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四章
変わってしまった魂
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貫かれてしまったが、心臓は無事だった。
しかし、彼女を縛っていた糸が切れてしまった。
翼に力が入らない、私は・・・彼女を・・・・
ー違う
自分の声が頭の中に響く。
ー血吸いの鬼が人間などに血を分けることは禁忌だと判っていただろう。何故、『私』は繰り返すのだ
私?頭に響く声が、まるで自分のことのように囁く。
ー私は、お前だ。お前は私だ。始祖として目覚めることが出来るだろう。
パンと頭の中が弾ける音がした。
そして、私は変わってしまった。
魂も心も・感情さえも・・・・
落ちていくのを誰しもが見ていた。
薫の悲鳴が響く。
だが、関係ない。
『俺様』の邪魔をするものは、殺す。
翼を反転させて、女に追い付くと女は先ほどのように笑っている。
何も感じない、まるで真っ白な世界に見える。
人間の光さえ、見えないくらいに真っ白で広い世界。
「きゃははは!また刺されたいの!!!?馬鹿じゃないの?あははははは」
目の前にいる女が誰だったか記憶が消えたように感じる。
女の声が何を言っているのか判らない。
だが、『俺様』を侮辱している下級妖魔・・・生まれたてと言ったところか。
殺す・・か・・
思うが先に、体が動いていた。
月章と呼ばれた血吸いの鬼の動きではなかった。
鼎も目撃する。
今まで見せなかった男の表情が、見たことのない・・・冷たい瞳と何も感じないといった表情に驚きを隠せなかった。
薫と青磁が鼎を掴みかかり泣きながら、何かを言っていたが、鼎には聞こえていない。
ただ、一つだけ言える。
短い期間だったが、父と思っていた男の豹変ぶりに目が離せない。
「くそったれ!!」
同じように翼を背にし、飛び上がり二人の間に入った。
月章は表情を変えない。
女は嬉しそうに笑っている状態。
おかしくなりそうだ。
「おかしいやろ!!あんたは!!ずっと探していたんやないのか!!?」
「あー、おっかし!あははは!!こーんな子供を見つけておいて、琴には気づかなかったの?」
スルリと鼎の体を抱きしめ、頬に冷たい手を当てる女は、妖美で妖艶の怪しげな感覚を鼎に与えた。
「『俺様』にとって、この話し合いは無意味だ。この世界に相応しくない『我らは』消えるべきだ」
口調まで変わっている事に気づく。
そこで感じたのは、月章ではない何か。
父として支えてくれた男の声のトーンはなく、無機質に喋る目の前の『誰か』は、圧倒的な力の持ち主だ。
直感とか、曖昧なことを信じたくはないが、これが本来の本能なのだろうか?
月章は、別の血吸いではない。
力なく、女を振りほどき、空中でひざまずいた。
嫌な汗が流れる。
これは、危険ではないが、歯向かえば滅ぶ。
「あ・・ぁ・・」
声が出ない、圧倒的な恐怖が自分の首を絞めているような感覚。
「若き子孫よ、『俺様』の影に育てられたのなら、判っているな?」
影・・
今までの見てきた月章は・・・影?
存在自体が、朧げな存在?
しかし、彼女を縛っていた糸が切れてしまった。
翼に力が入らない、私は・・・彼女を・・・・
ー違う
自分の声が頭の中に響く。
ー血吸いの鬼が人間などに血を分けることは禁忌だと判っていただろう。何故、『私』は繰り返すのだ
私?頭に響く声が、まるで自分のことのように囁く。
ー私は、お前だ。お前は私だ。始祖として目覚めることが出来るだろう。
パンと頭の中が弾ける音がした。
そして、私は変わってしまった。
魂も心も・感情さえも・・・・
落ちていくのを誰しもが見ていた。
薫の悲鳴が響く。
だが、関係ない。
『俺様』の邪魔をするものは、殺す。
翼を反転させて、女に追い付くと女は先ほどのように笑っている。
何も感じない、まるで真っ白な世界に見える。
人間の光さえ、見えないくらいに真っ白で広い世界。
「きゃははは!また刺されたいの!!!?馬鹿じゃないの?あははははは」
目の前にいる女が誰だったか記憶が消えたように感じる。
女の声が何を言っているのか判らない。
だが、『俺様』を侮辱している下級妖魔・・・生まれたてと言ったところか。
殺す・・か・・
思うが先に、体が動いていた。
月章と呼ばれた血吸いの鬼の動きではなかった。
鼎も目撃する。
今まで見せなかった男の表情が、見たことのない・・・冷たい瞳と何も感じないといった表情に驚きを隠せなかった。
薫と青磁が鼎を掴みかかり泣きながら、何かを言っていたが、鼎には聞こえていない。
ただ、一つだけ言える。
短い期間だったが、父と思っていた男の豹変ぶりに目が離せない。
「くそったれ!!」
同じように翼を背にし、飛び上がり二人の間に入った。
月章は表情を変えない。
女は嬉しそうに笑っている状態。
おかしくなりそうだ。
「おかしいやろ!!あんたは!!ずっと探していたんやないのか!!?」
「あー、おっかし!あははは!!こーんな子供を見つけておいて、琴には気づかなかったの?」
スルリと鼎の体を抱きしめ、頬に冷たい手を当てる女は、妖美で妖艶の怪しげな感覚を鼎に与えた。
「『俺様』にとって、この話し合いは無意味だ。この世界に相応しくない『我らは』消えるべきだ」
口調まで変わっている事に気づく。
そこで感じたのは、月章ではない何か。
父として支えてくれた男の声のトーンはなく、無機質に喋る目の前の『誰か』は、圧倒的な力の持ち主だ。
直感とか、曖昧なことを信じたくはないが、これが本来の本能なのだろうか?
月章は、別の血吸いではない。
力なく、女を振りほどき、空中でひざまずいた。
嫌な汗が流れる。
これは、危険ではないが、歯向かえば滅ぶ。
「あ・・ぁ・・」
声が出ない、圧倒的な恐怖が自分の首を絞めているような感覚。
「若き子孫よ、『俺様』の影に育てられたのなら、判っているな?」
影・・
今までの見てきた月章は・・・影?
存在自体が、朧げな存在?
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