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第一部 ニ章 異世界キャンパー編
隠れた食材、イワガニモドキのフルコース!
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大型の寸胴鍋にも入りきらない程に、山盛りに積み上げられたイワガニモドキ。
その全てを余さず堪能するには、料理パートに合わせて調理器具を使い分けるしかない。
俺は川原から大きくて平たい石を見つけるとタワシで汚れを落とし、直接火にかけた。
「この方法は猪の時と同じじゃのう。
手軽で調達にも困らぬ上、自然を直接感じられる調理法じゃわい」
「お前もたいぶアウトドアに染まってきたな。でもな、俺の居た世界では綺麗な川が少なくなっちまったもんでさ、石焼はむしろ少数派の楽しみ方なんだよ」
意外そうな顔で驚く初音。
元の世界では環境の悪化に伴い、川の汚染も深刻となった影響で、落ちていた石で調理する方法は決して推奨されるモノではない。
しかし、手付かずの自然が残る異世界日ノ本となれば話は別。
こうして汚れを掃除してしまえば、立派な調理器具として活躍してくれるのだ。
「まずは定番の焼きガニから」
豪快に数匹を平石にのせ、じっくりと焼き上げていく。
まずはイワガニモドキが本来持っている旨味を楽しむ為、余計な味付け無しで頂く。
その間に他の準備も平行して行い、バタバタとした中で漂ってくる香りに最高の夕食を確信する。
今日も山道を歩いた事で体内のカロリーは底を突き、体全体が目の前の食事を口にしたくて仕方がないと訴える。
ここは本能のままに、空腹に従っておくのがベストだろう。
俺は焼き上がった蟹を手早く竹皿に移すと、早速とばかりに足をもぎ取って皆に配膳した。
「中は…おぉ、薄いピンク色の身がギッシリ詰まってるぞ!」
無抵抗に殻から抜け出した蟹足を、贅沢にも丸々一本ダイレクトに口へと運ぶ。
途端に口内を駆け巡る芳醇な甘味!
何の香辛料も使っていないにも関わらず、鼻孔をくすぐる松の葉を思わせる爽やかな香り。
噛めば噛む程に旨味が広がっていきーーなんて充実した至福の一時!
振り返れば初音とギンレイも無言ながら、全面的に同意を示しているのは表情を見れば一目瞭然だ。
「くぅぅぅう! こりゃ堪らんのう!
なにをしておるのか、酒を持ってくるのじゃ。イワガニモドキ殿を最高の酒でもてなせ!」
大の酒好きを自称する初音は興奮気味にまくし立て、しきりに有りもしない酒を要求してきた。
その見た目で飲酒はどう考えてもNGだろ…。
「酒ねぇ。そいつはまだ用意できてないんだよ。ほら、焼きたてのカニで我慢しな」
「まだ!?
まだというと、いずれは呑めるんじゃな?
絶対じゃぞ! ワシ、覚えておるからな!」
「どんだけ飲みたいんだよ」
『異世界の歩き方』に載っていた鉱石があれば、あるいは酒の生成も可能になるかもしれない。
実はその情報を掴んでから探し続けているのだが、未だに見つかっていない幻の鉱石。
初音の言う通り、ここに酒があれば最高の肴になったと思う。
「まぁ、楽しみは後に取っておくのも一興だよ。たとえば…こんな風にね」
カニといえば忘れちゃいけない。
ナイフを使って殻を取り除くと、立ち上る湯気と共に姿を現したのは蟹味噌。
好きな人は足よりも好物だと公言するであろう、旨味たっぷりのお楽しみ部位。
こぼさないように注意して竹皿に入れ、冷ました物をギンレイに配り、残りを初音へ手渡す。
「そうそう、蟹といえばコレじゃよなぁ!
殻を器にして一気に食せば……旨いに決まっておろう!?」
今日の初音は一際にテンションがおかしい。
これは酒がない方が正解なのかもしれん…。
こんな感じで絡まれたら手がつけられないからな。
「どれどれ…あぁ、この濃厚な旨味……。
ほんのりとした苦味が堪んねぇ…」
熱々の蟹味噌が疲れた体に染みていく。
え? こんなにも旨いカニが食い放題?
俺、ホームからここに引っ越そうかな…。
思わず女媧の事を忘れてしまいそうになる。
そう、幸せの時間はこれからが本番を迎えるのだ。
その全てを余さず堪能するには、料理パートに合わせて調理器具を使い分けるしかない。
俺は川原から大きくて平たい石を見つけるとタワシで汚れを落とし、直接火にかけた。
「この方法は猪の時と同じじゃのう。
手軽で調達にも困らぬ上、自然を直接感じられる調理法じゃわい」
「お前もたいぶアウトドアに染まってきたな。でもな、俺の居た世界では綺麗な川が少なくなっちまったもんでさ、石焼はむしろ少数派の楽しみ方なんだよ」
意外そうな顔で驚く初音。
元の世界では環境の悪化に伴い、川の汚染も深刻となった影響で、落ちていた石で調理する方法は決して推奨されるモノではない。
しかし、手付かずの自然が残る異世界日ノ本となれば話は別。
こうして汚れを掃除してしまえば、立派な調理器具として活躍してくれるのだ。
「まずは定番の焼きガニから」
豪快に数匹を平石にのせ、じっくりと焼き上げていく。
まずはイワガニモドキが本来持っている旨味を楽しむ為、余計な味付け無しで頂く。
その間に他の準備も平行して行い、バタバタとした中で漂ってくる香りに最高の夕食を確信する。
今日も山道を歩いた事で体内のカロリーは底を突き、体全体が目の前の食事を口にしたくて仕方がないと訴える。
ここは本能のままに、空腹に従っておくのがベストだろう。
俺は焼き上がった蟹を手早く竹皿に移すと、早速とばかりに足をもぎ取って皆に配膳した。
「中は…おぉ、薄いピンク色の身がギッシリ詰まってるぞ!」
無抵抗に殻から抜け出した蟹足を、贅沢にも丸々一本ダイレクトに口へと運ぶ。
途端に口内を駆け巡る芳醇な甘味!
何の香辛料も使っていないにも関わらず、鼻孔をくすぐる松の葉を思わせる爽やかな香り。
噛めば噛む程に旨味が広がっていきーーなんて充実した至福の一時!
振り返れば初音とギンレイも無言ながら、全面的に同意を示しているのは表情を見れば一目瞭然だ。
「くぅぅぅう! こりゃ堪らんのう!
なにをしておるのか、酒を持ってくるのじゃ。イワガニモドキ殿を最高の酒でもてなせ!」
大の酒好きを自称する初音は興奮気味にまくし立て、しきりに有りもしない酒を要求してきた。
その見た目で飲酒はどう考えてもNGだろ…。
「酒ねぇ。そいつはまだ用意できてないんだよ。ほら、焼きたてのカニで我慢しな」
「まだ!?
まだというと、いずれは呑めるんじゃな?
絶対じゃぞ! ワシ、覚えておるからな!」
「どんだけ飲みたいんだよ」
『異世界の歩き方』に載っていた鉱石があれば、あるいは酒の生成も可能になるかもしれない。
実はその情報を掴んでから探し続けているのだが、未だに見つかっていない幻の鉱石。
初音の言う通り、ここに酒があれば最高の肴になったと思う。
「まぁ、楽しみは後に取っておくのも一興だよ。たとえば…こんな風にね」
カニといえば忘れちゃいけない。
ナイフを使って殻を取り除くと、立ち上る湯気と共に姿を現したのは蟹味噌。
好きな人は足よりも好物だと公言するであろう、旨味たっぷりのお楽しみ部位。
こぼさないように注意して竹皿に入れ、冷ました物をギンレイに配り、残りを初音へ手渡す。
「そうそう、蟹といえばコレじゃよなぁ!
殻を器にして一気に食せば……旨いに決まっておろう!?」
今日の初音は一際にテンションがおかしい。
これは酒がない方が正解なのかもしれん…。
こんな感じで絡まれたら手がつけられないからな。
「どれどれ…あぁ、この濃厚な旨味……。
ほんのりとした苦味が堪んねぇ…」
熱々の蟹味噌が疲れた体に染みていく。
え? こんなにも旨いカニが食い放題?
俺、ホームからここに引っ越そうかな…。
思わず女媧の事を忘れてしまいそうになる。
そう、幸せの時間はこれからが本番を迎えるのだ。
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