異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

文字の大きさ
上 下
70 / 255
第一部 ニ章 異世界キャンパー編

あしなの懸念と不可視のバケモノ

しおりを挟む
 翌朝、俺達はテントだった残骸の上で目を覚ました。
 俺は全身が泥々の血塗れのままだったが、九死に一生を得た事で安堵してしまい、殆ど気絶同然で眠ってしまったのだ。
 見えない化物に散々ブン殴られ、買ったばかりの衣服は見るも無惨なボロ雑巾にされちまった。
 加えて、体のあっちこっちに数えきれない程の痛みがあり、骨や内臓へのダメージを心配したのだが――不思議と歩けているのは何故なぜだ…?

「運が……良かったの……かな……」

 全身をさいなむ痛みは本物であり、気のせいとか思ったより軽傷でしたとかいうレベルの話ではない。
 ……自分でも既に理解していた――死ななくてラッキー? そんなワケあるかよ!
 助かって重傷、悪けりゃ死んでてもおかしくない怪我を負い、運が良かったで済むハズがない。
 身体中に付着した血も自分の物ではなく、化物をナイフで切りつけた際の返り血だ。

 俺の体に何が起きているのか…。
 それを考えるのは昨夜の一件と同等の…いや、別種の言い知れぬ怖さがあり、とてもではないが考察などする気にはなれなかった。
 ましてや、それを初音に相談するなんて事は……絶対にしたくなかった。
 抱えきれない不安をどうにか押し込み、初音の方を見るとまだ寝起きでボーっとしている。
 全員が極度に疲労し、昨夜の忘れ難い出来事を無言のうちに思い返していた最中さなか、ギンレイが地面へ向かって吠えているのに気づく。

「どうしたんだよ。
 何か落ちてんのか?」

 重い体を引きずるようにしてギンレイが示す足元に目を向けると、いくつもの巨大な足跡が残されている。
 鹿や猪、狼や熊とも違う。
 水気を含んだ地面に刻まれた深い跡から、足跡の主は相当な巨体である事は疑う余地もなく、不吉な予感が胸中を漂う。
 だが、それはある種の希望を意味していた。

「……女媧ジョカの方は兎も角として、もう片方の奴は――魑魅魍魎バケモノでもなんでもない! 
 ここに残された血痕けっこんがそれを証明している!」

 至る所に見られる赤い血。
 朝陽によって照らし出された数々の手掛かりは地面だけでなく、俺の顔や手、衣服や靴にまでベッタリと付着しており、物理的手段が一切通用しなかった女媧ジョカとは別の、れっきとした生物だという証拠に他ならない。
 異星人と人間との激闘を描いたSF映画の傑作『プレデター』で、主人公のアラン・ダッチ・シェイファー少佐が口にした台詞せりふを思い出す。

「血が出るなら――殺せるはずだ…」

「お主が言うても締まらんのう」

 放っとけ。
 ようやく起き上がった初音に鋭いツッコミを入れ、出発の準備を整える。

「だけどな、俺にだって奥の手はあるんだぜ」

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...