男装令嬢は侯爵家に嫁入りしました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
28 / 28

27話

しおりを挟む
 楽しい素敵な時間は、過ぎ去った。
 そして今夜、初夜を迎えます!

 婚姻はしていたけど、一緒に暮らすのは結婚式をしてからとお父様が言うので一か月間、家族で思い出作り……はしていない。いつも通りの日常を過ごしていた。
 ロデとして今まで通り、一日を謳歌。いいのだろうか。このままで。これからも帰る場所が変わるだけでロデとして生活が出来る。

 「も、もしかして緊張している?」

 隣に座っているルティロン様が心配そうに私を見ていた。

 「す、少し。だって、まさかここで一夜を過ごすなんて……」

 そう。王城に一泊を準備してくれていた。普通ではあり得ない事。
 よっぽど、ラフリィード侯爵家に信頼を寄せているのね。次期外交官のルティロン様に期待していらっしゃる。あれ、継がないのだっけ? まあそれを陛下は知らないのかもしれない。

 侯爵家も広かったけど、この部屋も豪華。ベッドも凄く大きくお父様が三人寝ても大丈夫ぐらいだわ。そこに私達は、腰を下ろし座っていた。
 緊張するなという方が無理だわ。

 「明日、寝坊しなようにしないと……」

 メロディーナが結婚した事は、には関係ないので今日休んだので明日は出勤しなくてはいけない。

 「うん。そうだね」
 「次の日からは、一緒に出掛けてるのよね?」
 「うん」

 まさか、夫人とルティアン嬢が私の正体、いえロデの正体を知らないとは思わなかった。二人には伝えておらず、折を見て伝えるからそれまではあのドレスを着ている様に見えるコートを着用して、ルティロン様と一緒に馬車へ乗り込む手筈になっていた。
 もう話してしまった方がよいのではないのかしら? そこまでしてなぜ隠しているのかしら?

 「あの、お義母様にロデが私だともう教えてしまった方が宜しいのではないでしょうか? 後々になった方が色々と事が大きくなりませんか?」
 「あぁ……」

 そう私が言うと、ルティロン様が遠い場所を見つめる。

 「言いづらいけど、普通のお嬢様がとして生活しているなどあり得ない事なんだ」
 「はい。承知しております」

 だからこそ、身バレしないように過ごしていたのですから。

 「たぶん、母上は今知ったら認めてはくれない」
 「え? 結婚前だと大反対されるだろうからとは思っていたけど、やはり諦めてはくれません?」
 「君の家族は寛大というか、騎士の家柄だからまあバレなければOKだったのだろうけど、一般いや、外交官をやっている息子の嫁がとなるとそうは行かないんだよ」
 「えぇ~!! で、でも、ラフリィード侯爵は認めて下さったのですよね?」
 「……えーと、認めざるを得なかったかな」
 「では私は、認められていなかったのですね……」

 ロデとしての活躍を認めて下さったとばかり。ではこの結婚は、ご迷惑だったのではないのかしら? ルティロン様は本当に私を好きになって下さったの?

 「誤解しないで! 君を好きでロデの事を認めている、俺は! だから本来の姿のメロディーナを母上にもちゃんと紹介したい。だが、父上に止められた。結婚を認める代わりにね」
 「え……」
 「父上がメロディーナを認めていないってわけではないからね。母上を納得させる事が今の段階では出来ないって事なんだ。このままだと、ケイハース皇国に移住しちゃいそうだからね……」

 移住か。何となく、この国にいい印象を持ってない様子だったものね。
 外交官なのに妻が他国に移住はまずいよね。
 この国の外交官は、何名かおり、担当国に見聞を広める為に数年間その国で過ごす。
 ラフリィード侯爵もルティロン様が産まれた頃にケイハース皇国で過ごし、彼が幼い時には帰国していた。一人で。夫人がそのまま子供と一緒に居座ってしまったらしい。
 世間的には、子供が体が弱く長旅が無理という事でそのままケイハース皇国に残った事になっていた。

 今回、予定より少し早くルティロン様が帰国したけど、元々16歳になったら帰国する予定だったみたい。
 ただ夫人とルティアン嬢は、ケイハース皇国に残りたいと思っている様で、今回の事件によって余計に帰りたくなかったようです。
 なので、ルティロン様の婚約と言う事で呼び寄せた。
 それがそのまま結婚になってしまったわけで……。

 「確かに今言えば、騙したと怒ってケイハース皇国に戻ってしまうかもしれませんね」
 「そういう事。はぁ……。まあ俺もルティアンも向こうで育ったからこの国の者っていう感覚はないけどさ、母上は違うはずなのになぁ」
 「確かにそうですわね。よほどケイハース皇国が肌にあったのですね」
 「みたいだね。それにしても余裕だね?」
 「余裕?」
 「も、もしかして、経験あるとか?」
 「経験? ……あるわけないでしょう!!!」

 私は、顔を真っ赤にして叫んだ。ずっとロデとして過ごしていたのだから。

 「よかったぁ。全部俺のも」

 そう言ってルティロン様が、そっと抱きしめて来た。
 驚くも嫌ではない。むしろ、このままギュッとしてほしい。

 「今日しかゆっくり出来ないなんて、少し寂しいけどこれからずっと一緒だからいいか」
 「そ、そうだね……宜しくお願いします」
 「こちらこそ」

 私は、人生初の接吻キスをした。うん。やっぱり私は、この人ルティロン様を好きなのかもしれない。凄く幸せに感じたわ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

処理中です...