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第58話 アンチェイン☆鬼娘
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「あしな、もう商いは済んだのじゃろ?
食事ついでに町を見て行こう!」
人通りがなくなったのを見計らってスマホからバギーを消し、ふと疑問に思った事を口にしてみた。
「それは良いけど、お前は地元の鬼…人間だろ?何で見慣れた町を見たがるんだよ?」
途端に初音はもじもじとした仕草を見せ、ここにきて衝撃の告白を行う。
「実は…ワシ、町を歩くのは初めてなんじゃ。今までは駕籠から外の様子を眺める事しかできんかった…」
マジっすか…。
だけど、思い返してみれば町に着いてからの初音は妙に落ち着きがなく、どこか遊園地に来た子供みたいに浮かれていたように思えた。
以前、少しだけ聞いた事がある。
初音の父、九鬼 澄隆は一人娘の初音に対して並々ならぬ愛情を注ぐ一方、その強過ぎる想いから過剰とも言える庇護の元、外部との交流を一切禁じた結果、城屋敷から自由に出歩く事さえ容易には許さなかったそうだ。
「そんなお前に結婚話ねぇ」
なんだか感慨深いような、途轍もなく不安なような、送り出す親父さんの心情が伝わってくる思いだ。
「そんな事より!早く行くのじゃ~♪」
分かりましたよ。
分かったから強く引っ張らないでもらうと有り難い、今にも肩を脱臼しそうだから。
――――――――――
緊張からの解放と町の散策。
初音にとっては初めてづくしで、テンションが上がってしまうのは無理もない事だろう。
子供が楽しそうにはしゃぐように、今は誰にも咎められず自由な時間を過ごさせてやりたい。
そんな事を考えていた30分前の自分に言ってやらねばならん。
あしなよ、Awazonで胃薬を買っておけ…と。
「ちょっ、待…!走るなぁぁあああ!!」
「ここは酒蔵か!?何を隠そう、酒はワシの大好物!買おう買おう!銭はあるんじゃ、ケチケチするな。あっちは米問屋か!お米の良い香りがするのう。あぁ!名物のへんば餅が売っておる!あっちは赤福茶屋!!絶対行きたい行きたい行きたい行きたい!!!」
こいつッッッ!タガが外れてやがる!!
自由。
鬱屈とした駕籠から解き放たれた鬼娘は、まさに庇護と言う名の檻を破壊したワガママ怪獣であった。
その様子は個人幼稚園といった感じで、あらゆる面倒事と騒動を一人で巻き起こす勢いだ。
こいつに比べればリュックから顔を出しているギンレイの方が遥かに行儀が良い。
鬼が有するフィジカルと見た目通りの精神年齢、それを併せ持つ初音を止める術など持っているはずもなく、ひたすらに右往左往する始末。
どうにか駄々っ子を呼び止めて醤油や味噌、干物や酒などを購入していくが、全く目が離せず気が気ではない。
「遅いぞ、あしな!
そろそろ憧賢木厳之御天疎向津比売之命に御挨拶して帰ろうぞ」
「つきさ……え?誰……人…?」
既に息が上がり疲労困憊の中で聞いた言葉が聞き取れず、何の事かも分からず後をついていく。
真っ直ぐ続く通りは競い合うように豪奢な商家が立ち並び、白漆喰に反射する午後の日射しが、行き交う人々の顔に浮かぶ汗を照らしだす。
延々と歩いた先に突然視界が開けたかと思うと、見上げる程の鳥居が姿を現した。
木材を削って作られたであろう鳥居は、簡素でありながら訪れた者に威厳と神性を感じさせる。
「…大きい神社だな、ここが…」
「うむ、2000年の永きに渡って此の地に御座す伊勢の神宮じゃよ」
食事ついでに町を見て行こう!」
人通りがなくなったのを見計らってスマホからバギーを消し、ふと疑問に思った事を口にしてみた。
「それは良いけど、お前は地元の鬼…人間だろ?何で見慣れた町を見たがるんだよ?」
途端に初音はもじもじとした仕草を見せ、ここにきて衝撃の告白を行う。
「実は…ワシ、町を歩くのは初めてなんじゃ。今までは駕籠から外の様子を眺める事しかできんかった…」
マジっすか…。
だけど、思い返してみれば町に着いてからの初音は妙に落ち着きがなく、どこか遊園地に来た子供みたいに浮かれていたように思えた。
以前、少しだけ聞いた事がある。
初音の父、九鬼 澄隆は一人娘の初音に対して並々ならぬ愛情を注ぐ一方、その強過ぎる想いから過剰とも言える庇護の元、外部との交流を一切禁じた結果、城屋敷から自由に出歩く事さえ容易には許さなかったそうだ。
「そんなお前に結婚話ねぇ」
なんだか感慨深いような、途轍もなく不安なような、送り出す親父さんの心情が伝わってくる思いだ。
「そんな事より!早く行くのじゃ~♪」
分かりましたよ。
分かったから強く引っ張らないでもらうと有り難い、今にも肩を脱臼しそうだから。
――――――――――
緊張からの解放と町の散策。
初音にとっては初めてづくしで、テンションが上がってしまうのは無理もない事だろう。
子供が楽しそうにはしゃぐように、今は誰にも咎められず自由な時間を過ごさせてやりたい。
そんな事を考えていた30分前の自分に言ってやらねばならん。
あしなよ、Awazonで胃薬を買っておけ…と。
「ちょっ、待…!走るなぁぁあああ!!」
「ここは酒蔵か!?何を隠そう、酒はワシの大好物!買おう買おう!銭はあるんじゃ、ケチケチするな。あっちは米問屋か!お米の良い香りがするのう。あぁ!名物のへんば餅が売っておる!あっちは赤福茶屋!!絶対行きたい行きたい行きたい行きたい!!!」
こいつッッッ!タガが外れてやがる!!
自由。
鬱屈とした駕籠から解き放たれた鬼娘は、まさに庇護と言う名の檻を破壊したワガママ怪獣であった。
その様子は個人幼稚園といった感じで、あらゆる面倒事と騒動を一人で巻き起こす勢いだ。
こいつに比べればリュックから顔を出しているギンレイの方が遥かに行儀が良い。
鬼が有するフィジカルと見た目通りの精神年齢、それを併せ持つ初音を止める術など持っているはずもなく、ひたすらに右往左往する始末。
どうにか駄々っ子を呼び止めて醤油や味噌、干物や酒などを購入していくが、全く目が離せず気が気ではない。
「遅いぞ、あしな!
そろそろ憧賢木厳之御天疎向津比売之命に御挨拶して帰ろうぞ」
「つきさ……え?誰……人…?」
既に息が上がり疲労困憊の中で聞いた言葉が聞き取れず、何の事かも分からず後をついていく。
真っ直ぐ続く通りは競い合うように豪奢な商家が立ち並び、白漆喰に反射する午後の日射しが、行き交う人々の顔に浮かぶ汗を照らしだす。
延々と歩いた先に突然視界が開けたかと思うと、見上げる程の鳥居が姿を現した。
木材を削って作られたであろう鳥居は、簡素でありながら訪れた者に威厳と神性を感じさせる。
「…大きい神社だな、ここが…」
「うむ、2000年の永きに渡って此の地に御座す伊勢の神宮じゃよ」
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