姪だけど、抱かれたい!

茜色

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通じあう想い

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「これって、夢・・・?だって遼ちゃんは私のこと、姪としか思ってないんでしょう?」
部屋のソファに座らされ、広い胸に優しく抱きしめられ、私は震え声で恐る恐る聞いた。
「夢じゃないよ。これが現実。・・・今までずっと言わなくてごめん」
遼ちゃんは私の髪に顔を埋めながら、くぐもった声で囁いた。いつもより更に、優しくて私を包み込むような低い声。
「・・・梓が好きだよ。ずっと昔から、おまえを愛してる」
信じられない言葉に、私は眼を大きく見開いた。

やっぱり夢だ。だってこんなこと、あるわけない。私は18歳のときにきっぱりフラれている。お情けで、キスと愛撫をされただけ・・・。
「・・・ウソでしょ?だって、遼ちゃん、私が好きって打ち明けたとき、断ったじゃない・・・」
涙声になってしまい、私は自分の口を手で抑えた。
「あのときは、悪かった。梓を傷つける気はなかったんだ。ただ、あのときのおまえはまだ10代の子供だったから、あの時点で受け入れるわけにはいかなかったんだよ」

そんな・・・信じられない。遼ちゃんも本当は私のこと、好きでいてくれたってこと?心臓がドクドクと波打ち、私の唇は細かく震え出した。
「梓、ちゃんと説明するから、俺を許してくれるか?」
少し不安げな眼で尋ねられる。
「・・・遼ちゃん、もう一回、キスして・・・。これが現実だって、実感したいの」
私は濡れた瞳で遼ちゃんのシャツの胸元を掴んだ。いいよ、と遼ちゃんは眼を細め、これ以上ないくらい優しく私の唇をふさいだ。

しんと静まり返った夜に、ちゅくっ、ちゅぷっと唇を求めあう音が響いている。
私はうっとりと眼を閉じて、とろけそうになりながら遼ちゃんにしがみついていた。手を離したらやっぱり全部夢で、遼ちゃんの身体が遠くに行ってしまうような気がして怖いのだ。
けれども、遼ちゃんの唇と舌は信じられないくらい心地良く、私の心をほどいていった。その体温が、今この瞬間を確かに現実のものだと私に教えてくれている。

「・・・夢じゃないって、分かった?」
唇を離したとき、透明な糸がふたりの間につうっと垂れた。遼ちゃんの手が、愛おしそうに私の頬を包む。
ああ、嘘じゃないんだ。この温かさは本物だ。私はようやく実感して、頷いた。コクンと首を縦に振るのと同時に、瞳からポタッと涙が落ちた。

「梓が高校を卒業して俺に気持ちを打ち明けてくれたとき、本当はすぐにでもおまえを抱いて俺のものにしたかった。それは、本当だよ」
「・・・じゃあ、どうして・・・」
「18なんて、本人は大人のつもりでもまだほんの子供だ。しかも俺たちは血縁はなくても叔父と姪だぞ。そういう仲になるには相当の覚悟が要るし、簡単に一線を越えるべきじゃなかった。それは分かるよな?」
私はあのときの自分の恥ずかしいくらいの幼さを思い出し、遼ちゃんに対して申し訳ない気持ちになった。あのときの私はただ、好きな人を困らせただけだったのかもしれない。
「でもそれ以上に、俺は怖かったんだ」
「・・・何が?」
不思議に思って私が顔を上げると、遼ちゃんがなんだか照れくさそうな顔で私を見下ろしている。

「あのときの梓は俺を好きだと言ってくれたけど、もっと大人になって外の世界に出て行ったとき、俺よりもっと好きな男ができてしまうんじゃないかって。そうなったとき、俺と恋愛したことを後悔するんじゃないかって、そう思って、怖くなった」
「そんなこと・・・あるわけないよ!」
私は思わずムキになって声を強めてしまった。遼ちゃんがそんな私を見て苦笑する。
「でも、あのときはまだ未知数だった。梓だって、23になろうとしてる今なら分かるだろう?高校を出たばかりの女の子が、どれだけ世間知らずで思い込みが激しい子供か」
「それは・・・たしかに今はそう思うけど。でも私、あのときも真剣だったよ・・・」
「だからだよ。俺はおまえの気持ちが本当に嬉しかったけど、おまえの真っすぐな若さにつけこんで自分のものにしてはダメだと思ったんだ。梓が学校を出て社会を知って、大人として自分の判断に責任を持てるようになったとき、それでも他の男より俺を好きだと言ってくれるなら、そのときを待ちたいと思ったんだ」
遼ちゃんの言葉に、胸がギュッと痛んだ。私はただただ、自分の想いを受け入れてもらえなかったショックに囚われていた。でも遼ちゃんは、もっと先のことまで懸念して、私を本気で大事に想ってくれていたなんて。

「俺たちはただの男女じゃなくて、叔父と姪なんだ。そこらのカップルみたいに簡単にくっついたり離れたり、そんなノリじゃいられない。一緒になるのにリスクが伴うのは分かるだろう?だから、ゆっくり時間をかけて、簡単に揺らがないものを育てたかったんだ」
遼ちゃんは私の髪に唇をつけて、言い聞かせるように囁いた。
「私・・・遼ちゃんにフラれたと思ったから、大学のとき他の恋を探そうとしたんだよ。でも無理だった。そうすればするほど、私には遼ちゃんしかいないって、改めて思い知らされたの。遠回りしながら、もっともっと好きな気持ちが育っていったの」
「・・・それを狙ってたんだよ」
遼ちゃんは悪戯めいた眼で私を見下ろした。

「梓が俺をずっと忘れられないように、あのときわざとキスして、おまえに触れた。俺の痕跡を、おまえの心と身体に刻み込んだんだ。他の男になびかないように」
私はあんぐりと口を開けて遼ちゃんの顔を凝視した。
「ひ、ひどい・・・!結局私、遼ちゃんの思う壺じゃない・・・。ずるいよ、そんなの!」
私は思わず遼ちゃんの胸を叩いてふくれっ面をした。なんて人だろう、信じられない・・・!
どうしてそんなふうに嬉しそうに笑いながら、私を抱きしめるの?勝手すぎるよ・・・。
私はたまらなくなって、遼ちゃんの首にきつく抱きついた。

「・・・梓が大学を出たら俺の店で一緒に働きたいって言ってくれたときには、俺はもうおまえをここに連れてくることを決めてたよ。俺だって不安に苛まれながら、4年待ったんだからな。もう我慢なんてしない」
そう言って遼ちゃんは私の顎を上向かせると、指先で私の唇をなぞった。
「ここ、誰かに触れさせた?」
ほんの少し、心配そうな顔。なんだか可愛く見えて、愛おしくなる。
「・・・ううん。そうなりそうになったから、全力で押しのけて逃げちゃったの」
「ハハハッ。可哀想だな、そいつ。・・・でも仕方ないな。この唇は俺だけのものだから」
そう言って、チュッと私の唇をついばむ。

「・・・遼ちゃんってすごい自信家。もし私が本当に他の誰かを好きになってたら、どうする気だったの?」
「でも、そうはならなかったろ?」
「そりゃ、そうだけど・・・。んもう、憎たらしい!」
今度は私が遼ちゃんの腕をグイッと引っ張って、思い切りキスしてやった。
私だってもう我慢しない。今日からずっと永遠に、遼ちゃんは私だけのものなんだから・・・!
私は眼を閉じて、夢中で遼ちゃんとキスしあった。ソファの上に押し倒されると、そのまま絡まりあうように身体が重なった。


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