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誠也と柔らかな果実
しおりを挟む広く快適な檜風呂で一日の疲れを癒した後、バスローブを羽織って浴室を出た。
一度キッチンに向かい、冷蔵庫から水を取り出してコップ1杯飲む。ひとつ深呼吸してから寝室に向かうと、珠里がこちらに背を向けてベッドに座り込んでいた。
髪は既に乾かしたようで、いつものように艶のある髪を肩まで垂らしている。膝に大判のガイドブックを広げているようだ。明日行きたい場所をチェックしているのだろう。でもどこか気もそぞろで緊張気味なのが背中から伝わってくる。
細い肩のラインを眺めていたら、遠い昔、祖母の葬儀の後に縁側で泣いていた少女の姿が思い出された。
胸の奥がチクッと痛む。嫌な痛み方ではない。せつなさと郷愁と、今までふたりで重ねてきた時間を想い、感慨深い気持ちになっただけだ。
精一杯気を張っていたが、本当は心細さでいっぱいだった少女。あのいたいけな娘が見事に成長し、今からこの自分に身を任せようとしている。
背徳的な、罪の意識にも似た感情が込み上げてきた。もう何年も会っていない親戚の人間の顔もチラリと浮かびそうになる。
だが、そういうものを全部押しのけてでも、誠也は珠里のすべてが欲しかった。自分だけのものにしたかった。傲慢この上ないのは百も承知だが、もう決して引き返せないところまで愛してしまった。
この先いろいろ言ってくる人間はいるかもしれないが、自分はいくらでも盾になる。珠里が傷つかないよう全力で守る。
だが、珠里はただ黙って守られていようとはしないだろう。おそらく「自分が誠也を守る」と言い出しかねない。事実、そういう珠里の強さとしなやかさに、誠也はずっと守られてきたのだから。
「……行きたいとこ、決まったか」
ベッドの上に上がり、後ろから珠里の身体をそっと抱いた。
すぐに珠里の手が誠也の腕に重なる。後ろから覗き込むと、ガイドブックはグルメのページが開かれていた。
「食い気ばっかりだな」
「だってー、美味しそうなお店がありすぎて、迷っちゃうもん」
珠里の声はいつになく甘い。幸せそうな響きに誠也の心も満たされる。
「ここ美味そうじゃん」とページを指差しつつ、珠里の肌の匂いを吸い込んだ。
さっきキスしたときも感じたが、もともとの甘い体臭にアロマのクリームらしい植物性のいい匂いが混じっている。それだけでムラムラしてきたので、誠也は珠里の髪を指で掻き分け、露わになったうなじに唇を押し当てた。
珠里の身体がピクリと震える。だが抵抗はない。「ほぅっ」と小さく息を吐き、脱力したように誠也の胸に背中を預けてきた。
「……滝を、見に行きたいの。車でたぶん、30分くらい。すごく綺麗なんだって。近くの売店の、ソフトクリームが美味しいって」
「うん、分かった。滝に行こう」
「それとね、アウトレット、行ってみたい。……広いんだって。誠ちゃんの好きなブランドも、あるよ。あと、レストランも……」
「アウトレットな。了解」
返事をしながら、珠里の首筋に唇を這わせた。撫でるように滑らせているだけなのだが、珠里は肌を震わせつつ、もう呼吸を乱し始めている。
「……誠ちゃんの唇、熱い」
「そう……?」
「気持ちいい……」
はだけた鎖骨に唇を滑らせ、そのまま喉をつたって顎まで辿り着く。
珠里が物欲しげな瞳で訴えてきた。早くキスしてほしいと、潤んだ眼でねだっている。
首に手を添え、珠里の唇を柔らかく食べた。
逃げられないよう腕の中に閉じ込め、しゃぶり、甘く吸い上げ、音を立てながら唇を溶かしていく。腰を抱く手に力を籠めると、くぐもった吐息とともに珠里から舌を絡めてきた。
ふたつのそれはすぐに蕩けあって、小さな魚が身を寄せ合うようにぬらぬらと一体化していく。唇は濡れ、湿った息が漏れ、恥ずかしげな水音が室内に響いていく。
「せ……、ちゃん……っ」
眼を閉じたまま、珠里がうっとりと身体をくねらせた。
誠也は深いキスを続けながら、珠里のバスローブの腰紐を引っ張って解いた。襟元に手を入れ、そのまま肩からスルリと脱がせてしまう。
ローブがベッドの上に滑り落ち、珠里の肌が露わになった。その姿を眼にした誠也は、思わず「うっ」と呻くような声を上げた。
「珠里、それ……」
華奢な身体を包んでいるのは、先日珠里がモデルとして身に着けたあの黒いランジェリーだった。
愛らしいふくらみを包み込む透けたカップと黒いレース、小さな薔薇の飾り。お尻はほぼ剥き出しの状態で、かろうじて大切な場所を隠しているのは黒い小さな布とレース、そして紅い薔薇のみ。
可憐なのにエロティックな姿態はゾクッとするほど美しく、前回眼にした時より一層扇情的に見えた。
「この前壊れちゃったホック、自分で縫い付けて直したの」
珠里が恥ずかしそうにそう告げた。頬が染まっていて、少し不安そうだ。誠也の反応が心配なのだろうか。こんなに可愛い姿を見せられて、嬉しくない男がこの世にいるはずもないのに。
「……おまえは、本当に」
「これって、こういうときに着るものだよね……?」
ダメかな?と上目遣いに訊いてくる。誠也はぎりぎり保っていた理性をかなぐり捨て、珠里をシーツの上に押し倒した。
「きゃっ……!」
「この、エロ娘。こんなはしたない格好で誘惑しやがって」
もう遠慮している余裕もなかった。誠也は下着ごと珠里の胸をぎゅっと掴み、いきなり強く揉みしだいた。
「あっ、やっ……」
両手の中で、ふくらみが柔らかくひしゃげる。この感触だけで、誠也の下半身に熱が集まってくる。
本当にマシュマロのようだ。丸く転がすと、手のひらに甘い弾力が伝わってくる。頭の中では何度も想像していた。不謹慎な自分を恥じながら、触れてみたいと願わずにはいられなかった。
恥ずかしそうに頬を染め、身をよじる珠里の姿は腹が立つほど色っぽい。もっといじめたくなってきて、先端を覆い隠している黒いレースを指でそっとずらしてみた。
薄紅色のつぼみが顔を出し、そのツンとした尖り具合を見ただけで股間が一気に熱くなった。
「乳首、可愛い」
人差し指でちょんと突くと、珠里が「あんっ……」と子猫みたいな声を出す。
誠也は指先で珠里の乳首をいやらしく捏ねくりまわした。
摘まんで擦り、先端を押しては撫でてクニクニと遊ばせる。その度に珠里が身をしならせて甘く喘ぐので、誠也の下腹部も呼応するように熱を増していく。
たまらなくなり、レースの隙間からコリッと勃ち上がった赤いつぼみを口に含んだ。
「ん、あっ……!」
珠里が激しくのけぞった。どうやら想像以上に乳首が感じやすいようだ。誠也は淫らな喜びに胸を熱くし、思い切り音を立てながら甘い乳首を強くしゃぶった。
もっと直に触れたい。誠也は珠里の背中に手を回してホックを外し、ブラジャーを剥ぎ取った。眼の前に晒された白い乳房の愛らしさに、今更ながら深く息を呑む。
珠里が恥ずかしそうに顔を手の甲で覆った。
「……隠すなよ。ものすごく可愛いよ」
そっと手を剥がし、慈しむように優しいキスをする。そうすると珠里の身体からすぐに力が抜け、濡れた舌が誠也を求めて甘く絡まってきた。
キスしながら、誠也は自分のバスローブを脱いだ。ボクサーショーツ一枚になり、改めて珠里の上に跨るようにして見下ろす。
珠里が頬を染めて誠也の身体を見上げてきた。肩や胸のラインを見つめ、眩しそうな顔をする。
そのまま視線は遠慮がちに下りていき、既に大きく膨らんでいる下腹部の辺りで止まる。一瞬、ほんの少しだけ怯えたような眼をしてから、「はぁっ……」と小さな甘い息をついた。
たまらなく可愛い。めちゃくちゃに愛し尽くしてやりたくなる。
腹の底が熱く疼き、溜息とともに珠里の柔らかなふくらみに顔を埋めた。
ちゅぷっと音を立てながら片方の乳首をねちっこく吸い、優しく歯を立てては舌でぬるぬる舐め回す。もう片方の乳房は手のひらで蹂躙し、やわやわと揉みしだいては指で乳首を弄り回した。
珠里は悲鳴にも似た声を漏らし、気持ちよさそうに身をくねらせている。せつなげに脚を擦り合わせ、刺激を受ける度にはしたなく喘いでいる。
乳房をひたすら味わっていると、珠里が息を乱しながら誠也の頭を胸に掻き抱いてきた。
「誠ちゃん……。珠里の身体、好き……?」
その言葉だけで性器がゾクゾクと反応する。珠里の囁くような声が誠也の耳をくすぐり、淫らな欲と苦しいほどの愛おしさで思考が飛びそうになる。
「好きとか、そういう次元じゃない。これは、俺だけのものだ」
柔らかな乳房に乱暴にしゃぶりつく。珠里は心底嬉しそうな声で鳴き、誠也の身体にしどけなく脚を絡ませてきた。
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