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27話
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楽しい素敵な時間は、過ぎ去った。
そして今夜、初夜を迎えます!
婚姻はしていたけど、一緒に暮らすのは結婚式をしてからとお父様が言うので一か月間、家族で思い出作り……はしていない。いつも通りの日常を過ごしていた。
ロデとして今まで通り、一日を謳歌。いいのだろうか。このままで。これからも帰る場所が変わるだけでロデとして生活が出来る。
「も、もしかして緊張している?」
隣に座っているルティロン様が心配そうに私を見ていた。
「す、少し。だって、まさかここで一夜を過ごすなんて……」
そう。王城に一泊を準備してくれていた。普通ではあり得ない事。
よっぽど、ラフリィード侯爵家に信頼を寄せているのね。次期外交官のルティロン様に期待していらっしゃる。あれ、継がないのだっけ? まあそれを陛下は知らないのかもしれない。
侯爵家も広かったけど、この部屋も豪華。ベッドも凄く大きくお父様が三人寝ても大丈夫ぐらいだわ。そこに私達は、腰を下ろし座っていた。
緊張するなという方が無理だわ。
「明日、寝坊しなようにしないと……」
メロディーナが結婚した事は、ロデには関係ないので今日休んだので明日は出勤しなくてはいけない。
「うん。そうだね」
「次の日からは、一緒に出掛けてるのよね?」
「うん」
まさか、夫人とルティアン嬢が私の正体、いえロデの正体を知らないとは思わなかった。二人には伝えておらず、折を見て伝えるからそれまではあのドレスを着ている様に見えるコートを着用して、ルティロン様と一緒に馬車へ乗り込む手筈になっていた。
もう話してしまった方がよいのではないのかしら? そこまでしてなぜ隠しているのかしら?
「あの、お義母様にロデが私だともう教えてしまった方が宜しいのではないでしょうか? 後々になった方が色々と事が大きくなりませんか?」
「あぁ……」
そう私が言うと、ルティロン様が遠い場所を見つめる。
「言いづらいけど、普通のお嬢様が男として生活しているなどあり得ない事なんだ」
「はい。承知しております」
だからこそ、身バレしないように過ごしていたのですから。
「たぶん、母上は今知ったら認めてはくれない」
「え? 結婚前だと大反対されるだろうからとは思っていたけど、やはり諦めてはくれません?」
「君の家族は寛大というか、騎士の家柄だからまあバレなければOKだったのだろうけど、一般いや、外交官をやっている息子の嫁がとなるとそうは行かないんだよ」
「えぇ~!! で、でも、ラフリィード侯爵は認めて下さったのですよね?」
「……えーと、認めざるを得なかったかな」
「では私は、認められていなかったのですね……」
ロデとしての活躍を認めて下さったとばかり。ではこの結婚は、ご迷惑だったのではないのかしら? ルティロン様は本当に私を好きになって下さったの?
「誤解しないで! 君を好きでロデの事を認めている、俺は! だから本来の姿のメロディーナを母上にもちゃんと紹介したい。だが、父上に止められた。結婚を認める代わりにね」
「え……」
「父上がメロディーナを認めていないってわけではないからね。母上を納得させる事が今の段階では出来ないって事なんだ。このままだと、ケイハース皇国に移住しちゃいそうだからね……」
移住か。何となく、この国にいい印象を持ってない様子だったものね。
外交官なのに妻が他国に移住はまずいよね。
この国の外交官は、何名かおり、担当国に見聞を広める為に数年間その国で過ごす。
ラフリィード侯爵もルティロン様が産まれた頃にケイハース皇国で過ごし、彼が幼い時には帰国していた。一人で。夫人がそのまま子供と一緒に居座ってしまったらしい。
世間的には、子供が体が弱く長旅が無理という事でそのままケイハース皇国に残った事になっていた。
今回、予定より少し早くルティロン様が帰国したけど、元々16歳になったら帰国する予定だったみたい。
ただ夫人とルティアン嬢は、ケイハース皇国に残りたいと思っている様で、今回の事件によって余計に帰りたくなかったようです。
なので、ルティロン様の婚約と言う事で呼び寄せた。
それがそのまま結婚になってしまったわけで……。
「確かに今言えば、騙したと怒ってケイハース皇国に戻ってしまうかもしれませんね」
「そういう事。はぁ……。まあ俺もルティアンも向こうで育ったからこの国の者っていう感覚はないけどさ、母上は違うはずなのになぁ」
「確かにそうですわね。よほどケイハース皇国が肌にあったのですね」
「みたいだね。それにしても余裕だね?」
「余裕?」
「も、もしかして、経験あるとか?」
「経験? ……あるわけないでしょう!!!」
私は、顔を真っ赤にして叫んだ。ずっとロデとして過ごしていたのだから。
「よかったぁ。全部俺のも」
そう言ってルティロン様が、そっと抱きしめて来た。
驚くも嫌ではない。むしろ、このままギュッとしてほしい。
「今日しかゆっくり出来ないなんて、少し寂しいけどこれからずっと一緒だからいいか」
「そ、そうだね……宜しくお願いします」
「こちらこそ」
私は、人生初の接吻をした。うん。やっぱり私は、この人を好きなのかもしれない。凄く幸せに感じたわ。
そして今夜、初夜を迎えます!
婚姻はしていたけど、一緒に暮らすのは結婚式をしてからとお父様が言うので一か月間、家族で思い出作り……はしていない。いつも通りの日常を過ごしていた。
ロデとして今まで通り、一日を謳歌。いいのだろうか。このままで。これからも帰る場所が変わるだけでロデとして生活が出来る。
「も、もしかして緊張している?」
隣に座っているルティロン様が心配そうに私を見ていた。
「す、少し。だって、まさかここで一夜を過ごすなんて……」
そう。王城に一泊を準備してくれていた。普通ではあり得ない事。
よっぽど、ラフリィード侯爵家に信頼を寄せているのね。次期外交官のルティロン様に期待していらっしゃる。あれ、継がないのだっけ? まあそれを陛下は知らないのかもしれない。
侯爵家も広かったけど、この部屋も豪華。ベッドも凄く大きくお父様が三人寝ても大丈夫ぐらいだわ。そこに私達は、腰を下ろし座っていた。
緊張するなという方が無理だわ。
「明日、寝坊しなようにしないと……」
メロディーナが結婚した事は、ロデには関係ないので今日休んだので明日は出勤しなくてはいけない。
「うん。そうだね」
「次の日からは、一緒に出掛けてるのよね?」
「うん」
まさか、夫人とルティアン嬢が私の正体、いえロデの正体を知らないとは思わなかった。二人には伝えておらず、折を見て伝えるからそれまではあのドレスを着ている様に見えるコートを着用して、ルティロン様と一緒に馬車へ乗り込む手筈になっていた。
もう話してしまった方がよいのではないのかしら? そこまでしてなぜ隠しているのかしら?
「あの、お義母様にロデが私だともう教えてしまった方が宜しいのではないでしょうか? 後々になった方が色々と事が大きくなりませんか?」
「あぁ……」
そう私が言うと、ルティロン様が遠い場所を見つめる。
「言いづらいけど、普通のお嬢様が男として生活しているなどあり得ない事なんだ」
「はい。承知しております」
だからこそ、身バレしないように過ごしていたのですから。
「たぶん、母上は今知ったら認めてはくれない」
「え? 結婚前だと大反対されるだろうからとは思っていたけど、やはり諦めてはくれません?」
「君の家族は寛大というか、騎士の家柄だからまあバレなければOKだったのだろうけど、一般いや、外交官をやっている息子の嫁がとなるとそうは行かないんだよ」
「えぇ~!! で、でも、ラフリィード侯爵は認めて下さったのですよね?」
「……えーと、認めざるを得なかったかな」
「では私は、認められていなかったのですね……」
ロデとしての活躍を認めて下さったとばかり。ではこの結婚は、ご迷惑だったのではないのかしら? ルティロン様は本当に私を好きになって下さったの?
「誤解しないで! 君を好きでロデの事を認めている、俺は! だから本来の姿のメロディーナを母上にもちゃんと紹介したい。だが、父上に止められた。結婚を認める代わりにね」
「え……」
「父上がメロディーナを認めていないってわけではないからね。母上を納得させる事が今の段階では出来ないって事なんだ。このままだと、ケイハース皇国に移住しちゃいそうだからね……」
移住か。何となく、この国にいい印象を持ってない様子だったものね。
外交官なのに妻が他国に移住はまずいよね。
この国の外交官は、何名かおり、担当国に見聞を広める為に数年間その国で過ごす。
ラフリィード侯爵もルティロン様が産まれた頃にケイハース皇国で過ごし、彼が幼い時には帰国していた。一人で。夫人がそのまま子供と一緒に居座ってしまったらしい。
世間的には、子供が体が弱く長旅が無理という事でそのままケイハース皇国に残った事になっていた。
今回、予定より少し早くルティロン様が帰国したけど、元々16歳になったら帰国する予定だったみたい。
ただ夫人とルティアン嬢は、ケイハース皇国に残りたいと思っている様で、今回の事件によって余計に帰りたくなかったようです。
なので、ルティロン様の婚約と言う事で呼び寄せた。
それがそのまま結婚になってしまったわけで……。
「確かに今言えば、騙したと怒ってケイハース皇国に戻ってしまうかもしれませんね」
「そういう事。はぁ……。まあ俺もルティアンも向こうで育ったからこの国の者っていう感覚はないけどさ、母上は違うはずなのになぁ」
「確かにそうですわね。よほどケイハース皇国が肌にあったのですね」
「みたいだね。それにしても余裕だね?」
「余裕?」
「も、もしかして、経験あるとか?」
「経験? ……あるわけないでしょう!!!」
私は、顔を真っ赤にして叫んだ。ずっとロデとして過ごしていたのだから。
「よかったぁ。全部俺のも」
そう言ってルティロン様が、そっと抱きしめて来た。
驚くも嫌ではない。むしろ、このままギュッとしてほしい。
「今日しかゆっくり出来ないなんて、少し寂しいけどこれからずっと一緒だからいいか」
「そ、そうだね……宜しくお願いします」
「こちらこそ」
私は、人生初の接吻をした。うん。やっぱり私は、この人を好きなのかもしれない。凄く幸せに感じたわ。
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