久保安君は、お隣さん

魚有(まぐろ)

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高校デビューはダサくない

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春。田舎から東京に上京して1週間が経とうとしていた。今年から高校生になる俺(久保安大樹)は、ゆうき荘というアパートを借りて一人暮らしを始める。
 そんな俺の人生上のコンプレックス、それは強面。極道、鬼、般若、悪魔…今までいくつものあだ名がついた。俺の地元は人口が少ないから皆この顔には慣れてくれた。でも……
 「こんにちは。先日、引っ越してきた久保安と申します。これからどうぞよろしくお願いします。」
 やはりご近所に挨拶をしていくと、
 「ひぃい!う、うちにはもう借金はありません!」
 「な、なんですか!?警察呼びますよ!?」
 「い、命だけは…!」
 そう言って思い切りドアを閉められる有様。大丈夫、こういう類いのものは慣れてる。でも、これからのご近所付き合いは大変だな。そんなことより明日の始業式が不安でしょうがない。
 俺は適当に挨拶周りが終わったあと、最後に残していたお隣さんの部屋に挨拶をしに行った。しかしインターホンを押しても出てこなかった。留守なのか?それともインターホン越しの俺の顔を見て腰でも抜かしたのか?
 


 
 そして始業式当日。案の定、校門前では先生に止められた。
 「君、本当にうちの生徒?」
 「はい。合格書もありますよ。」
 「あ、本当だ。ごめんね」
 一応、身分を証明出来るものを持っていてよかった。先生は舌を出して謝った。言っとくが普通のオジサンだからな?かわいくないぞ。
 「クラスは1のC…ここか。」
 クラスはガヤガヤと賑わっていた。この高校生は中学校からそのまま上がってくる人が多いらしく、もちろん俺は1人で上京してきたのでボッチ。教室のドアを開けるとたちまち静まり返った。

((……なんか…ご、極道きた!))

ま、何となく予想はしてたけど。
 「…え、あれ高校生?」
 「…めっちゃ顔怖くない?」
 「どこ中から来たのかな?」
 「あんま話しかけない方がいいよね?」
 コソコソと話し声が聞こえる。まぁ高校デビューをしたかったわけでもないし、友達なんてそもそも欲しいわけでもない。一人だって、いや一人の方が楽だと思っている。そう思っていかなきゃやっていけなかった。だが、俺の人生はここで変わるとは思ってもいなかった。
 バン!!!!
 「皆、おっはよおおおおお!!」
 突然開かれたドアの音に教室の皆が驚いた。ドアの前には一人の女の子が立っていた。
 「あれ?教室間違えた?いやいや、合ってるはず。え?なんでこんな静かなん?なんか私が空気読めないみたいになるじゃん。ちょ、皆?どうしたの?」
 あまりの静けさにテンパりだす女の子。だが、そんな彼女の様子に一人、二人と吹き出す。
 「アハハハハ!wwお前が空気読めないんだよ!」
 「ブッハハハ!wなんだそのアホヅラ!」
 たちまち教室しには明るい空気が戻った。彼女は頭をかき、ニコニコとしながら教室に入った。
 「よ!拓郎、同クラじゃん!おっは!あ、みきっちゃんと優太まで!」
 「おう、おはよう。またお前と同じかよ。」
 「おはよう~朝からハイテンションだね~」
 「ういっす」
 「てかてか、私の席どこー?よっしゃ、1番後ろじゃん!寝れ…いでっ!」
 「バカか。初日で寝るやついないわ。」
 「奈乃花!なんだよー。どつくなら、どつくって言ってからどついてよー」
 いきなり彼女を叩いたのは、篠崎奈乃花さん。顔も性格も結構キツそう…って俺が言えることじゃないか。
 「どつくどつくうるさい。」
二人はたちまち騒がしくなった教室で自分の席に向かった。
 「ここかー。あ!席お隣さんだ、よろしくね!私、山内恵美って……」
 席につき俺の顔を見た瞬間、彼女は黙り込んだ。そう、彼女の席は俺の隣だった。黙り込んだ彼女は、ぎこちなく2度目の自己紹介を始めた。
「あの…。山内恵美っていいます…。」
 顔をハッキリ見てくれない。これは、友達としては見てくれなさそうだな。
    俺はそう悟った。







#== コメント ==
はじめまして、魚有(まぐろ)と申します。クソガキです。あ、クソ稚魚です。
さて、今回この作品に目を通してくださった読者の方々、ありがとうございます。現在私は、勉強を丁度いい感じにサボりつつ、この作品を手がけていこうと考えております。(勉強:小説=1:9)
知識や技術もお尻の青い稚魚なので、アドバイスがありましたらぜひ、いただきたいところです。
それではまた、次回の作品の最後ら辺で泳いでいるので会いましょう。
閲覧ありがとうございました。
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