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第一部 ニ章 異世界キャンパー編
あしなの賭け
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「がァッ! くっうぅ……目が……ッ!」
完全に不意を打たれた俺達は強烈な光をまともに浴びてしまい、視力を失って地面に昏倒してしまった。
恐らく、一時的な症状だと思うが……あの化物が悠長に回復を待ってくれるはずがない!
このままでは順番に食い殺されてしまう!
「不覚! 姫様は何処か!?」
「こ、ここじゃ…。ワシも目が……」
二人も同様の状態である事は判明したが、ギンレイの反応がないのは気掛かりだ。
あの子は化け蛙から最も近い場所に居た為、距離を取っていた俺達よりも受けたダメージが大きいだろう。
だとすると最初に狙われるのは――!
白銀の暗闇から耳に届いたのは空を切り裂くしなやかな音、そしてギンレイの悲痛な鳴き声だった。
数瞬の間を置いて何かが宙に放り出され、地面に落下した音が響く。
目が見えなくとも悲惨な状況がまぶたに浮かび、全身が怒りに震えた!
「ギンレイ!」
返事はない。
どこか遠くまで吹っ飛ばされたらしく、目の見えない現状では生存を確かめる事すら困難であった。
奴が光を弾いた原理は分からないが、攻撃パターンは既に把握している。
だとするなら…。
「初音、八兵衛さんも…絶対に動かないでくれ!
何が起きても…伏せたままにするんだ!」
「何を考えておる葦拿!?
このような術、波切り八兵衛にかかれば造作もなく打ち破れる! お前は引っ込んでおれ!」
雄壮な台詞を口にした古強者であったが、気合いで視力が戻るはずもなく、闇雲に洋弓を振り乱す音が聞こえてくる。
ダメだ!
下手に音を立てれば、かえって悪目立ちして次の標的にされてしまう。
俺はゆっくり起き上がると盲目の体で一歩ずつ、確実に歩みを進めた。
「あしな!? どこへ向かうつもりじゃ!」
足音で察した初音が制止するが構わず歩く。
ギンレイに次いで化け蛙との距離が近かったのは俺だ。
真っ直ぐに数mほど歩くだけで、奴が自慢気に披露していた舌の射程距離に入るはず。
その時こそ決着の瞬間だ!
「俺はここにいるぞ!
ずっと跡をつけてたもんなぁ!?
こいよ、俺を食ってみろ!」
あらん限りの大声で相手を挑発し、両手を広げて無抵抗をアピールする。
相手が人間なら、絶対に成立しないのだろうが――相手はただのデカい蛙。
俺を食い物としか見ておらず、学習の意義すら知らない怠け者に過ぎない。
案の定、何も考えずに舌を巻きつけたのは生物の急所である首!
実に野生動物らしい合理的で無慈悲な行動だ。
耳元では粘ついた音と共に、大口を開いて御馳走を丸飲みしようとするのが手に取るように分かった。
「たっぷりと味わってくれよ?
初音の手料理をな!」
馬鹿みたいな口に腕ごと突っ込んだのは、ダッチオーブンに入った熱々泥々のツチナマズスープ!
異常に気づいた蛙が吐き出そうとするが、軋む腕を無視して更に奥深くへと捩じ込む!
堪らず舌を解いた化け蛙。
手持ちの醤油と香辛料を全部使いきって煮込まれたナマズスープは、一口しただけで卒倒するくらい辛く、処分方法に頭を悩ませていた。
視力を失って倒れた際、偶然にも手に触れたダッチオーブンの熱で存在に気づいたのだ。
初音には悪いけど、有効活用させてもらったぜ!
完全に不意を打たれた俺達は強烈な光をまともに浴びてしまい、視力を失って地面に昏倒してしまった。
恐らく、一時的な症状だと思うが……あの化物が悠長に回復を待ってくれるはずがない!
このままでは順番に食い殺されてしまう!
「不覚! 姫様は何処か!?」
「こ、ここじゃ…。ワシも目が……」
二人も同様の状態である事は判明したが、ギンレイの反応がないのは気掛かりだ。
あの子は化け蛙から最も近い場所に居た為、距離を取っていた俺達よりも受けたダメージが大きいだろう。
だとすると最初に狙われるのは――!
白銀の暗闇から耳に届いたのは空を切り裂くしなやかな音、そしてギンレイの悲痛な鳴き声だった。
数瞬の間を置いて何かが宙に放り出され、地面に落下した音が響く。
目が見えなくとも悲惨な状況がまぶたに浮かび、全身が怒りに震えた!
「ギンレイ!」
返事はない。
どこか遠くまで吹っ飛ばされたらしく、目の見えない現状では生存を確かめる事すら困難であった。
奴が光を弾いた原理は分からないが、攻撃パターンは既に把握している。
だとするなら…。
「初音、八兵衛さんも…絶対に動かないでくれ!
何が起きても…伏せたままにするんだ!」
「何を考えておる葦拿!?
このような術、波切り八兵衛にかかれば造作もなく打ち破れる! お前は引っ込んでおれ!」
雄壮な台詞を口にした古強者であったが、気合いで視力が戻るはずもなく、闇雲に洋弓を振り乱す音が聞こえてくる。
ダメだ!
下手に音を立てれば、かえって悪目立ちして次の標的にされてしまう。
俺はゆっくり起き上がると盲目の体で一歩ずつ、確実に歩みを進めた。
「あしな!? どこへ向かうつもりじゃ!」
足音で察した初音が制止するが構わず歩く。
ギンレイに次いで化け蛙との距離が近かったのは俺だ。
真っ直ぐに数mほど歩くだけで、奴が自慢気に披露していた舌の射程距離に入るはず。
その時こそ決着の瞬間だ!
「俺はここにいるぞ!
ずっと跡をつけてたもんなぁ!?
こいよ、俺を食ってみろ!」
あらん限りの大声で相手を挑発し、両手を広げて無抵抗をアピールする。
相手が人間なら、絶対に成立しないのだろうが――相手はただのデカい蛙。
俺を食い物としか見ておらず、学習の意義すら知らない怠け者に過ぎない。
案の定、何も考えずに舌を巻きつけたのは生物の急所である首!
実に野生動物らしい合理的で無慈悲な行動だ。
耳元では粘ついた音と共に、大口を開いて御馳走を丸飲みしようとするのが手に取るように分かった。
「たっぷりと味わってくれよ?
初音の手料理をな!」
馬鹿みたいな口に腕ごと突っ込んだのは、ダッチオーブンに入った熱々泥々のツチナマズスープ!
異常に気づいた蛙が吐き出そうとするが、軋む腕を無視して更に奥深くへと捩じ込む!
堪らず舌を解いた化け蛙。
手持ちの醤油と香辛料を全部使いきって煮込まれたナマズスープは、一口しただけで卒倒するくらい辛く、処分方法に頭を悩ませていた。
視力を失って倒れた際、偶然にも手に触れたダッチオーブンの熱で存在に気づいたのだ。
初音には悪いけど、有効活用させてもらったぜ!
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