小野寺社長のお気に入り

茜色

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愛撫

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 この前の夜は、もっと男に対してオープンになってチャンスを掴め、みたいなことを言われたはずだった。それなのに、今夜はなぜか他の男たちに隙を見せるなと説教され、迫られたらちゃんと逃げられるかと詰問されている。

 小野寺の言葉は矛盾していると思う。何を考えているのかさっぱり分からない。
 今夜の小野寺は何故か少しイライラしていて、渚を自分の思い通りにしたがっているように見えた。渚が色気のある大人の女になれるように手ほどきするというよりも、むしろ小野寺が渚を一人占めして他の男を排除しようとしているような。

「社長……、怒ってます……?」
「別に、怒ってねえよ」
「でも……」
「うるさい。黙って言うこと聞いてろ」
 そう言って小野寺は渚のストッキングをお尻の下までグイッと引き下ろした。 
 
「あっ……!社長、だめ……っ」
「ダメじゃない。……あっ、おまえ何こんなに濡らしてるんだよ。うわ、やらしいな」
 小野寺の指がいきなりショーツのクロッチ部分を擦るようになぞった。かすかに「くちゅっ」という音が渚の耳にも届き、羞恥心で叫び出しそうになる。

「うわ、すげー湿ってる。エロいな。キスだけでこんなになるんだな、渚」
「あ……、嫌……っ」
「ほんとに嫌だったら、こんなに濡れ濡れになるか。この淫乱」
 小野寺がややサディスティックな声音で渚の耳元に囁く。小野寺の息遣いも乱れていて、それが渚の押し隠した欲望をますます刺激してくる。

「ブラウス、脱げ」
 ショーツ越しに渚の性器をくすぐりながら、小野寺が低い声で命じてきた。
「やっ……、どうして……」
「胸、見せろ。おまえが本当に色っぽい女になれるか、確かめてやる」
 こんなの本当にただのセクハラ、職権乱用の嫌がらせだ。そう思うのに、渚は射すくめられた小動物のような気持ちになって、小野寺の腕の中から逃げ出せなくなってしまった。

「ほら、気持ち良くしててやるから、ブラウスも下着も取れ」
 小野寺の指先が、ソロリとショーツの隙間から滑り込んでくる。
 その直接的な生暖かい感触に、渚は思わず「あ……っ」と恥ずかしい声を漏らした。こんなのダメだと頭で抵抗しながら、柔らかな指の動きに期待にも似た甘い感情が込み上げてくる。
 渚は小野寺の肩先に顔を押し当て、いやらしい指が花弁からクリトリスまで這いまわるのを身を震わせながら受け止めた。

 ……気持ちいい。どうしよう、拒否できない。やめないで、もっと社長に触っていてほしい……。

「渚、脱げよ。おまえを見たいんだよ」
 まるで催眠術のような低く心地良い声に誘導されていく。渚はぼうっとした心地のまま、言われるままにブラウスのボタンを外し始めた。

 おずおずとブラウスの前をはだけると、やや乱暴な手つきでインナーのキャミソールをグイッと引き上げられた。レースの飾りがついたオフホワイトのブラジャーが剥き出しになって、渚は思わず悲鳴を上げそうになる。

「持ってろ」
 自分でキャミソールをたくし上げているように命じられた。子供が健康診断で聴診器を当てられるときのようで、かなり戸惑う。
「あの、社長……、これってちょっと」
「いいから」
 何が「いいから」なのかさっぱり分からないが、余計なことを喋らせないためなのか小野寺がキスで渚の口を塞いできた。
 困ったことに、渚はどうやら小野寺の唇に抗えない体質になってしまったらしい。さっきよりずっと優しく唇を吸われ、結局されるがままになっている。

 小野寺は渚の唇を貪りながら、忙しなくスーツの上着を脱いだ。ネクタイをもどかしげに外してソファに投げ捨てると、渚のはだけたブラウスを少々乱暴に肩から脱がせてしまった。

 ブラインドを下ろした応接室の窓の向こうから、車のクラクションが小さく聞こえてくる。街の喧騒が今はひどく遠い世界の音に感じられて、渚の意識が夜の隙間に溶け落ちていく。

 何故自分は今、上司(しかも雇い主)である小野寺の腕の中でこのような快楽を与えられているのか。
 未だにこの成り行きを信じられずにいる。好意を持っているとほのめかされてもいないし、遊び相手になれとも言われていない。ただ、恋愛下手な渚にレッスンを施すという三流小説のようなセリフにいいように操られ、きちんと拒否できないまま小野寺の唇や手の動きにまんまと絡めとられているのだ。
 情けなさが胸の奥でチリチリと疼く。でもそれよりももっと、小野寺の「男」の部分を知りたいと思っている自分がいる。

 キャミソールの裾を鎖骨の下まで持ち上げて左手で押さえていると、小野寺の手がブラジャー越しに渚の胸に触れた。
「あ……っ」
 ふくらみは大きな手のひらに包みこまれ、ゆっくりと円を描くように優しく揉まれる。恥ずかしさで眼を逸らそうとした渚の表情を、小野寺がわざと至近距離で覗き込んできた。

「そういう顔をすると、返って男はそそられるんだ。おまえ、気づいてないだろ」
「あ……。分からない、です……」
「素直に身を任せればいい。ほら、気持ちいいんだろ?ん……?」
 やわやわと揉みしだかれながら、布地越しに乳首の辺りを親指で擦られる。変な声が出そうになって、渚は「んんっ……」と口を噤んだ。

「声は我慢するな。気持ち良かったらそのまま声を出せ。その方が男は喜ぶ」
「でも……。あ、あぁ……っ」
 ブラのカップの中に小野寺の指がするりと入ってきた。長い指先で葡萄の実をいじるように、渚の乳首をコロコロと優しく愛で始める。
 息が乱れ、頬が燃えるように熱くなった。乳首を転がされているだけで、脚の付け根がはしたないほどじんじんしてくる。
 小野寺の指はゾクゾクするほど淫らで心地良かった。こんな感触を知ってしまったら、もう今まで通りに小野寺と仕事をこなしていく自信がない。

 背中に手を回され、当たり前のような手つきでブラのホックを外された。
 わずかに残っている理性が抵抗のかけらを見せたが、もちろんそんなものはあっさりと却下されてしまう。緩んだブラを一気にたくし上げられ、渚の裸の胸が小野寺の眼の前でふるっと揺れた。

「あー……。やっぱエロいわ、おまえ」
「な、何が……」
「おっぱいがエロいんだよ。俺の勘が当たった」
「……だから意味が分からない……」
「デカくはないけど、これくらいが揉み心地が良くてイイんだよ」
 小野寺の声がいつもより掠れて聞こえ、その響きに何故だか淫らな衝動が込み上げてくる。

「乳首の形がまたやらしいな。おまえ、ほんと宝の持ち腐れ」
 言いながら、小野寺が渚の乳房を両手ですっぽりと包みこんだ。そのまますくい上げるように強く揉まれると、唇の隙間から湿った吐息が勝手にこぼれてしまう。

「は、あっ……。社長……っ」
「気持ちいいか?渚。俺の手、どんな感じがする?」
「ん……っ。や、だ……。恥ずかし……」
「恥ずかしくないよ。素直になれ」
 耳元で低く囁かれ、頭の芯がクラクラしてくる。
 
「おい、命令だ。正直に言えよ。いやらしいおっぱい揉まれて、どんな感じがする?」
「……気持ち、いい……」
「ん。いい子だ」
 首筋に濡れた唇を押し当てられ、思わず猫みたいな声を漏らしてしまった。

 羞恥心で頭がおかしくなりそうなのに、渚はひどく興奮していた。
 小野寺に追い詰められ、逃げ場を失いながらも心のどこかで喜びを感じている自分がいる。乳房が柔らかく弄ばれる度に、乳首に直接触れてほしいと望んでいる自分がいる。

「渚。声に出して言ってみな。乳首も触ってくださいって」
「……あ、そんなの……」
「女は素直な方が可愛いんだぞ。ほら、言ってみろよ」
 可愛いという言葉に、胸の奥がキュウッと締めつけられた。
 別に小野寺は渚自身のことを「可愛い」と言ったわけではない。あくまで例えで言っただけなのに、渚はもっとその言葉が欲しくて息を震わせた。

「……ち、くび、触って……っ」
「……それでいいんだよ」
 小野寺がやけに優しい眼でフッと微笑んだ。それから指で渚の両方の乳首を同時に摘み、この上なく淫らに弄り始めた。


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