上 下
67 / 153
第一部 ニ章 異世界キャンパー編

暗闇の襲撃者

しおりを挟む
「あしな! 気を抜くでないぞ!
 この程度の陣で大神たいしんを封じられるなら、最初から苦労などするものか!」

 狙い通り女媧ジョカの動きを止めて歓喜していた俺に、初音の鋭い声が飛ぶ。
 このまま追撃の巫女舞と祝詞で追い払うつもりなのだろう。
 しかし、この時の俺は勝利を確信するあまり、確かに気が緩んでいた。

「なに言ってんだ。もう勝ったも同然――」

 …………え?
 気づいた時には既に、周囲は見知らぬ景色へと目まぐるしく変わっていく最中さなか
 初音の姿がどんどん小さくなって……。
 手を伸ばしても全然届かない……。
 ――いや、これは……違う!
 

「うああああああああ!!」

「あしな! な、なにが起きたのじゃ!?」

 否応いやおうもなく抗えない力によって突き動かされた俺は、猛烈な勢いで頭からテントに突っ込む。
 混濁する意識の中、女媧ジョカを見ると――微動だにしていない!
 何か…俺の知らない不思議なチカラを使ったのか?
 全身が悲鳴を上げていたが、耐え難い痛みが逆に意識を覚醒させ、視えるはずのない暗闇に不気味な影を垣間かいま見せた。

「な…ん……足跡?
 徐々に……近寄って…………何かが……!?」

 女媧ジョカではない。
 もっと巨大で、もっとおぞましい――何か!
 宵闇の向こう側で見つめるモノ。
 どれだけ眼を見開いてもうつろな空間がそこにあるだけで、何かが潜む余地などないにも関わらず、俺の五感は確かに近づくを捉え、最大限の警告を発していた!
 身体中の皮膚に鳥肌が立ち、雷光にも似た恐怖が心を撃ち抜く。
 考えもしなかった……。
 まさか女媧ジョカに仲間がいただなんて!

「く、来るな! どっかいっちまえ!」

 殆ど無意識で拒絶の言葉を口にし、近くに転がっていたテントの残骸などを投げつけると、小さな石が空中で跳ね返るのを目撃した。
 やはり、そこに何かがいる!
 隣では難を逃れたギンレイが目前の空間へ向け、敵意を剥き出しにして猛然と吠えたて、必死になって俺を守ろうとしていた。
 緊張したにらみ合いが続くかと思われた矢先、突然ギンレイが身をひるがえした瞬間、地面が大きくえぐれて弾けた!

「一体どうなってんだ!?」

「ギンレイには何者かが見えておるのじゃ!
 彼奴きゃつもりまう魑魅魍魎ちみもうりょうかもしれぬ…。
 理屈は皆目かいもく見当もつかぬが…攻撃されておる!」

 野生の狼が持つ鋭い感覚のお陰か、未知の攻撃を回避したギンレイはなおも継戦の構えを取る一方で、俺には敵がどこに居るのかすら分からない。
 殺気に満ちた視線を感じ、襲撃者を探すべく辺りを警戒していると今度は足首に衝撃が走った直後、成すすべもなく引き倒され、凄まじい勢いで引きずられていく!

「なァ!? 畜生! どこにいやがる!」

 これも女媧ジョカの差しがねなのかと視線を向けると、奴は最初の位置から全く動いておらず、それどころか別方向に引っ張られている事に気づく。
 しかも、足首を通して伝わる感触は…粘つく触手みたいで気味が悪い。
 このまま引きずられたら――俺はどうなる!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...