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第一部 ニ章 異世界キャンパー編

激レア生物、クチバシカモノのタマゴキッシュ

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「も、もう……走れねぇ……」

 知ってるか?
 卵運搬クエストをリアルにやると足腰が死ぬ。
 現実世界ならば、平和な日本ならば、絶対にあり得ないであろう出来事が毎日毎日クソみたいに降り注ぐ、それが異世界の日常。
 ぶっちゃけマジに帰りたい……。

「あしな、あしな!
『げきえあ』のタマゴじゃ!
 はよう食べようぞ!」

 どうしてそんなに元気なの?
 今さっき死にかけたんやで?
 しかし、超絶異世界アイドルの初音さんに言ったところで聞くはずもなく、フラつく膝にむち打って食事の準備に取り掛かる。

「あー…簡単なのでいいよな?
 つーか、改めてみるとデケぇな!」

 クチバシカモノのタマゴは重さが5kg近くあり、とてもではないが余程の大食漢でも一度では食べきれない。
 とはいえ、鬼みたいに喰う鬼娘と食べ盛りの狼がいるともなれば、一日で一個丸ごとイッてしまうかもな…。

「心配は無用じゃ。
 食べる事ならワシに任せるがよい!」

 誇らしげに張った胸が縦横に揺れるのを見て、を育てる為に飯を作っているのではと錯覚を起こしてしまう。
 …いやいや、アホな妄想よりも食事の準備だ。
 タマゴ料理を作るには当然、からを割らなければならないのだが…。

「嘘みたいに……カッテェ! 斧で叩いても傷すらつかないとか、もう冗談の域だろ…」

 これならハンターがうっかり落としてキレ散らかす心配がない一方、食べるとなると相当ハードルが高い。
 こんな時はお決まりのパターンだな。

「ハッハッハッ! どれ、不甲斐ない家来を助けてやるのも主人の勤めよなぁ! ほりゃせ~♪」

 誰が家来だよ?
 気の抜けた掛け声と共に振り下ろした拳は、岩みたいだったタマゴに一発で穴を開けた。
 バラバラに吹っ飛ばさなかった辺り、コイツにも人並みの理性があって安心した。

「うぃ~オツで~す」

 ご主人サマに感謝の言葉を述べ、茹でた後にペースト状にしたハトマメムギとタマゴを混ぜ、更にリエットや豆乳、チーズにネノヒラドンコを入れ、表面に乾燥ハーブを振ってダッチオーブンで焼き上げれば完成!

「簡単レシピの異世界キッシュの出来上がり~」

 フタに載せた炭を丁寧に取り除き、待ち望んだ扉を開け放つとタマゴの優しい香りが立ち込め、芳ばしい焼き色を伴ったキッシュの御披露目だ。
 シンプルながらもタマゴと穀物の相性は抜群で、疲れた体に素材の甘味が染み渡る。

「熱々の内に食べるのが礼儀!
 たっぷり焼いたから遠慮なくどうぞ」

「本当かのう?
 ワシが本気を出しても足りるのか?」

 そこは社交辞令みたいな台詞せりふだろ。
 リエットの塩気がバッチリと利いたキッシュは食べ応えもあり、豆乳とチーズによって深みのある味わいを実現していた。
 クチバシカモノのタマゴは通常の物と比べて粘り気が強く、熱を加える事で独特の食感が強調されて実に旨い!
 そういえば哺乳類のタマゴを食べれた日本人は何人いるんだ?
 いや、それ以前に哺乳類なのにタマゴを産むってどういう事なの?
 不思議な生物クチバシカモノ。
 二度と会いたくはないけど、その生態と美味しいタマゴに興味は尽きない。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ここまでのAwazonポイント収支

石鹸せっけんを作成――1000P』
『ヒメユリトウロウの毒を作成――50000P』
『豆乳チーズを作成――3000P』
『クチバシカモノのタマゴを採取――10000P』

 以下を購入

『ガラス容器――1000ポイント』
『ラップ――400ポイント』
『プロテクターツールケース――5000ポイント』
注連縄しめなわ(40本)――60000ポイント』
『メンズ夏服一式――4000ポイント』
『熊撃退スプレー(2本)――12000ポイント』

 現在のAwazonポイント――364,400P
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