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SWEET PAIN
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小野寺が先にこちらを向き、強張った顔をした。それからその女性も続けて顔をこちらに向け、渚の顔をジロリと一瞥した。
小野寺が女性の手を振りほどき、慌てた様子で渚に近づいてくる。引ったくるようにトレーを取り上げられ、そこで初めて渚は今の自分の状況に気がついた。
眼にした光景に驚いた拍子に渚はよろめいたらしく、トレーを取り落としそうになったのだ。湯飲み茶碗がひっくり返ってお茶が左手にかかり、手首までびしょびしょに濡れていた。
「おい、大丈夫か……!火傷したんじゃないか?」
渚から奪い取ったトレーをテーブルに乗せると、小野寺は「見せてみろ」と言って渚の手を取った。
お茶の熱さで手のひらが少しだけじんじんしているが、手首を握る小野寺の体温に何故か妙に安堵して胸がツンと痛くなった。
渚はほんの数秒ぼーっとしかけたものの、すぐに我に返って慌てて女性客に頭を下げた。
「あ……っ。も、申し訳ありません……!すみません、あの、お洋服、汚れませんでしたか?あの、本当に申し訳ございません……っ」
「あー、私は平気よ。なんだか刺激の強いとこ見せちゃってごめんなさいね。動揺しちゃったのね」
余裕の表情でにっこり微笑まれ、渚はうろたえて耳まで紅くなった。くっきりとした派手な顔立ちの美人は、どこか面白がるような笑みを浮かべて渚を観察している。
心臓がドキドキ激しく音を立て、羞恥心から今すぐ逃げ出したい気持ちになった。
「朝岡、ここはもういいからすぐ水で冷やせ。流水で冷やすんだぞ。おい、葛城!ちょっとここ片付け頼む!雑巾持ってきてくれ」
小野寺がフロアにいる祥子を呼んだ。その間も、小野寺は渚の腕を掴んだまま離さない。それが少しだけ嬉しかった。惨めな気持ちになると同時に、小野寺が心配してくれていることに秘かな喜びを抱いてしまい、渚はますます自分が情けない人間に思えてきた。
祥子が飛んできて、濡れた床とひっくり返った茶碗を見て「あらーっ」と声を上げた。手にしていた雑巾で床を手早く拭き始めたので、渚も慌てて手伝おうとした。が、小野寺に「バカっ、おまえはまず手を冷やせ」と叱られ、強制的に応接室から追い出されてしまった。
給湯室の流しで手を冷やした。幸い熱湯ではなかったため、ひどい火傷にはならずに済みそうだ。後で念のために軟膏を塗っておけば大丈夫だろう。
蛇口からの流水を手に当てながら、さっき眼にした衝撃的なシーンを思い浮かべた。
一瞬だったから定かではないけれど、小野寺はあの女性の身体に手を回してはいなかったように思う。女性が一方的に小野寺に抱きついていた気がするけれど、それも渚の都合のいい願望かもしれない。
以前からの知り合いなのだろうか。あんなふうに身体を寄せてもおかしくないほど、親しい間柄なのだろうか。もし渚があのとき応接室に入って行かなかったら、あのままふたりはキスしていたのだろうか……。
あの応接室で、渚は小野寺と秘密の時間を共有した。同じ場所で、今日の小野寺は別の女性と身体を寄せ合っていた。それを思うと瞼が熱くなって、涙がこぼれ落ちそうになる。
もうここまでくれば否定のしようがなかった。自分は小野寺のことが好きなのだ。
いろいろ腹が立つし世話も焼けるし呆れることも多いけれど、それでも離れようと思わなかったのは相手が小野寺だからだ。文句を言いながらも、渚自身が小野寺から離れたくなかった。その気持ちを自覚するのが怖くて、ずっと素直になれずにいた。
けれどもあんなふうに甘く激しいキスを何度もして、官能的に肌に触れられて、自分の中でひたすら押し隠してきた恋心があふれ出してしまった。だからさっきの光景を見て、自分はこれほどまでに傷ついているのだ。
泣き出しそうなのをグッと堪えて鼻を啜っていると、トレーを抱えた祥子が給湯室に入ってきた。
眼や鼻が紅くなっていないかと一瞬焦ったけれど、祥子はあえて気づかないふりで明るく声を掛けてくれた。
「大丈夫?火傷になりそう?」
「いえ、たいしたことないです。本当にすみません、返って迷惑かけちゃいました。ごめんなさい」
「いーわよ、そんなの。気にしないの。あ、あの客はもう帰るからお茶いらないってさ」
祥子がさっぱりした顔で笑い、「まあ、もともとたいした客じゃないけどね」と舌を出した。
「それにしてもお茶出しのプロの朝岡ちゃんにしては珍しいね。何かあったの?」
祥子がさりげなく問いかけてくる。渚が答えに詰まっていると、祥子はやや声を潜めて渚の横顔を覗き込んだ。
「もしかして、あの女がまた社長に迫ってたとか……?」
「えっ……。また、って……」
「やっぱ、そうなんだ。現場見ちゃった?だとしたらショックだったか、朝岡ちゃんには」
祥子が流しに湯呑みを置きながら、やれやれとでも言うように肩をすくめた。
「あの人ね、もともとナレーターコンパニオンやってた人で松江さんって言うの。松江のぞみ。昔イベントのときにうちから何度か仕事を頼んだことがあってね。あの人その頃からうちの社長に熱上げてて、そりゃーもうベタベタすごかったのよ」
ナレーターコンパニオンという職業が、あまりにも似合いすぎるタイプに見えた。年齢は30代だと思うが、人前に立って脚光を浴びることに慣れているような独特の空気を滲ませている女性だった。
「社長はあのルックスと肩書だから、女に言い寄られること自体珍しくないじゃない?その辺はそつなく、相手の機嫌を損ねない程度に上手いことあしらってたのよね。で、そのうち松江さんもナレーターの仕事を辞めたみたいで見かけなくなってたの。それが最近、彼女自身が社長になってコンパニオンの派遣会社を立ち上げたんだって。で、昔のよしみでうちと取引したいって頼みに来たのよ」
「そうだったんですか……」
「仕事にかこつけて、またしつこく社長に言い寄ろうと思ったんだろうね。無駄なのにね」
「……無駄、ですか……?あの人、すごくキレイだったし」
しかもこっちが落ち込むくらいスタイルも良かった。小野寺だって、あんな色っぽい女性に言い寄られたら悪い気なんてしないだろう。
「無駄だよー。ああいうタイプ、社長の好みじゃないもん」
そうなのだろうか。じゃあ、社長の好みっていったい……。
思い切って祥子に聞いてみようかと思った瞬間、廊下からカツカツとヒールの音が響いてきた。
渚は思わず給湯室から飛び出し、ロングヘアをなびかせている松江のぞみに後ろから声を掛けた。
「あの、先程は大変失礼いたしました。本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げると、「あら、そんな気にしないで」と軽やかに微笑まれる。さすがにプロのナレーターだけあって、よく通る綺麗な声だった。が、改めてその表情を伺うと、瞳の奥に渚を値踏みするような尖った光が宿っていた。
「小野寺さんのお気に入りのアシスタントがいるって聞いてたけど、あなただったのね。……ちょっと意外だったわぁ」
どういう意味か分からず渚が戸惑っていると、彼女はクスクス笑い出した。
「ああ、ごめんなさい。悪い意味じゃないのよ。想像してたよりずっと……純情そうだなぁって。さっきの、びっくりしちゃったわよね。ごめんなさいね」
子供っぽいと言いたいのだろう。たしかにさっきの失態にしろ普段の態度にしろ、28の社会人にしては自分は幼いかもしれない。自覚しているけれど、自分とは対照的な美女に言われるとやはり気持ちは凹む。
「あの……、タイミングも悪くて本当に失礼しました」
「だから気にしないでいいのよぉ。でもあなた、そんなにウブでよく小野寺さんのアシスタントやってられるわねぇ」
不意に小野寺の唇や手のひらの感触が蘇ってきて、心臓がドクンと鳴った。
ウブ……?渚は小野寺の手によって絶頂を感じたあの夜を思い出し、眼の前の女性に反論したいような気持ちになった。
「あらやだ、そんな怖い顔しないで。またお仕事のお願いに伺うと思うから、仲良くしましょ。そのときはよろしくね」
松江のぞみはいかにも作り慣れた笑顔を見せると、くるりと背を向けてエレベーターホールへ姿を消した。フレグランスの残り香が辺りに漂う。給湯室から様子を伺っていた祥子が出てきて、「うわぁ、相変らず食えない女!」と顔をしかめていた。
その日の帰りは、久しぶりに小野寺が車で送ってくれることになった。
火傷はたいしたことなかったし、別に天気も悪くない。残業だって少ししかしていない。なのに「今日は車で送る」と言われ、渚は少々戸惑った。
何か話したいことでもあるのだろうか。昼間の、松江のぞみと関係あることかもしれない。まさかとは思うけれど、「彼女とつきあう」などと宣言されるのではと悪い想像が働いてしまい、渚は助手席で妙に身を固くしながら緊張していた。
「昼間、悪かったな。変なとこ見せて驚かせて」
ハンドルを握りながら、ぽつりと小野寺が呟いた。やっぱりこの話題が来た。渚はドキッとしながらも「いえ、そんな」と短く返事をする。
「言い訳がましく聞こえるだろうけど、あれはハプニング的なものだから」
「……あ、はい。……そういうふうに、見えました」
「あっちからいきなり抱きついてきた。俺は何もしてない。その……、そこは誤解してくれるな」
小野寺の声は少し掠れていて、一度改まったように咳払いした。
小野寺が女性の手を振りほどき、慌てた様子で渚に近づいてくる。引ったくるようにトレーを取り上げられ、そこで初めて渚は今の自分の状況に気がついた。
眼にした光景に驚いた拍子に渚はよろめいたらしく、トレーを取り落としそうになったのだ。湯飲み茶碗がひっくり返ってお茶が左手にかかり、手首までびしょびしょに濡れていた。
「おい、大丈夫か……!火傷したんじゃないか?」
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お茶の熱さで手のひらが少しだけじんじんしているが、手首を握る小野寺の体温に何故か妙に安堵して胸がツンと痛くなった。
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祥子が飛んできて、濡れた床とひっくり返った茶碗を見て「あらーっ」と声を上げた。手にしていた雑巾で床を手早く拭き始めたので、渚も慌てて手伝おうとした。が、小野寺に「バカっ、おまえはまず手を冷やせ」と叱られ、強制的に応接室から追い出されてしまった。
給湯室の流しで手を冷やした。幸い熱湯ではなかったため、ひどい火傷にはならずに済みそうだ。後で念のために軟膏を塗っておけば大丈夫だろう。
蛇口からの流水を手に当てながら、さっき眼にした衝撃的なシーンを思い浮かべた。
一瞬だったから定かではないけれど、小野寺はあの女性の身体に手を回してはいなかったように思う。女性が一方的に小野寺に抱きついていた気がするけれど、それも渚の都合のいい願望かもしれない。
以前からの知り合いなのだろうか。あんなふうに身体を寄せてもおかしくないほど、親しい間柄なのだろうか。もし渚があのとき応接室に入って行かなかったら、あのままふたりはキスしていたのだろうか……。
あの応接室で、渚は小野寺と秘密の時間を共有した。同じ場所で、今日の小野寺は別の女性と身体を寄せ合っていた。それを思うと瞼が熱くなって、涙がこぼれ落ちそうになる。
もうここまでくれば否定のしようがなかった。自分は小野寺のことが好きなのだ。
いろいろ腹が立つし世話も焼けるし呆れることも多いけれど、それでも離れようと思わなかったのは相手が小野寺だからだ。文句を言いながらも、渚自身が小野寺から離れたくなかった。その気持ちを自覚するのが怖くて、ずっと素直になれずにいた。
けれどもあんなふうに甘く激しいキスを何度もして、官能的に肌に触れられて、自分の中でひたすら押し隠してきた恋心があふれ出してしまった。だからさっきの光景を見て、自分はこれほどまでに傷ついているのだ。
泣き出しそうなのをグッと堪えて鼻を啜っていると、トレーを抱えた祥子が給湯室に入ってきた。
眼や鼻が紅くなっていないかと一瞬焦ったけれど、祥子はあえて気づかないふりで明るく声を掛けてくれた。
「大丈夫?火傷になりそう?」
「いえ、たいしたことないです。本当にすみません、返って迷惑かけちゃいました。ごめんなさい」
「いーわよ、そんなの。気にしないの。あ、あの客はもう帰るからお茶いらないってさ」
祥子がさっぱりした顔で笑い、「まあ、もともとたいした客じゃないけどね」と舌を出した。
「それにしてもお茶出しのプロの朝岡ちゃんにしては珍しいね。何かあったの?」
祥子がさりげなく問いかけてくる。渚が答えに詰まっていると、祥子はやや声を潜めて渚の横顔を覗き込んだ。
「もしかして、あの女がまた社長に迫ってたとか……?」
「えっ……。また、って……」
「やっぱ、そうなんだ。現場見ちゃった?だとしたらショックだったか、朝岡ちゃんには」
祥子が流しに湯呑みを置きながら、やれやれとでも言うように肩をすくめた。
「あの人ね、もともとナレーターコンパニオンやってた人で松江さんって言うの。松江のぞみ。昔イベントのときにうちから何度か仕事を頼んだことがあってね。あの人その頃からうちの社長に熱上げてて、そりゃーもうベタベタすごかったのよ」
ナレーターコンパニオンという職業が、あまりにも似合いすぎるタイプに見えた。年齢は30代だと思うが、人前に立って脚光を浴びることに慣れているような独特の空気を滲ませている女性だった。
「社長はあのルックスと肩書だから、女に言い寄られること自体珍しくないじゃない?その辺はそつなく、相手の機嫌を損ねない程度に上手いことあしらってたのよね。で、そのうち松江さんもナレーターの仕事を辞めたみたいで見かけなくなってたの。それが最近、彼女自身が社長になってコンパニオンの派遣会社を立ち上げたんだって。で、昔のよしみでうちと取引したいって頼みに来たのよ」
「そうだったんですか……」
「仕事にかこつけて、またしつこく社長に言い寄ろうと思ったんだろうね。無駄なのにね」
「……無駄、ですか……?あの人、すごくキレイだったし」
しかもこっちが落ち込むくらいスタイルも良かった。小野寺だって、あんな色っぽい女性に言い寄られたら悪い気なんてしないだろう。
「無駄だよー。ああいうタイプ、社長の好みじゃないもん」
そうなのだろうか。じゃあ、社長の好みっていったい……。
思い切って祥子に聞いてみようかと思った瞬間、廊下からカツカツとヒールの音が響いてきた。
渚は思わず給湯室から飛び出し、ロングヘアをなびかせている松江のぞみに後ろから声を掛けた。
「あの、先程は大変失礼いたしました。本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げると、「あら、そんな気にしないで」と軽やかに微笑まれる。さすがにプロのナレーターだけあって、よく通る綺麗な声だった。が、改めてその表情を伺うと、瞳の奥に渚を値踏みするような尖った光が宿っていた。
「小野寺さんのお気に入りのアシスタントがいるって聞いてたけど、あなただったのね。……ちょっと意外だったわぁ」
どういう意味か分からず渚が戸惑っていると、彼女はクスクス笑い出した。
「ああ、ごめんなさい。悪い意味じゃないのよ。想像してたよりずっと……純情そうだなぁって。さっきの、びっくりしちゃったわよね。ごめんなさいね」
子供っぽいと言いたいのだろう。たしかにさっきの失態にしろ普段の態度にしろ、28の社会人にしては自分は幼いかもしれない。自覚しているけれど、自分とは対照的な美女に言われるとやはり気持ちは凹む。
「あの……、タイミングも悪くて本当に失礼しました」
「だから気にしないでいいのよぉ。でもあなた、そんなにウブでよく小野寺さんのアシスタントやってられるわねぇ」
不意に小野寺の唇や手のひらの感触が蘇ってきて、心臓がドクンと鳴った。
ウブ……?渚は小野寺の手によって絶頂を感じたあの夜を思い出し、眼の前の女性に反論したいような気持ちになった。
「あらやだ、そんな怖い顔しないで。またお仕事のお願いに伺うと思うから、仲良くしましょ。そのときはよろしくね」
松江のぞみはいかにも作り慣れた笑顔を見せると、くるりと背を向けてエレベーターホールへ姿を消した。フレグランスの残り香が辺りに漂う。給湯室から様子を伺っていた祥子が出てきて、「うわぁ、相変らず食えない女!」と顔をしかめていた。
その日の帰りは、久しぶりに小野寺が車で送ってくれることになった。
火傷はたいしたことなかったし、別に天気も悪くない。残業だって少ししかしていない。なのに「今日は車で送る」と言われ、渚は少々戸惑った。
何か話したいことでもあるのだろうか。昼間の、松江のぞみと関係あることかもしれない。まさかとは思うけれど、「彼女とつきあう」などと宣言されるのではと悪い想像が働いてしまい、渚は助手席で妙に身を固くしながら緊張していた。
「昼間、悪かったな。変なとこ見せて驚かせて」
ハンドルを握りながら、ぽつりと小野寺が呟いた。やっぱりこの話題が来た。渚はドキッとしながらも「いえ、そんな」と短く返事をする。
「言い訳がましく聞こえるだろうけど、あれはハプニング的なものだから」
「……あ、はい。……そういうふうに、見えました」
「あっちからいきなり抱きついてきた。俺は何もしてない。その……、そこは誤解してくれるな」
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