50 / 54
第一部 ニ章 異世界キャンパー編
三星レアリティ! イワガニモドキの刺身コース
しおりを挟む
鬼娘と狼の注文に応えるべく、高速で焼きと消費を繰り返す。
俺も合間に堪能させてもらっているが、まだまだフルコースは始まったばかり。
「さぁ~て、ここからは趣向を変えさせてくぜ? 新鮮だからこそ口にできる魅惑の刺身だ!」
「おぃぃい! そんなもん旨い奴じゃろ!?
絶対最高に決まっておろうよ! あああ!
何故に酒がないのかぁぁあ!」
涙を流して悔しがる初音。
正直、そこまでされると逆に引くぞ。
「あ、あぁ…まぁ落ち着いて?
ほらほら、まずは食べてみなよ」
涙で前が見えてない初音に剥き身を手渡す。
使うのは薄口醤油。
濃口ではカニの甘味が上書きされてしまう為、邪魔をしない薄口を選択した。
さて、お味の方は?
「旨いのぉぉお! でも、しょっぱいのじゃ~」
それは泣いてるからだろ。
俺も一口してみると、焼きとは一風違った味わいに驚く。
甘味は焼きよりも薄く感じる一方、爽やかな香りは一層引き立ち、歯応えも……――!? じっくりと噛み締めようと思ったのに、まるでシャーベットのように溶けてしまった!
そんな馬鹿なという思いに突き動かされ、再び口に運ぶが……やはり! 旨味を含んだ液体の如く、殆ど抵抗もないままに口内から消えていく!
「な、なぁ…刺身スゴくない?
実は俺、蟹の刺身って初めてなんだけどさ、こんな感じなのか?」
「うぅ…刺身で食せる蟹なんて極一部じゃ~。ワシもイワガニモドキを刺身で喰らったのは初めてじゃよ~」
まだ泣いてるよ…。
それにしても、『異世界の歩き方』に書いてあったので刺身に挑戦してみたが、現地(現世?)の住人である初音も知らない調理法だとは思わなかった。
俺の居た世界でも刺身で食べられるのは、取れたての紅ズワイガニだけだという事を考えれば、かなり珍しい食べ方なのかもしれない。
「だったらコレも初体験だな。
蟹味噌の刺身!
一体どんな味なのか…ワクワクするぜ~!」
こちらも少量の薄口醤油をつけて頂く。
味の方は――あぁ…想像を超えて上品な旨味が広がっていく…。
それもそのハズ、たった今とってきたばかりという事もあり、臭みなど一切ないベストな状態で口にしたのだ。
焼きと比べると少し水っぽい印象を受けるが、自然なままの濃厚な味わいは他では体験できないだろう。
また、痛みやすい部位なので口にする事がそもそも稀少だと言える。
ギンレイはカワラムシャガニの時と同様に、硬い殻ごとバリバリと食べているので、焼きよりも刺身の方を好むらしい。
どちらが旨いというよりも、両者それぞれに独自の良さがあるという方が正しい表現だと思う。
「最後の部位はタマゴ。
こっちはどうかな~?」
腹からハミ出してしまっている大量のタマゴ。
オレンジ色の粒は艶々と輝き、それら全てが好奇に湧く俺達の顔を照らし出す。
薄口醤油をまぶすと更に輝きを増し、酒よりも炊き立ての白米が欲しいが、そこをグッと我慢して一気に掻き込む。
「ああ~、やっぱ白米は絶対要るだろ~!
濃厚過ぎて脳が焼けるわコレ」
秒で吹き飛ぶ我慢という概念。
いや、これは仕方ないって!
イクラよりも小さな粒はそれぞれが旨味の爆弾と評しても過言ではなく、あまりにも濃密な味わいは白米でセーブしないと、途中で箸が止まってしまう程。
自分の意識に反して、指が制限をかけてしまうという謎現象まで引き起こすレベル。
「うぅぅ……酒ぇ~~……」
再び涙に沈む初音。
今夜のフルコースも最後の一品を残すのみ。
暗闇が深まる中で開かれた夜会も、閉幕の時が近付きつつあった。
俺も合間に堪能させてもらっているが、まだまだフルコースは始まったばかり。
「さぁ~て、ここからは趣向を変えさせてくぜ? 新鮮だからこそ口にできる魅惑の刺身だ!」
「おぃぃい! そんなもん旨い奴じゃろ!?
絶対最高に決まっておろうよ! あああ!
何故に酒がないのかぁぁあ!」
涙を流して悔しがる初音。
正直、そこまでされると逆に引くぞ。
「あ、あぁ…まぁ落ち着いて?
ほらほら、まずは食べてみなよ」
涙で前が見えてない初音に剥き身を手渡す。
使うのは薄口醤油。
濃口ではカニの甘味が上書きされてしまう為、邪魔をしない薄口を選択した。
さて、お味の方は?
「旨いのぉぉお! でも、しょっぱいのじゃ~」
それは泣いてるからだろ。
俺も一口してみると、焼きとは一風違った味わいに驚く。
甘味は焼きよりも薄く感じる一方、爽やかな香りは一層引き立ち、歯応えも……――!? じっくりと噛み締めようと思ったのに、まるでシャーベットのように溶けてしまった!
そんな馬鹿なという思いに突き動かされ、再び口に運ぶが……やはり! 旨味を含んだ液体の如く、殆ど抵抗もないままに口内から消えていく!
「な、なぁ…刺身スゴくない?
実は俺、蟹の刺身って初めてなんだけどさ、こんな感じなのか?」
「うぅ…刺身で食せる蟹なんて極一部じゃ~。ワシもイワガニモドキを刺身で喰らったのは初めてじゃよ~」
まだ泣いてるよ…。
それにしても、『異世界の歩き方』に書いてあったので刺身に挑戦してみたが、現地(現世?)の住人である初音も知らない調理法だとは思わなかった。
俺の居た世界でも刺身で食べられるのは、取れたての紅ズワイガニだけだという事を考えれば、かなり珍しい食べ方なのかもしれない。
「だったらコレも初体験だな。
蟹味噌の刺身!
一体どんな味なのか…ワクワクするぜ~!」
こちらも少量の薄口醤油をつけて頂く。
味の方は――あぁ…想像を超えて上品な旨味が広がっていく…。
それもそのハズ、たった今とってきたばかりという事もあり、臭みなど一切ないベストな状態で口にしたのだ。
焼きと比べると少し水っぽい印象を受けるが、自然なままの濃厚な味わいは他では体験できないだろう。
また、痛みやすい部位なので口にする事がそもそも稀少だと言える。
ギンレイはカワラムシャガニの時と同様に、硬い殻ごとバリバリと食べているので、焼きよりも刺身の方を好むらしい。
どちらが旨いというよりも、両者それぞれに独自の良さがあるという方が正しい表現だと思う。
「最後の部位はタマゴ。
こっちはどうかな~?」
腹からハミ出してしまっている大量のタマゴ。
オレンジ色の粒は艶々と輝き、それら全てが好奇に湧く俺達の顔を照らし出す。
薄口醤油をまぶすと更に輝きを増し、酒よりも炊き立ての白米が欲しいが、そこをグッと我慢して一気に掻き込む。
「ああ~、やっぱ白米は絶対要るだろ~!
濃厚過ぎて脳が焼けるわコレ」
秒で吹き飛ぶ我慢という概念。
いや、これは仕方ないって!
イクラよりも小さな粒はそれぞれが旨味の爆弾と評しても過言ではなく、あまりにも濃密な味わいは白米でセーブしないと、途中で箸が止まってしまう程。
自分の意識に反して、指が制限をかけてしまうという謎現象まで引き起こすレベル。
「うぅぅ……酒ぇ~~……」
再び涙に沈む初音。
今夜のフルコースも最後の一品を残すのみ。
暗闇が深まる中で開かれた夜会も、閉幕の時が近付きつつあった。
12
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる