異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第二部 一章 この人数でもソロキャンと言いきる勇気編

カネ、持ってンのか?

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 翌朝は朝食のメインを務める魚を数匹釣り上げ、サワグリで出汁を取ったハトマメムギの味噌汁に、サワダイコンの漬け物を添えた。
 そして、極め付きは古代米のヌマタイネで作った山盛りの白米飯!
 我ながら、これぞ日本のゴキゲンな食卓って感じを再現できて実に満足だ。
 女媧ジョカ様には悪いけど、朝は三人と一匹で食事といこうか。

「こういうのってよォ~時代劇とかで観たんだよなぁ~! へェ~本当に実在すンだな~」

「……150年分のジェネレーションギャップは重みが違うねぇ」

 まさか自分が数週間前まで居た世界が、時代劇と同等の扱いを受けるとは…。
 いやいや、思い返してみれば俺も初音や八兵衛さんを見て、時代劇めいた印象を受けたのだから無理はない。

「そうじゃ、飯綱いずなはずっと神奈備《かんなび》のもりに住んでおったのかや? あのようなさびれた土地、ワシなら10日も経たずに飽きてしまうがのう」

 前回のキャンプは割とギリギリだったと判明。
 つーか、あれだけ大冒険の連続で飽きるって……どんだけ刺激にえてんだよ。

「いや、案外ラボに居ねェ時もあるのさ。
 邪魔くせェ大名のパシリやら、眉唾マユツバの噂を信じたマヌケが来る事もあったが……殆どが道中で喰われてたぜ」

 その話、朝食でする必要ある?
 森で見たデイドモグラノやツチナマズの巣を思い出し、意図せずしてはしを止めてしまう。
 恐ろしく物騒な話題を切り替えようと、わざとらしく咳払いをして話を振る。

「これを食べたら本格的に八兵衛さんの捜索を開始しよう。まずは大きな町で情報収集だな」

 初音から聞いたところによると、歩いて三日ほどの距離に大きな町があり、しかも日ノ本神社の本宗ほんそうである伊勢神宮も近いらしい。
 これは情報を集めるには、うってつけの場所!
 しかし、意気込む俺達を飯綱いずなが制止する。

カネ、持ってンのか?」

「え? 人にたずねるだけなのに、なんでお金?」

 ポカンとした表情の俺達を見て、大きな溜め息をつく未来人。
 俺は初音と顔を見合せ、ようやく合点がってんを得る。

「その溜め息は三杯目のお代わりが出てこない事への抗議か?」

ちげぇわ!
 お前らどンだけ平和ボケしてンだ!
 この国の連中はドイツもコイツも、今日生きてくだけの食い物だって事欠くような奴等ばっかだってェのによォ! 無償タダで教えてくれるわきゃーねェだろうが!」

 そうなの?
 普通は聞いたら答えてくれそうなモノだけど…。
 異世界初心者の俺では判断できず、初音は難しい顔で空になった茶碗を見つめている。
 ヤベー、やっぱ三合じゃ足りなかったな。

「あしなよ、今しがた見当違いな無礼を考えておらぬか? 否、それよりも委細いさい飯綱いずなの言う通りじゃ。
 どうにかして路銀を調達せねばならぬ…」

 重苦しい空気が流れる中、スマホに目を落とした俺は唐突に名案を閃く。

「そうだよ、Awazonのポイントで品物を買って、それを町で売れば……」

「それだきゃあヤメとけ。
 絶対に後悔する事になる――絶対に、な」

 …どうして?
 理由を聞こうとした直後、明らかに先程までの緩んだ空気とは異質なを感じ取り、口をつぐむ。
 警告じみた口調の飯綱いずなからは普段の余裕が一切感じられず、必要以上に力が込められた指先によって塞がれた唇は、決して口外する気はないという意志がにじむ。
 何故なぜなのか――聞いても答えないだろう。
 それっきり、微妙な雰囲気のまま朝食を終える事となった。

「お金かぁ……。
 異世界でも世知辛い話を聞くとはね」

 人探しの前にお金稼ぎ。
 だが、足踏みしている暇はない。
 俺達は捜索資金を集める為、それぞれが思う形で金策に乗り出した。

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