ランクアップ!~枕が誘(いざな)う夢の世界で……

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
28 / 61
チーム『ミチル』

028

しおりを挟む
 私は毒の沼に歌いながら向かっていた――。


 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 まるで口ずさむ様に足取りも軽い。


 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 体が光に包まれた。

 歌は一分以内に同じ歌を歌っても発動しないらしい。MPもSPも消費しないので、練習の為に歌っていた。


 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 うん。覚えた。
 そうだSPの方も覚えよう。暇だし。

 毒の沼に到着し、沼を背にする。


 「ステータスオープン」


 SPの歌はまだ覚えていないので見ながら歌う事にした。


 「研ぎ澄まされた技を使う者の癒しの時間。みなぎる力の源よ。蘇れ♪ 優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 私の体は二度光に包まれた。

 おぉ続けて歌ってもちゃんとカウントしてくれている!
 いや本当に詩人をサブにしてよかったぁ。


 「ねえ、なつめ。この髪を掴んでもいい?」


 私の左肩に座るシシリーが突然そう言ってきた。
 落ちそうとか? 飛べるのに?


 「別にいいけどなんで?」

 「隠れる為よ」


 あぁ。そういう事。

 シシリーは、髪を前にして隠れた。


 「でもそれ、一部分だけだし、歩いたら揺れて見えちゃうと思うけど……」

 「やっぱり、そう? 咄嗟だと見つかっちゃうと思うのよね……。村に行くんだよね? もう一層の事オープンにしちゃう?」

 「え? 変に思われない? シシリーが見つかった時、結構注目されたんだけど……」

 「私達が騒いだからね。私はどっちでも構わないわよ」


 そう言えば、シシリーって私以外の人でも触れらるのかな?


 「ねえ、シシリーって他の人に見えるだけじゃなくて、触れるの?」

 「えぇ、そうね」


 頷いで答えた。


 「と、いう事は誘拐される可能性もあるんだ!」

 「まあ、なくもないけど。私を連れ去っても意味ないけどね」


 そうかもしれなけど、珍しいのだからありえるよね? 私は連れ去ろうとは思わないけど、手に入れる方法を知りたくなるわ!
 そう考えると、シシリーが見えると厄介よね……。
 なんかいい方法ないかな?
 そうだ服にポケットとかないのかな?

 私は神官の服を触って確かめるもポケットはなかった。
 うん? あった! ポケットの代わりになるもの!


 「ねえ、シシリー。これに潜れる?」


 指差したのは、腰にぶら下がっている寝袋。
 もうほとんど使う事もないだろうから、シシリー用にしても問題ないよね?


 「どれどれ……」


 シシリーは、足から寝袋に入って行く。


 「これいいわ~」

 「よし! 解決!」


 問題は、歩いたら揺れるから酔わないかだけど、妖精だから大丈夫だよね?


 『ミチルだけど、もう少しで着くから、毒の沼の前に集合な!』

 「ミチルへ――はーい! ……どうぞ」


 勘があたったわ! 待ち合わせにちょうどいいもんね。


 「お待たせ!」


 ほどなくしてミチルは現れた。


 「いえ。わざわざ来てくれてありがとう」

 「あ、でさ、悪いんだけどもう一回だけお願いしていい?」


 そう言って出して来たのは、巾着袋。ミチルは、五つ葉の採取を要求してきた!


 「え? 終わりって言ったよね?」

 「あ、いや。これ俺の。お金も払うからさ。宜しく頼むよ。はい、100G」


 抜かりないわね、この人……。

 ニッコリしてミチルは立っている。
 仕方なく、100Gと巾着袋を受け取り、毒の沼に入る。

 100個入れ終わると、ミチルに渡した。


 「サンキュ。いやぁ、助かった。これでランク上げられる!」

 「そ、それはよかったわね」


 まあ、いいか。ついでだしね。


 「うんじゃ、チーム組もうぜ」


 ミチルは手を出して来た。今回は、手のひらを下にしている。握手ではなさそう。


 「えっと……」

 「あ、そっか。この上に手を重ねて」


 え……。気合い入れるあれみたいですね。エイエイオーって……。
 そっと、手を重ねる。


 《チーム『ミチル』に入りますか?》


 「はい……」


 《チーム『ミチル』に入りました》


 何と言うかこのゲーム、アクション? が恥かしいのですが……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!! 皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました! ありがとうございます! VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。 山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・? それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい! 毎週土曜日更新(偶に休み)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...