不死の王様は一人ぼっち

嵯乃恭介

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四章

何度も繰り返してきた別れ

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「姐さん!おかえりなさい!!」

門を通るとズラーっと並んだ黒服スーツの男たち。
まぁ堅気ではないことは明白だが。

奥から前にあった老人が出てきた。
車いすに乗っている。
こちらも寿命が近いのかもしれない。

「薫、その男は!!」

「お姉さまが会いたがってる相手なの!!瀬田さんこちらに」

引っ張られるようにして離れまで連れてこられた。
障子越しでも判るくらいの弱々しく苦しそうな呼吸音。
あぁ、本当に・・・こういうのは辛いんだよ・・。

「お姉さま、見つけたわ」

前の薫から考えきれないくらいに大胆に行動。
相手の承諾を得てから開けるくらい怯えていたというのに・・。

私は思わず目をそらしてしまった。
冴子は、呼吸さえ苦しそうにしており、付き添いなのか山口青磁が真剣な面持ちで座っていた。

「瀬田さん。お待ちしてました」

「山口君まで居たのかい・・・冴子・・・」

鼎は、初めて見るかもしれない。
自分とは違う人間との時の違いに・・・

「なんや元気あらへんな?」

「鼎、外で居なさい」

私の声が真剣だと判ったのか、鼎は大人しく出て行った。
同じく青磁、薫と出て行った。

「い・・まは、せ・・ださんでし・・たね・・」

「無理しなくていい。君も先に逝ってしまうのかい?私が人間ではないと判っているんだろう?」

手を握り、念を送るように話しかけると冴子の声が頭に響いてきた。

『会えて嬉しいわ。けれど、貴方はすぐに居なくなってしまう。輪廻の輪を巡って出会っても気づくことなく、私を見逃してしまっていたわ』

思わず涙が出る。
どうやら、知らぬ間に彼女とは出会っていたらしい。

『けれど、何度も見つけてくれている貴方が色んな人生を生きていてるという事には驚きました。知らぬ間に【約束】を何度もしていたのです。月章様・・』

千年も聞かなかった名前・・・、もぉ無意味かもしれない。
彼女の心臓は、今にも途絶えそうに小さく鼓動している。
私は泣くことしかなかった。
千年以上も泣くことがなかったが、ここで初めて久しく涙を流す。

『貴方様の泣き顔は久しぶりです。月章様・・・私の血を飲んでください』

自ら死を求める者、いや、千年前に戻ったような気分が蘇る。
私は弱々しくなった彼女の体を持ち上げ、首筋に牙を差しこんだ。
彼女がピクリと動き、吐息が色っぽく感じるほどに高揚を感じているのか。
これ以上、彼女を苦しめるくらいなら、いっそ自分の手で終わらせることも出来る。

『月章様・・私は幸せ者でした・・・貴方に出会ってから、私はずっとお慕い申しておりました』

私は彼女の血を少しだけ飲んで、牙を戻し、彼女を再び寝かせた。
一つだけ方法はある。
これは賭けも含めて危険な行為だ。

私は彼女の手を強く握りしめた。

「私とともに生きたいかい?」

彼女の閉ざされた瞳から流れる涙。

『私は人間として死んでいきます。貴方と共に生きていけるなら、それも幸せでしょう。しかし、いつしか貴方の生涯の邪魔になるやもしれません。ここで人間として・・・』

「そうじゃない、私は君をずっと探してた。何度もすれ違ったかもしれない。けれど、こうして会えたじゃないか。私とて、簡単に死なれては、何のために探していたのか判らない。そうだろう?鈍感な私だ。今度会えるのが・・・いつか判らない時を過ごしてきたんだ・・・、私の我がままかもしれないが・・私と共に生きるつもりはないか?」
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