8 / 22
Lesson 1
蜜
しおりを挟む
さっきからずっと、頭の奥で「やめろ、引き返せ」と繰り返す自分の声が聴こえる。それはただの雑音のように意味がなく、俺の身体と心はその声を脇に追いやった。
眼の前にある誘惑を、これ以上振り切ることなどできるわけがない。今の俺は確実に『教師』としての道を踏み外そうとしていた。
「ん・・・っ」
コリッとした乳首を口に含んでしゃぶると、桃が恥じらうような声を漏らした。
俺の耳元に熱い息がかかる。その乱れた息遣いがますます俺を煽り、深みへと引き摺り込んでいく。
硬くなったつぼみを音を立てて吸い、舌でサクランボの実でも転がすように舐めまわした。
「あっ・・・、せん、せ・・・!」
俺の頭を掻き抱く桃の手に力が込められ、甘くせつなげな吐息が降り注がれる。
やめよう、あともう5秒したら、顔を下に向けて桃の胸から離れよう。そう思うのに、身体が言うことを聞いてくれない。桃が俺を離してくれない。桃のせいにして、俺はこのまま溺れてしまいたくなる。
口による胸への愛撫に身をよじらせるたびに、俺の膝の上で桃のスカートがまくれ上がるのが分かる。目隠しされていても、桃の下着が剥き出しになっているのが想像できた。ネクタイで縛られた俺の両手首に、小さく喘ぎながら身体を揺らす桃の下半身が何度もかすった。
やがてそれは、かするだけでなくもっと密着して俺の両手の上に押し当てられる。女物の薄い下着越しに桃の質感が感じられ、それはもう俺の理性をショートさせるのに十分な熱と湿度を持っていた。
自由の利かない手をなんとか動かし、直接触れたい衝動で頭がおかしくなりそうだった。
下着の裾から指を差し入れて、既に濡れ始めているであろう桃の花びらに触れたい。弄りたい。襞を掻き分けて、なかへと指を差し入れたい。俺は胸と股間が苦しくてたまらず、桃の乳房に顔を埋めながら低く呻いた。
「先生・・・、さわって・・・」
桃が俺の頭をギュッと抱きしめてせつなそうに囁いた。
俺の中にかろうじて残っている教師としての道徳心が、必死に抵抗しようとしている。が、そんなものはこの状況では既に無力なことも俺は知っていた。
「桃・・・」
俺は初めて声に出して、苗字ではなく名前を呼んだ。無意識だった。そう呼ばずにいられなかった。
「桃、ダメだ・・・。俺を、困らせるな」
「困らせてない・・・。私、誰にも言わないから。先生と、私だけの秘密・・・」
荒い息で紡ぐその言葉が俺を壊した。
誰にも言わない。俺と桃だけの秘密。俺たちの間には、いつからか共犯者のようなその言葉が幾重にも積み上げられていた。
俺は縛られたままの手首をねじり、桃の下着の裾から右手の指を差し入れた。
「あっ・・・!」
桃の身体が跳ねた。驚くほどすぐに、指先が蜜に絡めとられていく。
「・・・おまえ、こんなに濡らして・・・」
俺の指はぬるりと滑りながら桃の性器をまさぐった。自由に動かせない分、指先は必死に快楽の在りかを求めて蠢く。
小さく膨らんだ突起を見つけ、俺は思わず息を震わせた。
ソロリと撫でるように指の腹でさすり、何度か往復させる。桃がビクビクと身体を震わせたので、乳首を吸いながらそのままクリトリスを優しく捏ねまわした。
「あ、あぁっ・・・、せんせっ・・・!」
「・・・桃、これ、いいのか?・・・言ってみろ。気持ちいいか」
「い、い・・・。先生、気持ちいい・・・。竜一、せんせ・・・!」
名前で呼ばれ、俺の胸が甘ったるく疼いた。
桃がすがるように俺の髪を強く掴む。俺の両手は自分の勃起したモノの上に置かれた状態で、指だけが桃の秘所をまさぐっている。
桃が感じて身をしならせるたびに、手を通じて俺の股間も刺激された。ジーンズに食い込んで痛いほどだった。俺は呼吸を乱しながら、桃のとろとろに溶けた窪みへと浅く中指を挿入した。
「あっ・・・!なかに・・・」
「痛いか・・・?桃、辛い・・・?」
「あ、はぁっ・・・。先生・・・っ、そのままで、いて・・・」
かなり濡れていても桃のなかはやはりきつかった。俺の指が浅い部分の粘膜をなぞるのに任せながら、桃は俺の唇にまたキスしてきた。
目隠しを外してほしくてたまらなかった。
この眼で桃を見たかった。感じている顔を、しなやかな肌を、まだ青さの残る胸のふくらみを見たかった。でも俺は桃の意図に従った。桃はどうしてか俺の視界を奪ったままだった。
俺の手首がいいかげん痺れてきた頃、桃の身体が細かく震えはじめた。
絶頂を迎えようとしているのだと気付いた俺は、指をなかに挿れたまま親指の付け根の肉厚な部分でクリトリスの辺りを強めに摩擦してやった。そうしながら、桃の膨れ上がった乳首を噛むようにしゃぶる。
「あ、あ、あぁ・・・っ!せん、せ・・・!」
桃は子猫みたいな甘い声で鳴き、俺の手で達した。
ガクガクと身体を揺らしながら、桃が俺の肩に顔を埋めた。燃えるような熱い吐息が首筋に掛かり、俺も息を乱しながら桃のうなじの匂いを嗅いだ。
俺の手も、手首を縛ったネクタイも、桃の身体からあふれた蜜ですっかり濡れてしまっている。俺はその事実だけで自分もイッてしまいそうになり、歯を食いしばって波が収まるのを待った。
不意に身体が軽くなり、桃が俺の膝の上から下りたのが分かった。本能的に、せつないほどの喪失感を感じる。室内はエアコンで涼しいはずなのに、俺のTシャツの背中と脇の下はじっとりと汗ばんでいた。
桃がブラウスを身に着けているらしい気配を感じる。俺は自分の股間の熱が早く鎮まってくれることをひたすら念じた。指はまだ濡れたままで、それを舐めたいと思っている自分のいやらしさを恥じた。
身支度を終えたと思われる桃が、俺の顔へと手を伸ばしてきた。後頭部の結び目をほどき、目隠しのネクタイを外してくれる。
急に明るくなった視界に戸惑い、眼の前にいる桃の顔を見て胸が騒々しく音を立てた。18歳の頬はほんのりと上気した色をしていて、唇は薄赤く湿っていた。この唇が俺の唇と重なりあったと思うと、また股間が反応しそうになって俺は情けなく眼を伏せた。
「先生・・・。ごめんなさい、こんなことして。・・・怒らないでね」
「・・・いや、怒らないけど。・・・怒るわけない」
気まずい。猛烈に恥ずかしい。そして狂おしいほどの強い感情に襲われる。
この衝動は何なのかと桃の伏せた睫毛に見惚れていると、今度は手首に巻かれた紺色のネクタイをほどかれた。
俺の両手の下にはジーンズを押し上げている塊があり、桃が改めてそれに気付いて耳まで紅くなった。いや、むしろ俺の方が死ぬほど恥ずかしいのだ。それなのに俺の視線はまた、桃のピンクに染まった肌に吸い寄せられた。
「こっちのネクタイ、汚しちゃった。ごめんね、先生。・・・私、これ持って帰って洗ってくる」
「えっ・・・。いや、いいって。そんなことしなくて」
「ううん。私に洗わせて」
桃は自分の愛液が染みついた俺のネクタイを折り畳むと、ハンカチでくるむように包んで自分のカバンの中にしまった。
「先生、私、帰ります」
「あ、ああ。分かった。その・・・」
俺は椅子から立ち上がりかけたが、股間がまだ屹立したままなのに気付いてそのまま動けなくなった。
「先生、いいの。このままで。・・・私のせいで、いっぱい迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑って、そんなこと俺は思ってないぞ。おい・・・」
桃は座っている俺に覆いかぶさるように身を屈め、もう一度キスしてきた。Tシャツの肩の辺りをキュッと掴まれたまま、柔らかくて甘い唇の感触を眼を閉じて味わった。
唇が離れたとき、俺は咄嗟に桃の手首を掴んでいた。すぐにハッとして手を離す。
桃は俺の顔をじっと見ていた。瞳に透明な膜が張っている。泣いているのかと一瞬驚いたが、窓辺から差し込む西日のせいでよく分からなかった。
「じゃあ、先生。私、行くね。・・・さっき描いてくれた私の絵、ちゃんと色塗って完成させてね」
椅子に座ったままの俺を残して、玄関で靴を履きながら桃が振り返った。俺が「ああ、分かった」と答えると、いつものはにかむような笑顔を見せたのでホッとした。
桃がドアを開けて出ていくとき、俺は腰を浮かせ、不格好な体勢で桃に手を振った。桃は可笑しそうに、そしてとても優しい顔で手を振り返してきた。
「じゃあね、先生。・・・本当にありがとう」
ドアがパタンと音をたてた。桃が俺の部屋から出ていった。
一人残された俺は、さっきまで目隠しに使われていたワインレッドのネクタイがテーブルに置かれているのをぼんやり眺めた。見ているうちに、何故かよく分からない不安に襲われ始めた。
何かに突き動かされるように窓辺に向かい、ベランダに出て下の通りを見下ろす。マンションの入口から桃が出てきて、足早に帰ろうとする後ろ姿が見えた。
「桃・・・!」
どうして呼び止めたのか、自分でも良く分からない。桃はすぐに振り向いて俺を見上げてきた。俺たちはそのまま、しばらく黙って見つめあっていた。
やがて桃がいつもの愛らしい笑顔を見せて、俺にもう一度手を振った。俺がつられて振り返すのを見届け、くるりと背中を向けて歩き出す。それきり、桃はもう二度と振り返らなかった。
眼の前にある誘惑を、これ以上振り切ることなどできるわけがない。今の俺は確実に『教師』としての道を踏み外そうとしていた。
「ん・・・っ」
コリッとした乳首を口に含んでしゃぶると、桃が恥じらうような声を漏らした。
俺の耳元に熱い息がかかる。その乱れた息遣いがますます俺を煽り、深みへと引き摺り込んでいく。
硬くなったつぼみを音を立てて吸い、舌でサクランボの実でも転がすように舐めまわした。
「あっ・・・、せん、せ・・・!」
俺の頭を掻き抱く桃の手に力が込められ、甘くせつなげな吐息が降り注がれる。
やめよう、あともう5秒したら、顔を下に向けて桃の胸から離れよう。そう思うのに、身体が言うことを聞いてくれない。桃が俺を離してくれない。桃のせいにして、俺はこのまま溺れてしまいたくなる。
口による胸への愛撫に身をよじらせるたびに、俺の膝の上で桃のスカートがまくれ上がるのが分かる。目隠しされていても、桃の下着が剥き出しになっているのが想像できた。ネクタイで縛られた俺の両手首に、小さく喘ぎながら身体を揺らす桃の下半身が何度もかすった。
やがてそれは、かするだけでなくもっと密着して俺の両手の上に押し当てられる。女物の薄い下着越しに桃の質感が感じられ、それはもう俺の理性をショートさせるのに十分な熱と湿度を持っていた。
自由の利かない手をなんとか動かし、直接触れたい衝動で頭がおかしくなりそうだった。
下着の裾から指を差し入れて、既に濡れ始めているであろう桃の花びらに触れたい。弄りたい。襞を掻き分けて、なかへと指を差し入れたい。俺は胸と股間が苦しくてたまらず、桃の乳房に顔を埋めながら低く呻いた。
「先生・・・、さわって・・・」
桃が俺の頭をギュッと抱きしめてせつなそうに囁いた。
俺の中にかろうじて残っている教師としての道徳心が、必死に抵抗しようとしている。が、そんなものはこの状況では既に無力なことも俺は知っていた。
「桃・・・」
俺は初めて声に出して、苗字ではなく名前を呼んだ。無意識だった。そう呼ばずにいられなかった。
「桃、ダメだ・・・。俺を、困らせるな」
「困らせてない・・・。私、誰にも言わないから。先生と、私だけの秘密・・・」
荒い息で紡ぐその言葉が俺を壊した。
誰にも言わない。俺と桃だけの秘密。俺たちの間には、いつからか共犯者のようなその言葉が幾重にも積み上げられていた。
俺は縛られたままの手首をねじり、桃の下着の裾から右手の指を差し入れた。
「あっ・・・!」
桃の身体が跳ねた。驚くほどすぐに、指先が蜜に絡めとられていく。
「・・・おまえ、こんなに濡らして・・・」
俺の指はぬるりと滑りながら桃の性器をまさぐった。自由に動かせない分、指先は必死に快楽の在りかを求めて蠢く。
小さく膨らんだ突起を見つけ、俺は思わず息を震わせた。
ソロリと撫でるように指の腹でさすり、何度か往復させる。桃がビクビクと身体を震わせたので、乳首を吸いながらそのままクリトリスを優しく捏ねまわした。
「あ、あぁっ・・・、せんせっ・・・!」
「・・・桃、これ、いいのか?・・・言ってみろ。気持ちいいか」
「い、い・・・。先生、気持ちいい・・・。竜一、せんせ・・・!」
名前で呼ばれ、俺の胸が甘ったるく疼いた。
桃がすがるように俺の髪を強く掴む。俺の両手は自分の勃起したモノの上に置かれた状態で、指だけが桃の秘所をまさぐっている。
桃が感じて身をしならせるたびに、手を通じて俺の股間も刺激された。ジーンズに食い込んで痛いほどだった。俺は呼吸を乱しながら、桃のとろとろに溶けた窪みへと浅く中指を挿入した。
「あっ・・・!なかに・・・」
「痛いか・・・?桃、辛い・・・?」
「あ、はぁっ・・・。先生・・・っ、そのままで、いて・・・」
かなり濡れていても桃のなかはやはりきつかった。俺の指が浅い部分の粘膜をなぞるのに任せながら、桃は俺の唇にまたキスしてきた。
目隠しを外してほしくてたまらなかった。
この眼で桃を見たかった。感じている顔を、しなやかな肌を、まだ青さの残る胸のふくらみを見たかった。でも俺は桃の意図に従った。桃はどうしてか俺の視界を奪ったままだった。
俺の手首がいいかげん痺れてきた頃、桃の身体が細かく震えはじめた。
絶頂を迎えようとしているのだと気付いた俺は、指をなかに挿れたまま親指の付け根の肉厚な部分でクリトリスの辺りを強めに摩擦してやった。そうしながら、桃の膨れ上がった乳首を噛むようにしゃぶる。
「あ、あ、あぁ・・・っ!せん、せ・・・!」
桃は子猫みたいな甘い声で鳴き、俺の手で達した。
ガクガクと身体を揺らしながら、桃が俺の肩に顔を埋めた。燃えるような熱い吐息が首筋に掛かり、俺も息を乱しながら桃のうなじの匂いを嗅いだ。
俺の手も、手首を縛ったネクタイも、桃の身体からあふれた蜜ですっかり濡れてしまっている。俺はその事実だけで自分もイッてしまいそうになり、歯を食いしばって波が収まるのを待った。
不意に身体が軽くなり、桃が俺の膝の上から下りたのが分かった。本能的に、せつないほどの喪失感を感じる。室内はエアコンで涼しいはずなのに、俺のTシャツの背中と脇の下はじっとりと汗ばんでいた。
桃がブラウスを身に着けているらしい気配を感じる。俺は自分の股間の熱が早く鎮まってくれることをひたすら念じた。指はまだ濡れたままで、それを舐めたいと思っている自分のいやらしさを恥じた。
身支度を終えたと思われる桃が、俺の顔へと手を伸ばしてきた。後頭部の結び目をほどき、目隠しのネクタイを外してくれる。
急に明るくなった視界に戸惑い、眼の前にいる桃の顔を見て胸が騒々しく音を立てた。18歳の頬はほんのりと上気した色をしていて、唇は薄赤く湿っていた。この唇が俺の唇と重なりあったと思うと、また股間が反応しそうになって俺は情けなく眼を伏せた。
「先生・・・。ごめんなさい、こんなことして。・・・怒らないでね」
「・・・いや、怒らないけど。・・・怒るわけない」
気まずい。猛烈に恥ずかしい。そして狂おしいほどの強い感情に襲われる。
この衝動は何なのかと桃の伏せた睫毛に見惚れていると、今度は手首に巻かれた紺色のネクタイをほどかれた。
俺の両手の下にはジーンズを押し上げている塊があり、桃が改めてそれに気付いて耳まで紅くなった。いや、むしろ俺の方が死ぬほど恥ずかしいのだ。それなのに俺の視線はまた、桃のピンクに染まった肌に吸い寄せられた。
「こっちのネクタイ、汚しちゃった。ごめんね、先生。・・・私、これ持って帰って洗ってくる」
「えっ・・・。いや、いいって。そんなことしなくて」
「ううん。私に洗わせて」
桃は自分の愛液が染みついた俺のネクタイを折り畳むと、ハンカチでくるむように包んで自分のカバンの中にしまった。
「先生、私、帰ります」
「あ、ああ。分かった。その・・・」
俺は椅子から立ち上がりかけたが、股間がまだ屹立したままなのに気付いてそのまま動けなくなった。
「先生、いいの。このままで。・・・私のせいで、いっぱい迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑って、そんなこと俺は思ってないぞ。おい・・・」
桃は座っている俺に覆いかぶさるように身を屈め、もう一度キスしてきた。Tシャツの肩の辺りをキュッと掴まれたまま、柔らかくて甘い唇の感触を眼を閉じて味わった。
唇が離れたとき、俺は咄嗟に桃の手首を掴んでいた。すぐにハッとして手を離す。
桃は俺の顔をじっと見ていた。瞳に透明な膜が張っている。泣いているのかと一瞬驚いたが、窓辺から差し込む西日のせいでよく分からなかった。
「じゃあ、先生。私、行くね。・・・さっき描いてくれた私の絵、ちゃんと色塗って完成させてね」
椅子に座ったままの俺を残して、玄関で靴を履きながら桃が振り返った。俺が「ああ、分かった」と答えると、いつものはにかむような笑顔を見せたのでホッとした。
桃がドアを開けて出ていくとき、俺は腰を浮かせ、不格好な体勢で桃に手を振った。桃は可笑しそうに、そしてとても優しい顔で手を振り返してきた。
「じゃあね、先生。・・・本当にありがとう」
ドアがパタンと音をたてた。桃が俺の部屋から出ていった。
一人残された俺は、さっきまで目隠しに使われていたワインレッドのネクタイがテーブルに置かれているのをぼんやり眺めた。見ているうちに、何故かよく分からない不安に襲われ始めた。
何かに突き動かされるように窓辺に向かい、ベランダに出て下の通りを見下ろす。マンションの入口から桃が出てきて、足早に帰ろうとする後ろ姿が見えた。
「桃・・・!」
どうして呼び止めたのか、自分でも良く分からない。桃はすぐに振り向いて俺を見上げてきた。俺たちはそのまま、しばらく黙って見つめあっていた。
やがて桃がいつもの愛らしい笑顔を見せて、俺にもう一度手を振った。俺がつられて振り返すのを見届け、くるりと背中を向けて歩き出す。それきり、桃はもう二度と振り返らなかった。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。




甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる