4 / 6
決意
しおりを挟む
会議はいつも以上に内容の濃いものになり、昼休み近くになってもまだ終わりが見えなかった。
この半年、課の営業成績が上向きになってきており、社員のモチベーションもいつになく上がっている。隣に座っている澪も、それぞれの発言を聞き取っては、せっせと書類に要点を書き込んでいた。
・・・いいチームになったな。
昇吾は全員を見渡して、しみじみ思った。自分がこの部署に異動してきて1年が過ぎたが、皆よくついてきてくれたし、期待以上の働きぶりを見せてくれている。
そろそろ自分がここを離れ、次のリーダーに道を譲る良いタイミングなのかもしれない・・・。
そんなことを思いながら机上の資料をめくっていた昇吾は、必要な集計ファイルを一部、デスクの引き出しに忘れてきたことに気付いた。取りに行きたいが、ちょうど今、部下が新規案件の詳細な説明をしているので席を外したくない。
「椎名、悪いけど俺の机の一番下の引き出しから、ファイルを持ってきてくれないか。去年の実績データが集計してあるやつ」
昇吾は隣にいる澪に、小声で囁いた。澪がすぐに「はい、分かりました」と返事をして立ちあがる。
「あ、後ついでに、俺の営業カバンの内ポケットに目薬が入ってるから、それも持ってきて。悪いな」
更に声を潜めて私用も付け足すと、澪は軽く微笑んで「行ってきます」と会議室を出て行った。
夕べ仕事を持ち帰って夜中まで家で書類仕事をしていたせいで、今日はいつも以上に寝不足だった。しかも森山部長からの話で頭がいっぱいで、ろくに眠れなかったのだ。そのせいで朝から眼が疲れていたが、会議室の蛍光灯の下だと余計に視界がチカチカする。
・・・俺も、年取ったかな。昔は徹夜くらいどうってことなかったのに。
今年で36になる自分の年齢に思いを馳せ、コリの溜まった肩の筋肉をグイッと回した。
ファイルと眼薬を取りに行ったまま、澪がちっとも戻ってこない。
時計を見たら、10分近く経っている。すぐ隣のフロアに行っただけなのに、時間がかかりすぎではないか。ついでにトイレにでも行ったか?
昇吾は澪のことが気になりながらも、書類にアンダーラインを引こうとワイシャツの胸ポケットに突っ込んだラインマーカーに手を伸ばした。そのとき、ポケットの中に目薬が入っているのに気付いて、「あっ」と小さく声を出してしまった。
そうだ、始業前に目薬を差して、無意識にカバンではなく胸ポケットに入れたのだった。うっかりしていた。きっと澪は、自分のカバンの中に目薬を見つけられなくて困っているのかもしれない。それでなかなか戻って来ないのか。
「ちょっと、すまん。そのまま続けててくれ」
昇吾は部下たちに声をかけ、椅子から立ち上がった。会議室を出て、営業フロアの自分のデスクに向かって歩いて行く。
オフィスの壁掛け時計を見ると、もう12時を5分ほど過ぎていた。辺りに人影はなく、他の社員たちは皆、さっさと昼食に出掛けたようだ。
パーテーションの向こうの営業課スペースに足を踏み入れたとき、不意に女の尖った声が昇吾の耳に飛び込んで来た。
「だから泥棒猫って言ってんの!調子に乗らないでよ!」
ハッとして声のする方に眼を向けると、すぐにガタガタっと大きな音がして「やっ・・・!」と小さな悲鳴が聞こえた。澪の声だ。昇吾は背筋がスッと寒くなるのを感じながら、咄嗟に走り出していた。
昇吾のデスクのすぐ近くで、澪が尻もちをついて顔をしかめているのが見えた。パンプスが片方脱げて床に転がっている。その姿を見た途端、頭に血が上った。澪の目の前には、引き攣った顔をした田丸雅美が立ち尽くしていた。
駆け寄って澪を助けに行こうとしたが、それより先に澪が自分で起き上がっていた。スカートのお尻の部分を手ではたき、転がったパンプスを拾って履き直す。
毅然とした態度がやけに凛として見えて、昇吾はその場に立ち止まってしばし見惚れてしまった。
「・・・私、泥棒なんてしてません。調子に乗ってるつもりもありません。でも、そういうふうに見えて田丸さんが嫌な思いをされたなら、それは申し訳ないと思います」
澪は顔を上げて、まっすぐ雅美を見た。
「でも、成瀬課長のサポート業務を降りる気はありません。私は今の仕事が好きだし、まだまだ至らないけど、少しでも課長の力になれるようがんばってるつもりです。この仕事だけは、田丸さんにお譲りできません」
「もともとは私が成瀬さんのサポートをしてたのよ・・・!私の方があなたよりよっぽど役に立ってたわ。知らないでしょうけど、私たち、つきあってたことだってあるんだから・・・!」
「・・・む、昔のことは知りません。今は、私が成瀬さんのサポートをしている、それだけです」
「それが図々しいって言ってるのよ。あなた、かわい子ぶって取り入っただけでしょう?どんな手を使ったの?さっきみたいに成瀬さんの持ち物に手を突っ込んで、いろいろ彼のこと調べたってわけ?恐ろしい女ね」
雅美が澪の肩をドンと突いた。昇吾が我慢できるのもそこまでだった。
「田丸、いいかげんにしろ。澪から離れろ」
雅美が愕然としながら振り返った。信じられない、という蒼白な顔をして昇吾を見ている。その横で、澪もまた驚いたような顔をしていた。昇吾が他の社員の前で、「椎名」ではなく「澪」と呼んだのはこれが初めてだったからだ。
「澪、大丈夫か?悪かったな、俺が用事を頼んだせいで。ケガしたりしてない?」
「だ・・・大丈夫です。あの・・・」
昇吾が澪の背中に手を添えたので、側で見ていた雅美が息を呑むのが分かった。
「田丸、もういいだろう?何が気に入らないのか知らないが、澪に当たるのはやめてくれ。文句があるなら俺に言えばいい。それと、嘘はやめてくれ。きみとつきあった記憶は俺にはない」
「あ、それは・・・ち、違います、そんなんじゃ・・・。あの、私、見たんです!椎名さんが成瀬さんのカバンに手を入れて、物色してたんです。だから注意しただけで・・・」
雅美がうろたえながらも、必死で訴えてきた。
「いいんだよ、俺が澪に探し物を頼んだんだから。澪、ごめん。目薬、ワイシャツのポケットに入ってた。悪かったな」
昇吾が澪と視線を交わし合うのを見て、雅美がますます苛立った。
「お、お財布にも手を付けてたんです!この子、成瀬さんのお財布の中まで見ようとしてたわ!」
「そんなこと、してません!嘘言わないでください!」
さすがに澪の声も大きくなる。昇吾は澪の腕にそっと触れた。
「田丸、もうよせ。澪がそんなことするわけない。仮に、百歩譲って彼女が俺の財布に触ってたとしても、俺は全然構わない。俺たち、つきあってるんだから」
雅美の顔が色を失くして固まった。
「う、ウソ・・・。信じないわ」
「いいか、田丸。澪は俺の仕事上のパートナーなだけじゃなくて、恋人なんだ。特別な人だ。それに、もうすぐ俺たちは結婚する」
昇吾の言葉に、雅美が完全に凍り付いた。
蒼白だった雅美の顔が、今度は沸騰したようにみるみる真っ赤に染まり、唇が震え出した。ショックで何も言えなくなっている。
驚いているのは雅美だけではない。横にいる澪まで、眼を見開いて昇吾の顔を見上げていた。やがてその瞳が、みるみる潤んで透明な膜を張った。頬がピンクに染まっている。
・・・ああ、こいつをずっと守っていきたいな。昇吾は心からそう想った。
やっと決心がついた。言葉にした途端、心が急速に晴れ渡っていく。昇吾は言葉を失っている雅美に向き直り、言い聞かせるように落ち着いた声で言った。
「結婚したら、俺が異動する。みんなの前で公私混同することもないから、心配するな。でも、田丸にこれだけは言っておく。俺の嫁さんになる人に、これ以上何もしてくれるな。この先、もし澪に何かあったら俺が絶対に許さない。・・・分かるよな?俺を、怒らせないでくれ」
昇吾は静かにそう言い切った。雅美が目の前で項垂れ、小さく身体を震わせていた。泣いているのかもしれなかった。
「もう行け」
昇吾は淡々とした声を発し、雅美をフロアから追いやった。悔しそうに唇をきつく噛みながら、雅美が無言のまま背を向けて去っていく。
「田丸さん・・・」
澪が心配そうな声を出して後を追いかけそうになるのを、「いいから」と腕を掴んで遮った。
「もう、いい。おまえが我慢するのは今日でおしまいだ」
ここが会社なのを分かっていて、昇吾は思い切って澪を抱きしめた。一瞬びっくりして身体を強張らせた澪も、やがて昇吾の想いを受け入れるように、背中に両手を回してきた。
「・・・昇吾さん、いきなり決めちゃうんだから・・・。びっくりした」
「ごめん。気づいたら口に出てた。・・・でも俺、本気だよ」
「分かってる。ちゃんと、分かってる・・・」
澪の優しい涙声を聞いていたら、不意に甘えたい気持ちになった。
「澪・・・俺と結婚してくれるよな?」
薬指で目尻に滲んだ涙を拭いながら、澪がフフッと笑った。真っすぐに昇吾の瞳を見つめてくる。
「そんな心配そうな顔しないで。・・・私は、昇吾さんから離れられないもの。ずっとついていきます。私を奥さんにしてください」
胸が熱くなった。潤んだ瞳で見上げてくる澪が、たまらなく愛おしい。キスしたい衝動がまたしても込み上げてきたが、ここが会社なのを思い出し、なんとか夜まで我慢することにした。
この半年、課の営業成績が上向きになってきており、社員のモチベーションもいつになく上がっている。隣に座っている澪も、それぞれの発言を聞き取っては、せっせと書類に要点を書き込んでいた。
・・・いいチームになったな。
昇吾は全員を見渡して、しみじみ思った。自分がこの部署に異動してきて1年が過ぎたが、皆よくついてきてくれたし、期待以上の働きぶりを見せてくれている。
そろそろ自分がここを離れ、次のリーダーに道を譲る良いタイミングなのかもしれない・・・。
そんなことを思いながら机上の資料をめくっていた昇吾は、必要な集計ファイルを一部、デスクの引き出しに忘れてきたことに気付いた。取りに行きたいが、ちょうど今、部下が新規案件の詳細な説明をしているので席を外したくない。
「椎名、悪いけど俺の机の一番下の引き出しから、ファイルを持ってきてくれないか。去年の実績データが集計してあるやつ」
昇吾は隣にいる澪に、小声で囁いた。澪がすぐに「はい、分かりました」と返事をして立ちあがる。
「あ、後ついでに、俺の営業カバンの内ポケットに目薬が入ってるから、それも持ってきて。悪いな」
更に声を潜めて私用も付け足すと、澪は軽く微笑んで「行ってきます」と会議室を出て行った。
夕べ仕事を持ち帰って夜中まで家で書類仕事をしていたせいで、今日はいつも以上に寝不足だった。しかも森山部長からの話で頭がいっぱいで、ろくに眠れなかったのだ。そのせいで朝から眼が疲れていたが、会議室の蛍光灯の下だと余計に視界がチカチカする。
・・・俺も、年取ったかな。昔は徹夜くらいどうってことなかったのに。
今年で36になる自分の年齢に思いを馳せ、コリの溜まった肩の筋肉をグイッと回した。
ファイルと眼薬を取りに行ったまま、澪がちっとも戻ってこない。
時計を見たら、10分近く経っている。すぐ隣のフロアに行っただけなのに、時間がかかりすぎではないか。ついでにトイレにでも行ったか?
昇吾は澪のことが気になりながらも、書類にアンダーラインを引こうとワイシャツの胸ポケットに突っ込んだラインマーカーに手を伸ばした。そのとき、ポケットの中に目薬が入っているのに気付いて、「あっ」と小さく声を出してしまった。
そうだ、始業前に目薬を差して、無意識にカバンではなく胸ポケットに入れたのだった。うっかりしていた。きっと澪は、自分のカバンの中に目薬を見つけられなくて困っているのかもしれない。それでなかなか戻って来ないのか。
「ちょっと、すまん。そのまま続けててくれ」
昇吾は部下たちに声をかけ、椅子から立ち上がった。会議室を出て、営業フロアの自分のデスクに向かって歩いて行く。
オフィスの壁掛け時計を見ると、もう12時を5分ほど過ぎていた。辺りに人影はなく、他の社員たちは皆、さっさと昼食に出掛けたようだ。
パーテーションの向こうの営業課スペースに足を踏み入れたとき、不意に女の尖った声が昇吾の耳に飛び込んで来た。
「だから泥棒猫って言ってんの!調子に乗らないでよ!」
ハッとして声のする方に眼を向けると、すぐにガタガタっと大きな音がして「やっ・・・!」と小さな悲鳴が聞こえた。澪の声だ。昇吾は背筋がスッと寒くなるのを感じながら、咄嗟に走り出していた。
昇吾のデスクのすぐ近くで、澪が尻もちをついて顔をしかめているのが見えた。パンプスが片方脱げて床に転がっている。その姿を見た途端、頭に血が上った。澪の目の前には、引き攣った顔をした田丸雅美が立ち尽くしていた。
駆け寄って澪を助けに行こうとしたが、それより先に澪が自分で起き上がっていた。スカートのお尻の部分を手ではたき、転がったパンプスを拾って履き直す。
毅然とした態度がやけに凛として見えて、昇吾はその場に立ち止まってしばし見惚れてしまった。
「・・・私、泥棒なんてしてません。調子に乗ってるつもりもありません。でも、そういうふうに見えて田丸さんが嫌な思いをされたなら、それは申し訳ないと思います」
澪は顔を上げて、まっすぐ雅美を見た。
「でも、成瀬課長のサポート業務を降りる気はありません。私は今の仕事が好きだし、まだまだ至らないけど、少しでも課長の力になれるようがんばってるつもりです。この仕事だけは、田丸さんにお譲りできません」
「もともとは私が成瀬さんのサポートをしてたのよ・・・!私の方があなたよりよっぽど役に立ってたわ。知らないでしょうけど、私たち、つきあってたことだってあるんだから・・・!」
「・・・む、昔のことは知りません。今は、私が成瀬さんのサポートをしている、それだけです」
「それが図々しいって言ってるのよ。あなた、かわい子ぶって取り入っただけでしょう?どんな手を使ったの?さっきみたいに成瀬さんの持ち物に手を突っ込んで、いろいろ彼のこと調べたってわけ?恐ろしい女ね」
雅美が澪の肩をドンと突いた。昇吾が我慢できるのもそこまでだった。
「田丸、いいかげんにしろ。澪から離れろ」
雅美が愕然としながら振り返った。信じられない、という蒼白な顔をして昇吾を見ている。その横で、澪もまた驚いたような顔をしていた。昇吾が他の社員の前で、「椎名」ではなく「澪」と呼んだのはこれが初めてだったからだ。
「澪、大丈夫か?悪かったな、俺が用事を頼んだせいで。ケガしたりしてない?」
「だ・・・大丈夫です。あの・・・」
昇吾が澪の背中に手を添えたので、側で見ていた雅美が息を呑むのが分かった。
「田丸、もういいだろう?何が気に入らないのか知らないが、澪に当たるのはやめてくれ。文句があるなら俺に言えばいい。それと、嘘はやめてくれ。きみとつきあった記憶は俺にはない」
「あ、それは・・・ち、違います、そんなんじゃ・・・。あの、私、見たんです!椎名さんが成瀬さんのカバンに手を入れて、物色してたんです。だから注意しただけで・・・」
雅美がうろたえながらも、必死で訴えてきた。
「いいんだよ、俺が澪に探し物を頼んだんだから。澪、ごめん。目薬、ワイシャツのポケットに入ってた。悪かったな」
昇吾が澪と視線を交わし合うのを見て、雅美がますます苛立った。
「お、お財布にも手を付けてたんです!この子、成瀬さんのお財布の中まで見ようとしてたわ!」
「そんなこと、してません!嘘言わないでください!」
さすがに澪の声も大きくなる。昇吾は澪の腕にそっと触れた。
「田丸、もうよせ。澪がそんなことするわけない。仮に、百歩譲って彼女が俺の財布に触ってたとしても、俺は全然構わない。俺たち、つきあってるんだから」
雅美の顔が色を失くして固まった。
「う、ウソ・・・。信じないわ」
「いいか、田丸。澪は俺の仕事上のパートナーなだけじゃなくて、恋人なんだ。特別な人だ。それに、もうすぐ俺たちは結婚する」
昇吾の言葉に、雅美が完全に凍り付いた。
蒼白だった雅美の顔が、今度は沸騰したようにみるみる真っ赤に染まり、唇が震え出した。ショックで何も言えなくなっている。
驚いているのは雅美だけではない。横にいる澪まで、眼を見開いて昇吾の顔を見上げていた。やがてその瞳が、みるみる潤んで透明な膜を張った。頬がピンクに染まっている。
・・・ああ、こいつをずっと守っていきたいな。昇吾は心からそう想った。
やっと決心がついた。言葉にした途端、心が急速に晴れ渡っていく。昇吾は言葉を失っている雅美に向き直り、言い聞かせるように落ち着いた声で言った。
「結婚したら、俺が異動する。みんなの前で公私混同することもないから、心配するな。でも、田丸にこれだけは言っておく。俺の嫁さんになる人に、これ以上何もしてくれるな。この先、もし澪に何かあったら俺が絶対に許さない。・・・分かるよな?俺を、怒らせないでくれ」
昇吾は静かにそう言い切った。雅美が目の前で項垂れ、小さく身体を震わせていた。泣いているのかもしれなかった。
「もう行け」
昇吾は淡々とした声を発し、雅美をフロアから追いやった。悔しそうに唇をきつく噛みながら、雅美が無言のまま背を向けて去っていく。
「田丸さん・・・」
澪が心配そうな声を出して後を追いかけそうになるのを、「いいから」と腕を掴んで遮った。
「もう、いい。おまえが我慢するのは今日でおしまいだ」
ここが会社なのを分かっていて、昇吾は思い切って澪を抱きしめた。一瞬びっくりして身体を強張らせた澪も、やがて昇吾の想いを受け入れるように、背中に両手を回してきた。
「・・・昇吾さん、いきなり決めちゃうんだから・・・。びっくりした」
「ごめん。気づいたら口に出てた。・・・でも俺、本気だよ」
「分かってる。ちゃんと、分かってる・・・」
澪の優しい涙声を聞いていたら、不意に甘えたい気持ちになった。
「澪・・・俺と結婚してくれるよな?」
薬指で目尻に滲んだ涙を拭いながら、澪がフフッと笑った。真っすぐに昇吾の瞳を見つめてくる。
「そんな心配そうな顔しないで。・・・私は、昇吾さんから離れられないもの。ずっとついていきます。私を奥さんにしてください」
胸が熱くなった。潤んだ瞳で見上げてくる澪が、たまらなく愛おしい。キスしたい衝動がまたしても込み上げてきたが、ここが会社なのを思い出し、なんとか夜まで我慢することにした。
3
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
兄の親友が彼氏になって、ただいちゃいちゃするだけの話
狭山雪菜
恋愛
篠田青葉はひょんなきっかけで、1コ上の兄の親友と付き合う事となった。
そんな2人のただただいちゃいちゃしているだけのお話です。
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。
澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。
※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
社員旅行は、秘密の恋が始まる
狭山雪菜
恋愛
沖田瑠璃は、生まれて初めて2泊3日の社員旅行へと出かけた。
バスの座席を決めるクジで引いたのは、男性社員の憧れの40代の芝田部長の横で、話した事なかった部長との時間は楽しいものになっていって………
全編甘々を目指してます。
こちらの作品は「小説家になろう・カクヨム」にも掲載されてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる