久保安君は、お隣さん

魚有(まぐろ)

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初恋っていいなぁ。

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「お前、マジで女っ気ないよなぁ。」
 「本当それね。アンタ、多少は女らしくしなさいよ。高校生になったらスカート、もっと短くなるのよ?」
 「急になにさ?拓郎さんと奈乃花さんよ~。女っ気なんてとっくの昔に無くしました~。」
 中学3年の私たち(恵美 拓郎 奈乃花)は、未来の事は特に決まっておらず、とりあえずといった形で近くの高校に行くことにした。明日で高校生になる。仲のいい私達は春休みの間よく集まった。今日も3人で遊び、そろそろ日が暮れるので各々帰ろうとしていた。そしてひょんなことから、私の恋愛事情の話になってしまった。
 「お前ってさ、彼氏とか作る予定あんの?」
 「え?逆に出来ると思う?」
 「私は恵美に、彼氏が出来ないに100万。」
 「ちょ、勝手に賭けんなよ!」
 「だって絶対作れる自信あるの?」
 「そ、それは…。無いケド…。」
 「んじゃ、私こっちだから。」
    奈乃花は勝手に人の恋愛事情に100万を賭けた後、帰っていった。まぁ、確かに私に彼氏ができる確率は、宝くじがあたる確率よりも低いかもしれない。うん、無理じゃね?
 「話の続きだけどさ。」 
 拓郎は少しぎこちない喋り方で私に言った。
 「あー、うん。作らないというより、多分出来ないと思うよ?」
 「彼氏は欲しいのか?」
 「そりゃあ、まぁ欲しいって思う時もあるよ?てかしょっちゅうかなw」
 私は笑いながら拓郎にそう言った。拓郎は「そっか。」と言った後、沈黙が続いた。
 「なぁ、恵美。」
 拓郎はその場で立ち止まり、私が振り返ると
 「俺じゃダメかな?」
そう言った。中学校生活最後の春休みは、人生初のしかも親友からの告白で幕を閉じた。
 
 
 


 ついに入学式当日である。結局昨日は、なかなか寝付けなく寝坊した  
    「や、やべ!!遅刻やんけー!!!」
初日から遅刻とはなかなかやるな、私。どうせなら食パンでもくわえてこれば良かった…。
   なんとかギリギリセーフ。ドアを開けまずはいい挨拶から!小学校で習ったでしょ?
 「皆、おっはよおおおおお!!」
 いつものハイテンションでいこう、昨日のことは一回忘れよう。そう思っていたがその前に教室の静けさに不安を抱いた。
 「あれ?教室、間違えた?いやいや、合ってるはず。え?なんでこんな静かなん?なんか私が空気読めないみたいになるじゃん。ちょ、皆?どうしたの?」
 ブツブツと話しているうちに、誰かが笑ってくれたおかげで雰囲気が和んだ。教室に入るとまさかの拓郎と奈乃花と同じクラスだった。
 「あ、奈乃花!おはよう。」
 「おっは。なんか疲れてるようだけど、なんかあったん?」
 「ん!?いやいやいやいや、何にもないよ?ただ寝坊しただけ!!」
 多分この様子じゃ、昨日の拓郎のことは知らなそう。
 「そ、そういえば!なんであんなに静かだったの?」
 「あー。さっき教室に入って来た男子の顔がすっごい強面でさ…。皆ビビってたんだよ。」
 「な、なんじゃそりゃ。そんなに怖そう?隣だったらどうしよう。仲良く出来るかな?」
 「まぁ、アンタだったらいけるんじゃない?」
 黒板に貼ってある座席表を見て、自分の席を確認した。
 「えっとぉ…。あそこの席か!」
 窓側から2列目の1番後ろの席だった。隣の席の子は男子で、違う中学校から来たのかな?見た事ない雰囲気だった。
 「あ!席、お隣さんだ!よろしくね!私山内恵美って…」
 言葉を失った。私は目を大きく見開いた。
 初めて見る彼の顔は…なんというか眩しいというか、すごく、カッコよかった。シャープな顎に、高めの鼻。目元は少し鋭くて、眉毛が綺麗だった。
 「あの…。山内恵美って言います。これから1年間よろしく…。」
 なんでだろう?ちゃんと話せないし、顔を直視できない。それにいつものハイテンションはどこに行ったの?動悸がはやい。ちょっと、誰か救心持ってきて。
 「ど、どうも。久保安大樹って言います。大丈夫、殴りかかったりとかしないから。」
 この人は何を言っているんだろう、殴りかかる?どういう事?
 「プッ…フフフ。殴りかかるって…wなんでそんな変な事言うの?久保安君、面白いね。アハハハハ!」
 「え、だって俺の顔怖くないの?」
 「何言ってるの?全然怖くないよ?それに面白いよ!」
 「俺…、そんなの初めて言われた。あ、ありがとう…。」
 「どういたしまして!というか、私何もやってないけどね。」
 すると私の携帯にメールの着信がなった。
 『女子トイレ来て!』
 送り主は…奈乃花?なんでわざわざメールなんだろう?とりあえず私はトイレに向かう事にした。正直、久保安君ともう少し話したかったけどね。
 
 
 
 「あ、アンタ凄くない!?」
 「へ?何が?」
 トイレ前に向かうなり、いきなり奈乃花が私に怒鳴った。
 「何がって、あの強面の子よ!アンタの席の隣の男子!」
 「あー!久保安君?あの子めっちゃ面白いし、なによりカッコよくない!?」
 カッコイイという言葉を、初めて口に出した気がした。今まで人のことを好きになったり、カッコイイと思った経験は無かった。実際、「人を好きになる」という瞬間も味わったことが無いのでよく分からなかったが。でもなぜか久保安君を見た瞬間、1番最初に出た言葉は「カッコイイ」のそれだけだった。
 「カ、カカカカッコイイ!?あの顔が!?だって極道ってゆうか、般若?みたいな顔してたじゃん!」
 「え~?そうかな~?でも久保安君を見た瞬間ね、体に電気が走ったみたいな感じがしたの!で、その後顔を直視できなくて、胸がドキドキした!これってビビってたのかな?」
 とりあえず、感じたことを全て話した。怖いという感情だったのか、明確に覚えてなかったからだ。
 「う、嘘でしょ?」
 「嘘じゃないって~、逆に嘘つくメリットあるの?」
 そして奈乃花はいきなり私の肩を掴んで、震えながら言った。
    「…恵美、落ち着いて聞いて。それはね、」
 「それは?」
 





 


 
 「…恋よ。アンタ、久保安とかいう人に一目惚れしたのよ。きっと、いや!絶対!!!」
 


 
 体に2度目の電気が走った。
 山内恵美 新高校1年生は今日、校内1強面の人に、初恋をしました。








はい、出ましたね。彼女(山内恵美)がこの物語のヒロインです。彼女は女の子というより、男の子に近いタイプの子です。ちなみに彼女はこの時点では、拓郎から告白を受けた事を完全に忘れています。拓郎ごめんね。
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