6 / 47
5話 油断ならない相手
しおりを挟む
部屋に戻ったミキは、ソファーに座ると、閉じてあったノートパソコンを開く。
「さてと記録しておくかな」
カチカチとまず、現場の状況を入力していく。
「現場の状況から察すると、壁に頭を打ち付けて亡くなったみたいだったよね? 壁に血痕があったし。まあ、その反動で前に倒れるって事もあるけど……」
ミキは、楠の倒れ方思い出す。
うつ伏せに両手両足とも真っ直ぐに伸びた状態で、まるで整えたようだった。
壁に激突して倒れたのであれば、手足のどこかが曲がって居たり、広がっていたりしてもおかしくはない。
そう楠の遺体は、気をつけをした格好だった!
「あれは寝かせたんだよね? しかし、何でわざわざそんな事を?」
考えを巡らせみるが、何も思いつかなかった。
「それに昨日の女性が楠さんだったのなら、犯行時刻は一時から一時半になるわよね?」
帰って来てから楠の部屋は静かだった。壁に打ち付けたとしたら、その音ぐらいは聞こえるはずだとミキは思った。
「まさか靴を戻しに行ってる数分間の犯行? いやいや、ありえない!」
犯行は、計画的ではないだろう。壁に打ち付けて殺す殺し方が、計画的だとしたら驚きだ!
だとしたならば、殺す前に何か出来事があったはず。そう考えると、昨日見た女性は楠ではない事になる。
ミキは頭を悩ませる。
女性はどこに消えたのか!
「残りの女性客二人の伊藤さんと相内さんは、十二時過ぎまで一緒にいたし……。スタッフの三人は違うし。まさか、オーナーの棟方さん? 年齢はあれだけど、暗かったしありえるかも!」
ミキは、本当は昨日の夜に、棟方は戻っていたのではないか? そう推理した。
テーブルの上にあった案内書を手に取ると、案内図を見て確認する。
「通路の突き当りが、オーナーの部屋になってる。普段はここにいるのかもしれない。うーん。でも犯人ではないよね?」
昨日の女性が楠でなくなれば、犯行時刻は二十三時半からという事になるが、十二時過ぎに隣から声が聞こえていた。たぶんあの後、殺されたのだろうと推測される。そうなると、逆に棟方にはアリバイがある事になる。
「伊藤さんと相内さんと八田さんの三人は、十二時過ぎまで一緒という事は、犯人ではない。残るは、スタッフと堀さん、遊佐さんか……」
トントントン。
「すまない。遊佐だが、少し話がある。開けてくれないか」
ドアがノックされ声がかかる。
――遊佐さんが何の用事? あの人色々うるさくてメンドイのに。……いや、揺さぶるチャンスかも!
ミキは、ノートパソコンを布団の中に隠すと、ハーイと返事をしドアを開けた。
「あ、刑事さん……」
遊佐の隣には、伊東も立っていた。
「少しお話宜しいですか?」
「どうぞ」
ミキは、驚くも二人を招き入れる。
「座ります?」
「いえ、結構です。えっと、彼からお話し聞きまして……」
ミキは、チラッと遊佐を見た。
刑事の伊東がいなくなった後の会話は別に、刑事が訪ねてくるような事を言ってないはずだと思い、彼は何を言ったのだろうと考えを巡らせる。
「ミキさん、我々が来る前に遺体に近づき、妙な行動を取っていたとか……」
――それか!
遺体の状況をレコーダーに録音をしていた時の事を警察に話したらしい。
ミキは、余計な事をと思いつつも答える。
「妙とは?」
「何かブツブツと言っていたようですね。申し訳ありませんが、スマホを拝見できますか?」
「は? なんで?」
「録音をなさっていたのではないかと……」
「普通なら動画だけど、君は手に持っていなかった。ブツブツ言っていたのは録音していたからだろう? 違うのなら素直に見せたほうがいい」
遊佐が刑事の伊東を差し置いて、ミキに説明した。
ミキもそうだが、遊佐も相手が刑事でも恐縮しない性格のようだ。
――入れ知恵したのはこいつか!
遊佐は油断ならないと、ミキは思った。
「別にいいけど。スマホで録音なんてしてないし」
だがミキも怯まない。言った台詞に嘘はない。
スマホのロックを解除すると、伊東に手渡す。
「他は触らないでね。私じゃなくて、相手の個人情報だから」
「わかってます。ないですね……」
スマホを見ながら伊東は呟くと、スッと伊東からミキはスマホを取り戻した。
「当たり前でしょ?」
伊東は困り顔になるが、遊佐は突然ミキの前に手を出す。
「な、何よ?」
「ボイスレコーダーを持っているんだろ? だせ!」
ミキは、その言葉にギョッとする。
――こいつ何者!?
目の前にいる刑事の伊東より鋭く、どっちが刑事かわからないぐらいだ。
「は? そんなの持ってる訳じゃないでしょ?」
「いや、スマホに録音していないのであれば、持っているはずだ」
ミキは、ふんっとソファーに腰掛けた。
「あれは独り言よ。癖なの!」
「ほう。君の独り言は、時刻や性別まで呟くのか」
遊佐は、座ったミキの後ろに立ち、背もたれに手を付き少し前かがみで言った。
全部わかっていて、今まで言っていたのだ。
「さてと記録しておくかな」
カチカチとまず、現場の状況を入力していく。
「現場の状況から察すると、壁に頭を打ち付けて亡くなったみたいだったよね? 壁に血痕があったし。まあ、その反動で前に倒れるって事もあるけど……」
ミキは、楠の倒れ方思い出す。
うつ伏せに両手両足とも真っ直ぐに伸びた状態で、まるで整えたようだった。
壁に激突して倒れたのであれば、手足のどこかが曲がって居たり、広がっていたりしてもおかしくはない。
そう楠の遺体は、気をつけをした格好だった!
「あれは寝かせたんだよね? しかし、何でわざわざそんな事を?」
考えを巡らせみるが、何も思いつかなかった。
「それに昨日の女性が楠さんだったのなら、犯行時刻は一時から一時半になるわよね?」
帰って来てから楠の部屋は静かだった。壁に打ち付けたとしたら、その音ぐらいは聞こえるはずだとミキは思った。
「まさか靴を戻しに行ってる数分間の犯行? いやいや、ありえない!」
犯行は、計画的ではないだろう。壁に打ち付けて殺す殺し方が、計画的だとしたら驚きだ!
だとしたならば、殺す前に何か出来事があったはず。そう考えると、昨日見た女性は楠ではない事になる。
ミキは頭を悩ませる。
女性はどこに消えたのか!
「残りの女性客二人の伊藤さんと相内さんは、十二時過ぎまで一緒にいたし……。スタッフの三人は違うし。まさか、オーナーの棟方さん? 年齢はあれだけど、暗かったしありえるかも!」
ミキは、本当は昨日の夜に、棟方は戻っていたのではないか? そう推理した。
テーブルの上にあった案内書を手に取ると、案内図を見て確認する。
「通路の突き当りが、オーナーの部屋になってる。普段はここにいるのかもしれない。うーん。でも犯人ではないよね?」
昨日の女性が楠でなくなれば、犯行時刻は二十三時半からという事になるが、十二時過ぎに隣から声が聞こえていた。たぶんあの後、殺されたのだろうと推測される。そうなると、逆に棟方にはアリバイがある事になる。
「伊藤さんと相内さんと八田さんの三人は、十二時過ぎまで一緒という事は、犯人ではない。残るは、スタッフと堀さん、遊佐さんか……」
トントントン。
「すまない。遊佐だが、少し話がある。開けてくれないか」
ドアがノックされ声がかかる。
――遊佐さんが何の用事? あの人色々うるさくてメンドイのに。……いや、揺さぶるチャンスかも!
ミキは、ノートパソコンを布団の中に隠すと、ハーイと返事をしドアを開けた。
「あ、刑事さん……」
遊佐の隣には、伊東も立っていた。
「少しお話宜しいですか?」
「どうぞ」
ミキは、驚くも二人を招き入れる。
「座ります?」
「いえ、結構です。えっと、彼からお話し聞きまして……」
ミキは、チラッと遊佐を見た。
刑事の伊東がいなくなった後の会話は別に、刑事が訪ねてくるような事を言ってないはずだと思い、彼は何を言ったのだろうと考えを巡らせる。
「ミキさん、我々が来る前に遺体に近づき、妙な行動を取っていたとか……」
――それか!
遺体の状況をレコーダーに録音をしていた時の事を警察に話したらしい。
ミキは、余計な事をと思いつつも答える。
「妙とは?」
「何かブツブツと言っていたようですね。申し訳ありませんが、スマホを拝見できますか?」
「は? なんで?」
「録音をなさっていたのではないかと……」
「普通なら動画だけど、君は手に持っていなかった。ブツブツ言っていたのは録音していたからだろう? 違うのなら素直に見せたほうがいい」
遊佐が刑事の伊東を差し置いて、ミキに説明した。
ミキもそうだが、遊佐も相手が刑事でも恐縮しない性格のようだ。
――入れ知恵したのはこいつか!
遊佐は油断ならないと、ミキは思った。
「別にいいけど。スマホで録音なんてしてないし」
だがミキも怯まない。言った台詞に嘘はない。
スマホのロックを解除すると、伊東に手渡す。
「他は触らないでね。私じゃなくて、相手の個人情報だから」
「わかってます。ないですね……」
スマホを見ながら伊東は呟くと、スッと伊東からミキはスマホを取り戻した。
「当たり前でしょ?」
伊東は困り顔になるが、遊佐は突然ミキの前に手を出す。
「な、何よ?」
「ボイスレコーダーを持っているんだろ? だせ!」
ミキは、その言葉にギョッとする。
――こいつ何者!?
目の前にいる刑事の伊東より鋭く、どっちが刑事かわからないぐらいだ。
「は? そんなの持ってる訳じゃないでしょ?」
「いや、スマホに録音していないのであれば、持っているはずだ」
ミキは、ふんっとソファーに腰掛けた。
「あれは独り言よ。癖なの!」
「ほう。君の独り言は、時刻や性別まで呟くのか」
遊佐は、座ったミキの後ろに立ち、背もたれに手を付き少し前かがみで言った。
全部わかっていて、今まで言っていたのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。
幻影のアリア
葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、とある古時計のある屋敷を訪れる。その屋敷では、不可解な事件が頻発しており、葉羽は事件の真相を解き明かすべく、推理を開始する。しかし、屋敷には奇妙な力が渦巻いており、葉羽は次第に現実と幻想の境目が曖昧になっていく。果たして、葉羽は事件の謎を解き明かし、屋敷から無事に脱出できるのか?
学園ミステリ~桐木純架
よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。
そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。
血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。
新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。
『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。
迷子の人間さん、モンスター主催の『裏の学園祭』にようこそ
雪音鈴
ミステリー
【モンスター主催の裏の学園祭について】
≪ハロウィンが近い今日、あちら側とこちら側の境界は薄い――さあさあ、モンスター側の世界に迷い込んでしまった迷子の人間さん、あなたはモンスター主催のあるゲームに参加して、元の世界に帰る権利を勝ち取らなくてはいけません。『裏の学園祭』が終わる前にここから抜け出すために、どうぞ頑張ってください。ああ、もちろん、あなたがいるのはモンスターの世界、くれぐれも、命の危険にはご用心を――≫
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
「ここへおいで きみがまだ知らない秘密の話をしよう」
水ぎわ
ミステリー
王軍を率いる貴公子、イグネイは、ある修道院にやってきた。
目的は、反乱軍制圧と治安維持。
だが、イグネイにはどうしても手に入れたいものがあった。
たとえ『聖なる森』で出会った超絶美少女・小悪魔をだまくらかしてでも――。
イケメンで白昼堂々と厳格な老修道院長を脅し、泳げないくせに美少女小悪魔のために池に飛び込むヒネ曲がり騎士。
どうしても欲しい『母の秘密』を手に入れられるか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる