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第一部 ニ章 異世界キャンパー編
遠い記憶のカケラ
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――眩しい。
ここは…どこだ?
あれは…誰だっけ…。
ああ、思い出した。
俺だよ。
俺が……俺を見ている…?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「…………な……しな……あし……あしなぁ!」
ここは…どこだ?
あれは…誰だっけ…。
ああ、思い出した。
初音……また…会えたんだな。
…………また?
「…よォ……泣いてんのか?」
「うぅ、あああ……!!」
変な夢を見ていた気がする。
雪山キャンプ中に異世界に飛ばされて、ワケの分からん連中に…チンチクリンの子供。
遠い記憶のように思える夢。
死にかけたせいかな……。
「驚いたぞ。あれ程の重傷にも関わらず、持ち堪えてみせるとは……少しは誉めてやる」
「…そりゃどーもです」
八兵衛さんの手を借りて立ち上がったのに、初音はしがみついて離れようとしてくれない。
参ったな。
こういうのが一番苦手なんだけど…。
見ればギンレイも前足でガッチリと俺を捕まえ、悲しそうな声で鳴き続けていた。
どうやら随分と心配させてしまったらしい。
思った通り――痛みはあるが体は動かせる。
理屈は……考えても無駄だろう。
「ありがとうな。
初音のお陰で助かったよ。
ギンレイも無事で良かった…」
腰を屈めて初音とギンレイに精一杯の礼を言う。
今はそれだけで十分だ。
「お主は大馬鹿者じゃ!
うぶっ……うぅえぇぇぇ……」
返す言葉もない。
だけど、奇妙な確信を持っていた。
絶対に大丈夫だと……絶対に――死なない。
思い込みとか決意などではなく、そうならないという事実。
我ながら笑ってしまいそうな話だ。
――けど、昨夜は火傷で真っ赤に膨れ上がっていた右手が、今では痕も残さず治っているという現実をどう受け止めればいい?
俺は敢えて考える事を辞め、別件の気掛かりについて質問した。
「蛙はどうなりました?」
八兵衛さんが無言で親指を指す先には、冷たくなった巨体が横たわっていた。
俺が刺した腹部を中心に薄紫の変色が広がり、筋肉が意思のない痙攣を繰り返していた。
哀愁すら感じさせる姿に、改めて持つべきではない毒の力を見せつけているようだ。
「もう御存知かと思いますけど、アイツの体には絶対に触れないでください。
後の処理は俺が一人でやっておきます」
暗に殺した相手を埋葬したいという思いを察した八兵衛さんは、珍しく気遣う言葉を掛けてくれた。
「あれだけの大物なら手に余るだろう。
何故にお前が一人で背負い込もうとする?
殺めたのは事情があっての事。
寧ろ誇るがよい。お前は姫様を御守りしたのだ」
今夜の八兵衛さんは随分と優しいな。
しかし、俺は彼の申し出を断ってスコップを片手に一人で歩きだす。
フィッシュピックやケースはもちろん、プロテクターツールケースに入った残りも含め、一切の毒と共に蛙を埋葬する為の穴を掘り出す。
毅然とした態度に誰もが何も言わず見届けてくれたのは正直、言葉に出来ないほど救われた。
生き物を殺してしまった事への贖罪とするには余りに罪が軽く、この程度で許されるはずもないが…。
いや、それすらも言い訳か――。
「爺、あしなは…どうしてワシらを苦しめた化物の為に墓を掘っておる?」
「…………かつて初陣で手柄を立てた者も同様に、討ち取った者を手厚く供養したそうです。
葦拿にとっては今夜が初陣だったのでしょう」
静寂が支配する夜の戦場跡にて、戦いの幕は静かに降りゆく。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ここは…どこだ?
あれは…誰だっけ…。
ああ、思い出した。
俺だよ。
俺が……俺を見ている…?
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「…………な……しな……あし……あしなぁ!」
ここは…どこだ?
あれは…誰だっけ…。
ああ、思い出した。
初音……また…会えたんだな。
…………また?
「…よォ……泣いてんのか?」
「うぅ、あああ……!!」
変な夢を見ていた気がする。
雪山キャンプ中に異世界に飛ばされて、ワケの分からん連中に…チンチクリンの子供。
遠い記憶のように思える夢。
死にかけたせいかな……。
「驚いたぞ。あれ程の重傷にも関わらず、持ち堪えてみせるとは……少しは誉めてやる」
「…そりゃどーもです」
八兵衛さんの手を借りて立ち上がったのに、初音はしがみついて離れようとしてくれない。
参ったな。
こういうのが一番苦手なんだけど…。
見ればギンレイも前足でガッチリと俺を捕まえ、悲しそうな声で鳴き続けていた。
どうやら随分と心配させてしまったらしい。
思った通り――痛みはあるが体は動かせる。
理屈は……考えても無駄だろう。
「ありがとうな。
初音のお陰で助かったよ。
ギンレイも無事で良かった…」
腰を屈めて初音とギンレイに精一杯の礼を言う。
今はそれだけで十分だ。
「お主は大馬鹿者じゃ!
うぶっ……うぅえぇぇぇ……」
返す言葉もない。
だけど、奇妙な確信を持っていた。
絶対に大丈夫だと……絶対に――死なない。
思い込みとか決意などではなく、そうならないという事実。
我ながら笑ってしまいそうな話だ。
――けど、昨夜は火傷で真っ赤に膨れ上がっていた右手が、今では痕も残さず治っているという現実をどう受け止めればいい?
俺は敢えて考える事を辞め、別件の気掛かりについて質問した。
「蛙はどうなりました?」
八兵衛さんが無言で親指を指す先には、冷たくなった巨体が横たわっていた。
俺が刺した腹部を中心に薄紫の変色が広がり、筋肉が意思のない痙攣を繰り返していた。
哀愁すら感じさせる姿に、改めて持つべきではない毒の力を見せつけているようだ。
「もう御存知かと思いますけど、アイツの体には絶対に触れないでください。
後の処理は俺が一人でやっておきます」
暗に殺した相手を埋葬したいという思いを察した八兵衛さんは、珍しく気遣う言葉を掛けてくれた。
「あれだけの大物なら手に余るだろう。
何故にお前が一人で背負い込もうとする?
殺めたのは事情があっての事。
寧ろ誇るがよい。お前は姫様を御守りしたのだ」
今夜の八兵衛さんは随分と優しいな。
しかし、俺は彼の申し出を断ってスコップを片手に一人で歩きだす。
フィッシュピックやケースはもちろん、プロテクターツールケースに入った残りも含め、一切の毒と共に蛙を埋葬する為の穴を掘り出す。
毅然とした態度に誰もが何も言わず見届けてくれたのは正直、言葉に出来ないほど救われた。
生き物を殺してしまった事への贖罪とするには余りに罪が軽く、この程度で許されるはずもないが…。
いや、それすらも言い訳か――。
「爺、あしなは…どうしてワシらを苦しめた化物の為に墓を掘っておる?」
「…………かつて初陣で手柄を立てた者も同様に、討ち取った者を手厚く供養したそうです。
葦拿にとっては今夜が初陣だったのでしょう」
静寂が支配する夜の戦場跡にて、戦いの幕は静かに降りゆく。
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