアさんだ。
「では、クレアさん。今日行われたお茶会でお茶を入れましたか?」
「はい。入れました」
これも青く光った。今日のお茶会でお茶を入れたのは彼女だ。
「では、あなたはお茶に毒を入れましたか」
「いいえ」
しっかりと答えた。それにも青く光った! 入れたのは彼女ではない!?
「では、毒を入れたのはエリザ嬢ですか?」
「わかりません」
「「………」」
これにも青く光った。どういう事?
「では、エリザ嬢がティーポットに何かを入れましたか?」
「私は、見ておりません」
また青だ。嘘は言っていない。
「……では、リサ・クレットさんがティーポットに触れましたか?」
「わかりません」
なんと、それも青く光った。どういう事?
さすがにシーダーさんにも焦りが見える。
「もう宜しいでしょうか? 彼女も疲れておりますので……」
イマールさんがそう言った。
「それに私も忙しいので、そろそろ仕事に戻ってもよろしいでしょうか?」
「くそう。どうなっていやがる」
アーバンさんがそう呟く。皆言葉に出さないけど、アーバンさんと同じだろう。
毒を入れたのは、クレアさんではないのは確かだ。でもこれでは、姉さんの嫌疑は晴れない。
まずいかもしれない。今、ポールアード伯爵の作戦がわかった。今更思い出したけど、マコトのオーブが使用できるのは、事があった時から二十四時間以内とされていたはず。記憶というものは、曖昧になりやすく、時間が経つとすり替わる事もある為だ。
なので、今証言を取れないと、連行したくてもポールアード伯爵のみになる。
その間に、手を打たれる可能性がある!
というか、毒殺未遂については、エリザの証言が有効になる。そうなれば、僕の方は、なんとでもできる。たまたまマスターが出かけていたのを知っていたので、僕を動けないようにした。手配は、事が起こってから。理由は、僕の逆恨みでさらに被害が出ないようにとでもいえばいい。
冒険者を使い、僕を閉じ込めた事は認めても毒殺未遂のでっち上げの事は認めなくてもいい。
どうしたらいいんだ!
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