不死の王様は一人ぼっち

嵯乃恭介

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最終章

不死の王様は一人ぼっち2

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「お姉さま?」

「さ・・わる・・な・・・に・・んげ・・ん」

丁は憎悪に満ちた瞳で薫を睨みつける。 
薫が見てきた姉の表情では見たことのないものだ。

「瀬田さん・・・これは・・・」

「言ったとおりだ。私が始まりだった・・・。彼女を変えてしまった・・」

始祖の紛い物である、私が原因。
それで良いじゃないか、丁も私も消えればいい。
私は丁の胸に当てる。

丁の呼吸と意識が飛んでいるのか反応がない。
薫も呆然としていた。

「さよならだ・・・月章」




胸に深々に刺された銀の剣と共に丁は灰になっていく。
諸刃の剣といったところか、剣までも灰に戻ってしまった。
だが、もう必要ない。
私は・・・いや、私達の記憶は、何度も繰り返すだろうが、それでも人間とは関わりたくないと思うだろう。

でも鼎は違った。
もしかしたら、彼こそが無垢で純粋な者だったかもしれない。
もぉ二度と会えない。
それが寂しい・・・とだけ思った。
また、待とうとは思わない。

もしも願いが叶うのならば、同族に会うことだ。
そして、私は長となり彼らが生まれてくるときに、禁忌を破ると結末がどうなるかを話せる。
それでも・・・出てくるだろう・・・、私達の影が繰り返したように、同族の始祖もまた同じ繰り返しになるだろう。

今まで会ってきた人間は、とても人間らしく生きていた。
もぉ私に無垢なものはない。
ただの化け物で、人間を妖魔にさえ変えてしまう悪魔かもしれない。

「さよならだ。薫ちゃん。君のお姉さんを変えてしまったことを謝る」

「そ・・んな・・」

翼を広げて夜明けの空に飛び立った。

日光を克服するべきではなかった。
こうして浴びても灰にならない体に今更後悔する。
人間で実験などせず、ありのままの自分でいたならば、人間に危害はなかっただろう。
それでも、記憶は続く・・・。

今回は楽しかった。
次の私は、どうなるか判らないが、それでも同じことをするだろう。



私は、大昔にいた土地に戻ってきた。
そこは昔のままの過疎化された風景のように老人たちが、畑を耕し自給自足をしている風景だった。
どこか懐かしい・・・そんな気持ちになった。

「あんれー珍しいねー、こげな場所にハイカラな兄ちゃんがいるでねぇか」

一人の老人が話しかけてきた。
私は微笑む。

「あの山にゃのぼらんほうがええよー。昔から鬼がいるらしいよってに」

指さされたほうは、私が昔に寝床にしていた山だった。
昔からの鬼となると私ではないか?

「今も住んでるんですか?」

「んだぁ、今も住んどるよってに、近づくのは辞めたほうがええ」

今も?
私以外に誰かいるのだろうか?
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