不死の王様は一人ぼっち

嵯乃恭介

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一章

加藤悟と言う男4

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悟を担いで仮住まいの屋敷に帰ってきた。
仮住まいと言うのもおかしいが、親から遺産で受け継いだと言っても気づく者は居るだろう。
今回、悟のように鋭い者にはバレるかもしれない。
催眠でもかけておこうかと思ったが、バレることに戸惑いを感じた。

「おやすみ・・・」

子供をあやすように悟の頭を優しく撫でて部屋を出て行った。
今回の人間としての人生は、なかなか面白くしてくるではないか。
四人掛けのソファーに座りながら輸血パックを開けてコップに注ぐ、非常時じゃない限りは手を出さないが、今回は外で〈食事〉が出来なかったこともあり、これで補うことにする。

「やはり古いのは不味いな」

それでも飲み干す。
輸血パックは、なくなりかけると病院に入り込み少しずつ頂いている。
まぁ人間からしたら何に使うか判らない。もしくは新手の宗教のいたずらか?と思う程度だろう。
ニュースにすらなっていないのだから。

「時間は・・・2時か」

ほとんどの人間が眠る時間、昼間行動していれば私もそうだ。
輸血パックを片付けてから、地下室にある自分用の寝床に入り込む。
人間と言うのは本当に不思議なものだ。
千年見ていて呆れた時もあったが、個人個人を見ていると不思議と笑えて来る。




「・・・・地下?」

悟は酔っていなかった。
むしろ、冴えわたっていた、初めて会社で一を見た時に感じてた違和感の正体だ。
幼い頃に桜の下で、黄昏ていた男、とても絵になったので今でも鮮明に思いだされた。
きっかけは単純だった。
何かを捨てるときの表情に似ていた。
幼い頃の見た彼も、一も同じような同じ顔で、同じ表情をしていた。

そして、飲みに誘ってくれたのをチャンスと思い、話に乗っかってみたのだが、聞き出せることはなく。
昔見た表情だけだったので、危ないと思って切り上げて酔ったふりをしたわけだ。
今にも別れを切り出されそうな雰囲気だったと思う。

「隠し事を暴くのは趣味じゃないが・・・」

まさかなと思う。
一人暮らしと聞いているが、こんな屋敷を持ってるわけがない。
遺産相続としても大きすぎるし、掃除もされてない、あちこちが崩れそうになっている。
ギシギシと音が鳴る廊下を歩いていると、鉄くさい気がした。
まぁ気のせいだろうと片付けた。

地下へと向かう階段は隠すようにあったが、入るところを見たのでわかっている。
もしかしたら寝てないかもしれないが、事実を確認したい。
彼が何者で、なんで寂しそうに笑うのかを

暗闇で足元も見えないほどだったが、一点が小さな赤い色を見せていた。

「やっぱり起きてたか悟」

ドキッとする。
自分の演技に不信感を感じて起きていたのか?
いやそれでも言い訳が出来るだろうか?

「いやー起きてお前が地下に行くのを見て、お宝でもあるのかなーって」

「嘘は要らない。本当のことを言え」

今までの一とは違う言葉の重みで押しつぶされそうなくらいの重圧を感じた。
悟はゴクリと唾を飲み込んだ。

「お前は・・人間なのか?正直に言ってくれ!俺、お前がなんであろうと受け入れるし、真由美だってそうだ!今から生まれる赤ん坊だって、お前を受け入れるし、だから!だから!!」

悟の首に冷たいものが当たる。
微かに指先だと判った。

「は・・はじめ・・・?」

手を上げて、降参の意を表すが、指先は冷たく首にめり込んでいく。

「穏やかに別れたかったんだがな・・・あぁ、お前は確か嬲られて喜ぶんだったな?ジワジワ痛めつけてやろう。結婚祝いならぬ、別れの意味も込めて」

あぁ私らしくないこと言っていいる。
悟は悪くない、私が迂闊だったのだ。
けどまぁ、これで拒絶してくれるなら、もぉ良いだろう。
逃がして、それで別れるだけだ。
楽しい一人の人間の人生だったよ。と自己解決までしたが、思わぬ反撃を受けた。
鼻っぱしを硬い何かで殴られた。

「ふっざけんな!!何年、お前のダチやってると思う!!声が弱弱しいわ!!もっと工夫しろよ!」

????
どうやら、彼は頭で私の頭を殴ったらしい。
そして、さきほどの言葉から汲み取ったと思われる声について説教される。
こんなことは初めてだ。

「くっくっく。お手上げだ。降参。お前の勝ちだ」

「え?・・・何?」

「全部話す上で、お前の意見を聞きたい。それも含めて逃げるし、友としてな」

私は、初めて人間に真実を話すのかもしれない。
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