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第21話 明日のソロキャンのために(その3)

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「こうすると随分と違って見えるもんだ」

 一通りの園芸もどきを終えてホームの景観を眺めてみると、これまでの人を寄せ付けない不気味な雰囲気から一転、ちょっとした花畑が出来上がった。
 見た目もそうだが花々の精油が漂わせる香気は、忌避作用によって虫や害虫を追い払い、安眠効果まで期待できる。

 日のある内に余ったハーブを天日干しにすると、浸け置きしておいた洗濯物の様子を見に行く。
 河原へと降りていくと冬服は灰汁によって黒く染まっていたが、汗による不快な臭いは収まったように感じた。
 更に内部の汚れを落とす為にゴシゴシと揉み洗いを行い、ざっと絞って水気を落とすとバッグに投げ込む。

 ホームに戻って先程作ったロープの更に長い物を用意し、適当な2本の木の幹に両端部を縛って簡易物干しを完成させた。
 後は落ちている木の枝をナイフで成型してハンガーにすればOKだ、ちょい不恰好だが逆に愛着が湧くってもんよ。

 大自然の中で風に揺れる洗濯物を見ていると、日常と非日常が交錯しているようで何だか妙な気分を覚える。
 そろそろ保存食の仕込みに入る為、バッグ一杯の薪を用意してトライポッド前に陣取ると、ダッチオーブンに水を入れて湯を沸かし、保存用ガラス瓶の熱湯消毒を施した。

 次いで採取したタケノコを切り分けて煮沸し、瓶の中へと詰めていく。
 後はタケノコが完全に漬かるまで湯で満たし、蓋を軽く閉めたら再度火にかけて煮沸を行う。
 煮沸が済んだら一度瓶を冷まし、蓋をきっちり閉めた後にもう一回煮沸して自然冷却させればタケノコの水煮が完成。

 これで1年は常温保存が可能で、少し手間だが今から悪天候や冬を意識した保存食を用意しておくのは大事な事だろう。
 気付けば太陽が東の空へと傾きつつあり、この奇妙な自然現象を受け入れている自分と、あっと言う間に日が暮れてしまった事の両方に少し驚いてしまう。

 本日最後の仕事、夕食の仕込みを開始するが正直、今回は簡単に済ませるつもりだ。
 というのも、流石に丸一日動いたので疲れてしまった、明日もあるので早めに寝ておきたい。

 瓶に入りきらなかったタケノコに岩塩を加え、僅かに残る渋味を抑える為にロードマリンという香りの強いハーブを使ってみた。
 結果は……うん、悪くはないが…少しパンチが弱いというか、ぶっちゃけ味が薄い。
 やはり水気が多いと薄まってしまい、風味を感じられないなぁ。

 俺は近くにあった特別大きな葉っぱに注目すると、何枚か採取して水に浸し、岩塩を振ったタケノコとロードマリンを包み、ダッチオーブンの中に入れて蒸し焼きにしてみる。
 すると、なんとも不思議な甘い香りが辺りに立ち込めたので、予想外の展開にどんな味になるのか俄然興味が出てきた。

 しばらくして蒸し上がった物を一口してみると、今度はしっかりとした塩分とタケノコのシャキっとした歯応え、そして口内に広がるハーブの香りと清涼感に目が覚める思いを味わう。
 簡単だがアイディア次第でアレンジできそうな料理に手が止まらなくなり、気付けば結構な量を食べてしまった。

 その後、ハーブ園の隅で腹を空かせた子狼が恨めしそうな目でこちらを見ているのを発見し、機嫌を直してもらうのに相当苦労したのはここだけの話。

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