19 / 28
18話
しおりを挟む
どうしましょう。言おう言おうと思っているうちに今日になってしまったわ。
私は、家族と一緒にラフリィード侯爵家へ向かっている。
色々一段落して、婚約するにあたり顔合わせの運びとなった。
お父様も二人のお兄様も、仕事を休んで一緒に向かっている。
「メロディーナ、もしかして緊張しているのか」
上のジャックスお兄様が、にやにやとして聞いた。
21歳のジャックスお兄様には、未だに婚約者もいない。
「えぇ、まあ」
「あはは。珍しい。やっぱり婚約となるとメロディーナでも緊張するものなんだな」
「ギレス、あなたは少し緊張感があった方がいいと思うわ」
お母様が、下のギレスお兄様に言えば、へいへいと返している。
18歳になったギレスお兄様にも婚約者はいない。
私はずっと、事が一段落したらラフリィード子息に婚約を破棄しましょうと言おうと思っていた。
事件が解決するまでは、解約する事は不可能。
この婚約は、今回の騒動でロデが私だと発覚した時の為の保険でしょう。ならもう、その必要はない。
ラフリィード子息には、ほぼ毎日顔を合わせていた。ロデとしてだけど。
なぜか、事件が解決した後も私と手合わせに来ていた。
しかも嬉しそうにしている。変な性癖に目覚めてなければいいけど。
本当なら今日までに解約したかった。
集まって頂くのに、今日言うのは申し訳ないから。
だったらお父様に言えばいい。けど私は、ラフリィード子息に会えなくなるのが嫌らしく、せめて手合わせだけでももう少しと、気づけば今日になっていた。
婚約を断れば、手合わせにだって来なくなるでしょう。それが嫌だった。
この気持ちは何なのでしょうか。初めての感情に私は戸惑っていた。
とうとうラフリィード侯爵家に到着してしまったわ。
「よくいらっしゃいました。ハルサッグ伯爵。さあ中へどうぞ」
ラフリィード侯爵に促され私達は、立派な豪邸に足を踏み入れた。
ラフリィード子息も居て、前を歩いている。そんな彼から目が離せない。
いつもと違う雰囲気。
席につけば、お茶を振舞われた。
いい香りがするわ。きっと高級茶葉だわ。
「実は、一時間後には妻と娘が到着出来そうなのです。ですので、ちゃんとした顔合わせは、来てからで宜しいですかな?」
「もちろんだ」
「ルティロン、ハルサッグ嬢をお庭にでもご案内しなさい」
「はい! では、行きましょうか」
「はい……」
立ち上がったラフリィード子息に、ついて行く。
何だろうか。凄く緊張して喉が渇くわ。
「ここが、見頃の場所です」
「綺麗ですね」
「気に入って頂けたのなら幸いです」
私は、こくんと頷く。
さあ言わなくては!
「ラ、ラフリィード子息」
「はい。何でしょう」
「こ、婚約破棄して下さい!」
「はぁ? な、なぜです? 俺が嫌ですか?」
「ち、違います! 申しわなくて……この婚約でそちらにメリットはないでしょう。作戦中には、婚約破棄はできなかった。でも今ならできます」
「それって、俺とは結婚したくないと言う事でしょうか?」
私の真意を探る様にラフリィード子息が、私の瞳ジッと見つめ聞いた。
なので目を伏せる。だって、見つめられたら心臓がドキドキとうるさいから。
「いえ、できれば結婚したいです。ラフリィード子息は、私がロデだと知っても引かないでくれていたし、お友達にと言ってそれを守って手合わせにも付き合ってくれて……。いえそうではなく、私は後三年は騎士でいなくてはいけません。ラフリィード子息がお父様の跡を継いで外交のお仕事をされるのであれば、私と結婚すればご迷惑に……」
「待って。俺は、父上の跡を継ぐ気はないけど」
「え? 継がないのですか?」
「そもそも代々継ぐ稼業でないからね。婚約破棄したいのは、俺の仕事に支障があるから? ならそれはクリアだね」
あ、あれ? そうだったんだ。じゃケイハース皇国には帰らないのね。よかった。ではなくて……。
「えーと、そもそもお父様が無理を言って……」
「そっか。そうだよな。そう思っているよな」
「え? 違うのですか?」
あれ? そういう話ではなかった?
「最初はそういう話から始まったけど、俺はそういう事になってよかったと思っている。君には嫌われていないとは思っているけど、俺ではダメだろうか?」
「え? いや全然。逆に私でいいのかどうか。結婚してから私がロデだと知れる可能性もあるわけですし」
「君が構わないならロデだと知れても、俺はいいけど」
「え~!!」
「それぐらい君を好きになったって事。やっぱりちゃんと言わないと通じないね。君に会いたくて毎日手合わせに行っていたんだ」
嘘! 嬉しそうにしていたのってそういう理由だったの?
「えっと。私も毎日会えなくなるのが嫌で、婚約破棄を言い出せなかったです……」
ううう。私今、顔が真っ赤よね。
「それって、俺の事好きって事?」
「はい!?」
え? そうなの? 私、ラフリィード子息を好きなの?
この感情は恋だったの?
私は、家族と一緒にラフリィード侯爵家へ向かっている。
色々一段落して、婚約するにあたり顔合わせの運びとなった。
お父様も二人のお兄様も、仕事を休んで一緒に向かっている。
「メロディーナ、もしかして緊張しているのか」
上のジャックスお兄様が、にやにやとして聞いた。
21歳のジャックスお兄様には、未だに婚約者もいない。
「えぇ、まあ」
「あはは。珍しい。やっぱり婚約となるとメロディーナでも緊張するものなんだな」
「ギレス、あなたは少し緊張感があった方がいいと思うわ」
お母様が、下のギレスお兄様に言えば、へいへいと返している。
18歳になったギレスお兄様にも婚約者はいない。
私はずっと、事が一段落したらラフリィード子息に婚約を破棄しましょうと言おうと思っていた。
事件が解決するまでは、解約する事は不可能。
この婚約は、今回の騒動でロデが私だと発覚した時の為の保険でしょう。ならもう、その必要はない。
ラフリィード子息には、ほぼ毎日顔を合わせていた。ロデとしてだけど。
なぜか、事件が解決した後も私と手合わせに来ていた。
しかも嬉しそうにしている。変な性癖に目覚めてなければいいけど。
本当なら今日までに解約したかった。
集まって頂くのに、今日言うのは申し訳ないから。
だったらお父様に言えばいい。けど私は、ラフリィード子息に会えなくなるのが嫌らしく、せめて手合わせだけでももう少しと、気づけば今日になっていた。
婚約を断れば、手合わせにだって来なくなるでしょう。それが嫌だった。
この気持ちは何なのでしょうか。初めての感情に私は戸惑っていた。
とうとうラフリィード侯爵家に到着してしまったわ。
「よくいらっしゃいました。ハルサッグ伯爵。さあ中へどうぞ」
ラフリィード侯爵に促され私達は、立派な豪邸に足を踏み入れた。
ラフリィード子息も居て、前を歩いている。そんな彼から目が離せない。
いつもと違う雰囲気。
席につけば、お茶を振舞われた。
いい香りがするわ。きっと高級茶葉だわ。
「実は、一時間後には妻と娘が到着出来そうなのです。ですので、ちゃんとした顔合わせは、来てからで宜しいですかな?」
「もちろんだ」
「ルティロン、ハルサッグ嬢をお庭にでもご案内しなさい」
「はい! では、行きましょうか」
「はい……」
立ち上がったラフリィード子息に、ついて行く。
何だろうか。凄く緊張して喉が渇くわ。
「ここが、見頃の場所です」
「綺麗ですね」
「気に入って頂けたのなら幸いです」
私は、こくんと頷く。
さあ言わなくては!
「ラ、ラフリィード子息」
「はい。何でしょう」
「こ、婚約破棄して下さい!」
「はぁ? な、なぜです? 俺が嫌ですか?」
「ち、違います! 申しわなくて……この婚約でそちらにメリットはないでしょう。作戦中には、婚約破棄はできなかった。でも今ならできます」
「それって、俺とは結婚したくないと言う事でしょうか?」
私の真意を探る様にラフリィード子息が、私の瞳ジッと見つめ聞いた。
なので目を伏せる。だって、見つめられたら心臓がドキドキとうるさいから。
「いえ、できれば結婚したいです。ラフリィード子息は、私がロデだと知っても引かないでくれていたし、お友達にと言ってそれを守って手合わせにも付き合ってくれて……。いえそうではなく、私は後三年は騎士でいなくてはいけません。ラフリィード子息がお父様の跡を継いで外交のお仕事をされるのであれば、私と結婚すればご迷惑に……」
「待って。俺は、父上の跡を継ぐ気はないけど」
「え? 継がないのですか?」
「そもそも代々継ぐ稼業でないからね。婚約破棄したいのは、俺の仕事に支障があるから? ならそれはクリアだね」
あ、あれ? そうだったんだ。じゃケイハース皇国には帰らないのね。よかった。ではなくて……。
「えーと、そもそもお父様が無理を言って……」
「そっか。そうだよな。そう思っているよな」
「え? 違うのですか?」
あれ? そういう話ではなかった?
「最初はそういう話から始まったけど、俺はそういう事になってよかったと思っている。君には嫌われていないとは思っているけど、俺ではダメだろうか?」
「え? いや全然。逆に私でいいのかどうか。結婚してから私がロデだと知れる可能性もあるわけですし」
「君が構わないならロデだと知れても、俺はいいけど」
「え~!!」
「それぐらい君を好きになったって事。やっぱりちゃんと言わないと通じないね。君に会いたくて毎日手合わせに行っていたんだ」
嘘! 嬉しそうにしていたのってそういう理由だったの?
「えっと。私も毎日会えなくなるのが嫌で、婚約破棄を言い出せなかったです……」
ううう。私今、顔が真っ赤よね。
「それって、俺の事好きって事?」
「はい!?」
え? そうなの? 私、ラフリィード子息を好きなの?
この感情は恋だったの?
1
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる