不死の王様は一人ぼっち

嵯乃恭介

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五章

記憶の断片5

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一人になって寂しさを覚えた。
かといって、他の人間に血を与える気にはなれなかった。
食料、従僕として人を攫って、その者を壊すのが数百年続いた。

そこから、更に数百年続いた。
そして同じ匂い、姿を目にした。
その者の前に姿を見せると、その者は驚くことはなかった。
だが、人間である証を見せられた。

「子供を産むのか」

女・・・生まれ変わりかもしれない女に問うと、女は愛しそうに大きくなった腹を撫でて頷いた。

「俺様の子供ではないのか・・・?」

そういった行為はしていないが、女は判らないと言った風に首を横に振る。
旦那と思われる男が現れ、逃げるようにして家に入っていった。

俺様を怯えない女は、産み終えた後に、また俺様の前に現れた。
意味のない行動に、いささか不満を感じる。

「月章・・・様をつけるべきですか?」

「!!」

間違いなく、丁だ。
この名前をつけたのは、あの娘のみだ。
娘ではなく、成人し女性になっている。

「私は貴方に見つけてもらうまで、人間として生まれ変わりました。そして子を産みました。しかし・・その子は普通の人間です。貴方が子を成すことは出来ないかもしれません。けれど私は、貴方との子として育てるつもりです」

頭が痛くなる。
他の男の赤子を俺様の子供として育てると言った女は、輪廻を回り違う者になっている。
あぁ、もしかしたら、これを殺して同じことを繰り返せば、俺様のもとに帰ってくるかもしれない。

考えるが先に手が出ていたらしく、女の胸を貫いていた。

「かは・・」

手を出して戸惑ってしまった。
何故、俺様は女を殺そうとした?
輪廻を回って俺様のもとに戻そうとした?
違う、何が起きたのかと思ってしまったのだ。

「こ・・ろされる・・・とは、おもってま・・した・・」

腕の中で今にも生き途絶えそうな女は、変わらぬ笑顔で笑っていた。
死をもたらそうとしている男に。

「あな・・た・・の血・・をま・・た・・・く・・れま・・せん・・か?」

人間に直接、自分の血を与えれば、どうなるか?
そういえば実験でしたことがない。
俺様は、口の中を噛みちぎり口いっぱいになった血液を接吻で女に流し込んだ。
女は痙攣をおこし、暴れたが俺様は抑え続け、静かになったと思ったら、彼女は仮死状態で眠っていた。

「これは新しい実験か。これでお前が変わるなら、面白いものになりそうだな」

寝床に女を寝かせて、しばらく寝床には戻らなかった。
すぐに変化するとは思わない、もしかしたら死んでる可能性だってある。
二度と会えないと思っているくらいだ。
俺様は、人間との生き方について考えた。

俺様が血を吸えば、血吸いの鬼となる。
俺様の血を与えれば、俺様より進化し、日光さえも克服してしまうじゃないか。
増やすだけ、俺様の血は無意味だ。
だが、人間から血を与えると、どうなるかとは考えもみなかった。
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