久保安君は、お隣さん

魚有(まぐろ)

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自立とは?

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自立とは何か。実家、又は親を離れ、自分の力のみで生きていくこと。だが、全てがそうとは限らない。
 「はぁ!?久保安と同じアパートのお隣さん!?」
 「そ、そうだったんだよ…。これは運命的というか、宿命なのか…w」
 そう。私、山内恵美は現在好きな人がいる。相手は、校内1の強面の持ち主であるが、中身は普通の男子高校生である。いや、むしろ紳士的な男性?とにかく私が好意を持っている男子、久保安君。彼とは同じクラス、隣の席、オマケに同じアパートのお隣さん…。
 「あんた凄い運の持ち主なのね…。いや、それが羨ましいとは思わないけど。」
 「冷たいこと言うな~奈乃花さんは~。」
 「だって、まぁ相手が久保安じゃないとして考えても、好きな人が隣なんでしょ?どうすんの?オナラとか丸聞こえよ?ムカついた時とか発狂できないのよ?いいの?ストレス溜まって禿げるわよ?」
 「いや、毎日発狂してるわけでもないし…。そもそもまだそこまで仲良くないから…。」
 するとそこに、
 「何話してるの~?」
 優太が入ってきた。彼とは仲はいいほうだが、なにより優太は大の女の子好きでお調子者…。奈乃花が1番嫌いなタイプなのだ。
 「げっ!優太!なによ、話すならほかの女子と話なさいよ。」
 「んも~、ひどいなぁ奈乃花ちゃん。ちょっとぐらいお喋りしよーよー。」
 「キモいわっ!」
 奈乃花は優太をシッシッと追い払った。優太はシュンとし、他の女の子の所に行ったが、拓郎に回収されていった。
 拓郎はこっちをチラリとみた。そうだ、拓郎にきちんとした返事をしていなかった。タイミングを見計らって言おう。
 
 
 放課後。
 (久保安君は確か…今日、掃除当番だったけ。)
 一緒に帰ろうとさそおうと思ったが、諦めて帰ることにした。
 
 「久保安ー、掃除当番頼んだぞ。先生ちょっと会議あるから悪いんだが、先に行くぞ。」
 「はい、さようなら。」
 (さっさと終わらせて帰ろう。あ、そうだ!山内にちゃんとした挨拶しなきゃ。あっ、でもいきなり行ったら迷惑かな?どうしよう…)
 そんなことを考えているうちに、いつの間にか掃除は終わった。
 (とにかく、なにか挨拶はしなきゃな。)
 俺は早歩きでゆうき荘に向かった。実家から、バウムクーヘンが送られてきたのを思い出した。よし、山内さんにはそれを渡そう。
 コンビニを過ぎ、ゆうき荘が見えてきた。しかし、ゆうき荘の前でカップルか?体を寄せあっているのが見えた。だんだん近づくにつれ、それは…
 (え!?山内さん!?…と山内さんに抱きついてる男性は誰!?うわ~、やっぱり彼氏いたんじゃん…。そりゃいるよ、あんなにいい子なら…。)
 「恵美~!!会いたかったよ!」
 「ちょ、離してよ!というかなんでここ分かったわけ!?」
 「俺が恵美の事について、知らない事があると思うかい?」
 「そうだね、無いね。変態だもんね。」
 山内さんは、そう言うと1度ため息をついて、そっと男性を抱き返した。
 「はい、ぎゅー。もういいでしょ?離してー。やめてー、ってちょ、だんだん力強くするのやめてっ。く、くるしい。」
 「ハァン、俺の恵美たん…。なんでこんなにも天使なのか…。」
 なんだよ、この仕打ち。俺だって、山内さんに背中ポンポンされたい…!もういい!気にするな久保安!
 俺は知らん顔をして部屋に戻ることを決心したが、
 「く、久保安君!?帰ってきたんだ!」
 俺を見つけた山内さんは、とたんに男を引き剥がし、何事も無かったように話した。
 「恵美、誰だ?この男。」
 「え、えっと!クラスメイト兼、お隣さんの久保安君です!」
 「ふーーーーーーーーん。」
 うん。明らかに伝わってくるよ、この不満ですオーラ。分かってるから、そんなに俺を睨まないで!
 「ご、ごめんね。邪魔しちゃったみたいで…」
 「う、ううん!そんなこと全然な――」
 
 「そうだな、邪魔だな。果てしなく邪魔だな。なんなら今すぐ立ち去っていただきたい。」
 
 …ん?え?この人は今なんと?
 「ちょ、ちょっと!やめてよ!ごめんね、久保安君!気にしないで…」
 「いやぁ!それなら本当に申し訳ございませんでした…!!」
 「うん!もっと謝って欲しいなぁ!せっかくのラブラブモード邪魔されちゃったからねぇ!!」
 なんだ、この人。めったに怒らない俺だが、めっちゃムカつく!
 「あははは!それにしてもお2人、お似合いですね~」
 「そうに決まっているだろう?恵美にピッタリなのはこの俺しかいないのだから!」
 「ちょ!ちょっと!!」
 俺と男性が険悪モードになったのを察した山内さんは、オロオロとしだした。
 「だいたいなんだ?お前。おれの恵美と同じクラス?同じアパート?になっただけでいい気になってるなよ?」
 「えぇ、そりゃあいい気になりますよ?山内さんは、良い人ですからねぇ!でもそういう感情を持つかは、僕の勝手なので!」
 あれ、やばい。ちょっとヒートアップしてきちゃった。どうしよ、山内さん凄い焦ってたのに何も言わなくなっちゃった…。
 「いやぁ、そんなこと言って恵美のこといやらしい目で…」
 「いい加減にしろや!このクソ変態シスコン男ぉぉぉ!!!!」
 「ぉうぐふぅっ!!」
 男性は山内さんに突然のアッパーをかけられ、1mほど飛んでいった。…ん?ちょっと待てよ?
 「あれ?シスコンってことは…」
 「…ごめんね久保安君、迷惑かけて。あの変態、私のお兄ちゃんなの。」
 山内さんはお兄さんを指差し、飽きれるようにため息をついた。

 「え、ええぇ。」












こんにちは魚有です。いやぁ登場しましたね。恵美の自立した原因は、スーパーシスコンお兄さんです。自分は1人っ子なので書いている時は、羨ましいとも思いながらの作業でした。(笑)
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