不死の王様は一人ぼっち

五章

記憶の断片７

ー俺様たちが繰り返してきたことだ

ハッとなって私は気づいた。
今までの頭に過った記憶の断片が全て同じ女性『丁』という女性のものであり、名前も彼女の前のものであり。
そこから導かせるものは・・・

「私を表に出せ！！」

ー今回の俺様は頑固だなぁ・・・受け入れろよ・・丁との因縁をよ

「その因縁を砕くために出るんだ」

靄のように男は消え、視界が鮮明に見えてきた。




気づくと鼎が血まみれになり、私の腕と彼女の棘を受け止めて血まみれになっていた。
その傷は深く、意識があるかさえ判らなかった。

「か・・な・・鼎！！」

手を引っ込ませて、鼎を抱きしめる。
鼎は弱々しく笑っていた。

「ようやく目ぇ覚めたか・・ぼけぇ・・」

微かに肩から灰となってる鼎に絶望しかけたが、咄嗟に自分が流している血を鼎に押し込んだ。
始祖という私以外に生まれ落ちた彼を失うことは絶望以上の物だ。
人間と言う曖昧な関係で済まないかもしれない。
この長い時を過ごせる仲間なのだから・・・

「あかんて・・無理や・・・あんたとの旅は、なかなかやったで？」

嬉しそうに笑って、私の腕の中で鼎は灰になって崩れていった。
これが、運命・・・なのか？
私は絶望する。
何が始祖だ・・・、仲間一人守れない・・・ただの・・・化け物じゃないか・・・。

「きゃはは！ようやく死んだ？死んだ？」

あちこち血を流している彼女を見る限り、鼎は必死に抵抗してくれたのだろう。
私と彼女の攻撃に・・

「あぁ、死んだ・・・丁・・・君も私も、この世に居てはならない・・・」

「！！？」

驚いた表情を浮かべた彼女は、今までにない表情で睨みつけてきた。
ここからは琴とは別物の妖魔として、彼女を丁と呼ぶ。
琴も所詮は、丁と言う女の影だったのだから・・・

「思い出しちゃったの？ふふふ・・でもね、変わらないのよ。私も月章も」

「それは君の名前だ・・・月章・・・どんな思いで、奴隷として生きていたか分かっていたつもりだったが、ここまで人間を恨んだのかは判らない。琴だったときの君は、とても美しく生きたというのに・・・」

丁はイライラしているのか、ヒステリックな感情をむき出しにしていた。
それこそ人間の女の本性に近い。

「琴の時の君の思惑は、私からの〈血〉だったんだね。あんなに優しかった琴・・・、そして冴子も丁・・・君の演技だったのか？」

「煩い煩い！！この世界なんて滅んでしまえば良いのよ！！この世界はくだらない！！私を不幸のものにしたわ！だから壊すのよ！！！人間をまた殺しまわるのよ！貴方だって、そうだったでしょ！？実験として大量の人間を殺したわ！！」

私は記憶の中の私を思い出す。
確かに、殺した。
数えきれないくらいに殺した。