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第44話 キャンパーの俺が家政夫になった件

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「あー、湯加減はどうっすか?」

 僅か半日で鬼娘のパシリにまで落ちた俺の立場について考えるのは保留とする。
 あれから散々騒いだ末に交代で入る事になったのだが、こちらのお嬢様は風呂がぬるいと抜かしやがりましたので、こうして甲斐甲斐しく火力を調整している次第であります。

「うむ、ご苦労!
 こうして外で風呂を楽しむのも一興よな」

 はぁそうでっか、ほぅそうでっか。
 なるべく顔を上げないようにしているが、初音は肌を見られる事に抵抗がなさ過ぎて困る。
 鬼ってのは全部こんな感じなのか?

 敢えて考えても分からない事を考えて気分を紛らわす。
 すると、『暑い』と言って豪快にドラム缶から出ようとするので慌てて止めた。
 本当に心臓に悪いからヤメテ。

 しかも着替えがないとか言い出す始末。
 こいつ……どんだけ無計画なんだ…。

 呆れつつも裸で居させる訳にもいかず、わざわざホームに戻ってAwazonで服を購入しようとするが……どれを買えば良いのか、さっぱり分からん!
 そもそも初音の体型が謎過ぎる。
 子供服だと多分上着が入らず、大人服だとブカブカだろう。

 しばらく検索していると手頃なルームウェア ワンピースを見つけたので買ってみたが、これで大丈夫だろうか?
 一緒にタオルも用意したのでドラム缶の脇に置いて早々に離れた。

 遠くから着付けが分からないとか言う声が聞こえたが、簡単な構造なのですぐに理解すると思う。
 無駄に運動させられたが次にあいつは『腹が減った』と言うだろうから、先に食事の準備を進めておく。

 と言っても内容は実にシンプル、今日の夕食は待望の肉!
 しかも鮮度抜群のホルモンだ。
 こいつを焼きと鍋の両方で頂くのだが、なにしろ2mの大物猪から取れたので量が多い。
 いや、多過ぎると言えるが果たして食べきれるだろうか?

 遠くから初音の笑い声と水音、そしてギンレイの悲痛な鳴き声が聞こえてくるが、泥を落とすという名目で遊んでいるのだろう。
 兎に角だ、今はギンレイが身を挺して足止めしてくれている。
 さっさと準備を整えなくては!

 数種類のホルモンを下ごしらえした後に鍋に投入して火に掛ける。
 今回はちょっとした工夫を効かせてみたので完成が楽しみだ。

 次は平石を使った焼き肉。
 種類毎に竹皿へ移して、部位の味わいをしっかりと堪能する準備を整えていく。
 今の内に調味料を揃えておく為、Awazonでおろし金を買っておこう。

 ちょうど準備が完了した頃にタイミング良く初音が姿を現す。
 小脇のギンレイが疲れ果ててグッタリした姿が哀愁を誘う。

 ワンピース姿の初音は思ったよりも違和感がなく、一人でもちゃんと着れたようで安心した。…ちょっと服のサイズが小さ過ぎたかもしれんが。

「良い湯じゃった、満足じゃ~!
 して、今夜の夕餉は何かのう?
 期待してもよいのじゃろ?」

「おうよ、葦拿さん特製ホルモン料理だ、楽しみにしとけ~」
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