21 / 28
20話 ルティロン視点
しおりを挟む
とうとう決戦の時が来た。
結局、思った通りにはいかなかったが、この作戦が上手くいけば婚約は解消しないという言質が取れた!
後は、彼女の足手まといにならないようにしないと。
牧師に扮した騎士の前に立ち見つめ合って気づく、本当にほぼ同じ背丈だな……。少し悲しくなる。ワンピースは着ているが靴は動きやすいいつものだ。
ちょっと感傷にしたっていれば、待っていた賊が侵入してきた。すぐに戦闘になる。賊は俺が、妹のルティアンではないと気づけば、余計殺気立った。
賊が振るう剣の威力は思ったより感じない。本当に副隊長は、手を抜いていなかったんだな。おかげで、剣を吹き飛ばされる事もなさそうだ。
初めて躊躇なく剣で俺は切りつけた。そして、初めて感じる人を切る感触。
あははは。やっぱり俺には騎士は向かないな。手が震えてる。
次に襲ってきた賊に決定打を切り出せない。くっそ。やらないとやられるのに!
そう思っていたら、目の前の賊が倒れた。ロデが倒してくれた。
「ふう。あらかた片付いたわね」
「逃げだしたのは、ハルサッグ副隊長達が仕留めたのか?」
「そうよ。今日の模擬訓練は、ここだもの」
俺が倒したのは一人。牧師に扮した者とロデは三人ずつ。いやロデは、俺のを一人倒したから四人か……凄いな。
倒れている賊は死んではいない。
逃げた賊は、生け捕りしているはずだ。逃げられない様に足の骨を折るぐらいだろうと、ロデは恐ろしい事つらっとして言っていた。
作戦では、模擬訓練はカシュアン嬢の誕生日パーティーの前日から今日まで行われる予定になっていた。
つまり、カシュアン嬢の誕生日パーティーにはもう、副隊長達はここで待機している。
確実にカシュアン侯爵を捕らえる為には、俺達を襲わせなければならない。だから賊を発見しても教会に入るまでは手を出して来ないから、自分の身は自身で守らなくてはいけなかった。
結局ロデに助けてもらう事になったが。
そして無事、カシュアン侯爵家を捕らえる事が出来た。
もう入国しても大丈夫だと母上とルティアンに伝えれば、帰国してくると言う。
顔合わせの日にちも決まり俺は、ロデに会いに毎日手合わせに向かった。
もう必要ないのに何でという顔つきだが、手合わせしていれば楽しそうな顔つきに変る。彼女は、思ったより顔に出るんだよな。
だから嫌われているとは思っていなかった。なので、婚約破棄を突き付けられるとも思っていなかった!
婚約破棄には、焦った。よかったよ。ハルサッグ伯爵ではなく俺に直接言ってくれて。
ハルサッグ伯爵に言っていれば今頃、俺がどんなに頼んでも婚約は破棄されていただろう。
彼女はわかってない。爵位で言えば確かに侯爵家であるラフリィード家の方が上だろう。だが実質の権力は、ハルサッグ伯爵にある。
陛下がどっちの言葉を取るかと言えば、ハルサッグ伯爵にだろう。
これが外交の件になれば別だが。
確かに妹のルティアンが聖女になれば、世間的には更に権力を入れた様に見える。
だからこそ、カシュアン侯爵家は、カシュアン嬢を聖女に仕立てようとした。
ただ、メロディーナ嬢と俺を結婚させ権力を得ようとはハルサッグ伯爵は考えていない。いや、必要ないだろうな。
すでに権力は持っているのだから。
自分の娘の実力を信じ、作戦を提案する度胸。それに頷かせる信頼。
さりげなく娘の手柄にさせ、サポート役に回る狡猾さ。そして、きちんと次の一手を打ってある。今回の作戦の全貌を見れば、彼の手のひらの上だった事がわかる。
今回の作戦で唯一の懸念は俺だっただろう。
一応これでも侯爵家の跡取り息子で、守る対象なのだから。
父上の手前、そうは言わず一緒に作戦に組み込んだ。
噂を流すのを手伝えば、あの場に俺がいなくても作戦は遂行出来た。
そうしたのは、メロディーナ嬢がロデだと知れた時に、最後まで俺をかかわらせる事で結婚出来る様にしただけだ。
ロデなら俺に怪我を負わせる事無く守り切っただろう。そう思うと、ちょっと自分が情けなくなるけど。
俺がハルサッグ伯爵に稽古して欲しいと言い出さなければ、婚約は解消されていた。だから俺が自身を唯一褒めたいのは、婚約を繋ぎとめた事だ!
「俺は、ロデある君も含め愛している。どうか俺の手を取って下さい」
俺は、メロディーナ嬢に手を差し出す。
彼女は、手と俺の顔を交互に見つめ顔を赤らめた。
そして、俺の手を取ってくれる。
「ありがとう。絶対に幸せにするよ」
掴んだ手は離さない。絶対に!
俺は、彼女の手の甲にキスを落とした。
「君の事をメロディーナ嬢と呼んでいいかな?」
「は、はい……」
「では、俺の事はルティロンって呼んでね。言ってみて」
「え……ル……ルティロン様」
あぁ、かわいい! 今すぐに結婚して、俺のものにしたい!!
結局、思った通りにはいかなかったが、この作戦が上手くいけば婚約は解消しないという言質が取れた!
後は、彼女の足手まといにならないようにしないと。
牧師に扮した騎士の前に立ち見つめ合って気づく、本当にほぼ同じ背丈だな……。少し悲しくなる。ワンピースは着ているが靴は動きやすいいつものだ。
ちょっと感傷にしたっていれば、待っていた賊が侵入してきた。すぐに戦闘になる。賊は俺が、妹のルティアンではないと気づけば、余計殺気立った。
賊が振るう剣の威力は思ったより感じない。本当に副隊長は、手を抜いていなかったんだな。おかげで、剣を吹き飛ばされる事もなさそうだ。
初めて躊躇なく剣で俺は切りつけた。そして、初めて感じる人を切る感触。
あははは。やっぱり俺には騎士は向かないな。手が震えてる。
次に襲ってきた賊に決定打を切り出せない。くっそ。やらないとやられるのに!
そう思っていたら、目の前の賊が倒れた。ロデが倒してくれた。
「ふう。あらかた片付いたわね」
「逃げだしたのは、ハルサッグ副隊長達が仕留めたのか?」
「そうよ。今日の模擬訓練は、ここだもの」
俺が倒したのは一人。牧師に扮した者とロデは三人ずつ。いやロデは、俺のを一人倒したから四人か……凄いな。
倒れている賊は死んではいない。
逃げた賊は、生け捕りしているはずだ。逃げられない様に足の骨を折るぐらいだろうと、ロデは恐ろしい事つらっとして言っていた。
作戦では、模擬訓練はカシュアン嬢の誕生日パーティーの前日から今日まで行われる予定になっていた。
つまり、カシュアン嬢の誕生日パーティーにはもう、副隊長達はここで待機している。
確実にカシュアン侯爵を捕らえる為には、俺達を襲わせなければならない。だから賊を発見しても教会に入るまでは手を出して来ないから、自分の身は自身で守らなくてはいけなかった。
結局ロデに助けてもらう事になったが。
そして無事、カシュアン侯爵家を捕らえる事が出来た。
もう入国しても大丈夫だと母上とルティアンに伝えれば、帰国してくると言う。
顔合わせの日にちも決まり俺は、ロデに会いに毎日手合わせに向かった。
もう必要ないのに何でという顔つきだが、手合わせしていれば楽しそうな顔つきに変る。彼女は、思ったより顔に出るんだよな。
だから嫌われているとは思っていなかった。なので、婚約破棄を突き付けられるとも思っていなかった!
婚約破棄には、焦った。よかったよ。ハルサッグ伯爵ではなく俺に直接言ってくれて。
ハルサッグ伯爵に言っていれば今頃、俺がどんなに頼んでも婚約は破棄されていただろう。
彼女はわかってない。爵位で言えば確かに侯爵家であるラフリィード家の方が上だろう。だが実質の権力は、ハルサッグ伯爵にある。
陛下がどっちの言葉を取るかと言えば、ハルサッグ伯爵にだろう。
これが外交の件になれば別だが。
確かに妹のルティアンが聖女になれば、世間的には更に権力を入れた様に見える。
だからこそ、カシュアン侯爵家は、カシュアン嬢を聖女に仕立てようとした。
ただ、メロディーナ嬢と俺を結婚させ権力を得ようとはハルサッグ伯爵は考えていない。いや、必要ないだろうな。
すでに権力は持っているのだから。
自分の娘の実力を信じ、作戦を提案する度胸。それに頷かせる信頼。
さりげなく娘の手柄にさせ、サポート役に回る狡猾さ。そして、きちんと次の一手を打ってある。今回の作戦の全貌を見れば、彼の手のひらの上だった事がわかる。
今回の作戦で唯一の懸念は俺だっただろう。
一応これでも侯爵家の跡取り息子で、守る対象なのだから。
父上の手前、そうは言わず一緒に作戦に組み込んだ。
噂を流すのを手伝えば、あの場に俺がいなくても作戦は遂行出来た。
そうしたのは、メロディーナ嬢がロデだと知れた時に、最後まで俺をかかわらせる事で結婚出来る様にしただけだ。
ロデなら俺に怪我を負わせる事無く守り切っただろう。そう思うと、ちょっと自分が情けなくなるけど。
俺がハルサッグ伯爵に稽古して欲しいと言い出さなければ、婚約は解消されていた。だから俺が自身を唯一褒めたいのは、婚約を繋ぎとめた事だ!
「俺は、ロデある君も含め愛している。どうか俺の手を取って下さい」
俺は、メロディーナ嬢に手を差し出す。
彼女は、手と俺の顔を交互に見つめ顔を赤らめた。
そして、俺の手を取ってくれる。
「ありがとう。絶対に幸せにするよ」
掴んだ手は離さない。絶対に!
俺は、彼女の手の甲にキスを落とした。
「君の事をメロディーナ嬢と呼んでいいかな?」
「は、はい……」
「では、俺の事はルティロンって呼んでね。言ってみて」
「え……ル……ルティロン様」
あぁ、かわいい! 今すぐに結婚して、俺のものにしたい!!
1
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
四つ葉のクローバーを贈られました
綾織 茅
恋愛
「ずっと傍にいてくれる?」
「いいよ!」
幼い頃交わした約束が大人になってからも果たされているとは限らない。
少なくとも私はすっかり忘れていた。
その約束が後にとんでもない事態を引き起こすとは思いもよらず。
「これからも、よろしくね」
「えっと……よろしくお願いしま、す?」
華道家一族の専属医になることになった私。
次期家元の青年はとても優しく、人が良く……ちょっと裏がありげな人でした。
※なろう、カクヨムでも公開中です。
王子様と過ごした90日間。
秋野 林檎
恋愛
男しか爵位を受け継げないために、侯爵令嬢のロザリーは、男と女の双子ということにして、一人二役をやってどうにか侯爵家を守っていた。18歳になり、騎士団に入隊しなければならなくなった時、憧れていた第二王子付きに任命されたが、だが第二王子は90日後・・隣国の王女と結婚する。
女として、密かに王子に恋をし…。男として、体を張って王子を守るロザリー。
そんなロザリーに王子は惹かれて行くが…
本篇、番外編(結婚までの7日間 Lucian & Rosalie)完結です。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~
富士とまと
恋愛
リリーは極度の男性アレルギー持ちだった。修道院に行きたいと言ったものの公爵令嬢と言う立場ゆえに父親に反対され、誰でもいいから結婚しろと迫られる。そんな中、婚約者探しに出かけた舞踏会で、アレルギーの出ない男性と出会った。いや、姿だけは男性だけれど、心は女性であるエミリオだ。
二人は友達になり、お互いの秘密を共有し、親を納得させるための偽装結婚をすることに。でも、実はエミリオには打ち明けてない秘密が一つあった。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる