奪われた最愛と双子たち

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22話:それぞれの再会

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母さんに会えるんだ。
そして俺には、妹たちもいるんだ。
一度に家族が3人増える。嬉しくてたまらない。早く会いたい。
なによりも、父さんと母さんを早く会わせてあげたい。



「母さんと妹たちを迎えに行くの?」
「ああ、おまえも一緒に行こう。この国が後ろ盾となってくれ、国同士で話も通っている。」

「ただ、懸念事項がある。フィリアは俺たちの子だが、ディーナは侯爵の子だ。ディーナの安全確保はしっかりとしたい。」


「アーデン侯爵は、ディーナを王太子に売るつもりだと聞いている。」

「妹たちの事情もわかっているんだね。」
「ああ、レティのそばに妹がいて定期的に連絡をくれるからな。」

「母さんたちは、何も知らないの?」

「妹のミリーもどんなに話したいと思ったか、でもヌカ喜びはさせたくないからとレティシアには今も伝えていないわ。」

「きっと、物凄く喜んでくれるね、母さんたち。」
「ああ、そうであってほしい。」

「そこで、人誑しのおまえの出番だ、カイル。」
「伯父さん?」




[後日、王城にて第3王子と密談中のカイル]


王子は12歳で、婚約者を決めろとやいのやいの言われて疲れていた。

「まだ12歳なのにさ、結婚相手を決めるのは早いと思うだろ?」

(俺は8歳だけれど、キールと結婚するつもり。言わないでおこう。)

「そうですね、そんなあなた様に偽の婚約者はいらないかな~と思いまして。」
「何?詳しく頼む。」
      ・
      ・
      ・


「さすがカイルだ。第3王子殿下がディーナの婚約者と決まった。」

「例の味方の王族の後押しもあったことだし、スムーズだった。カイルお手柄だ。」
「役に立ててよかった。」




【ライルの故国:王宮にて】


アーデン侯爵は、王宮に呼ばれていた。
レティシアと娘二人も伴っていた。
マリー医師もミリーも付いてきていた。

呑気に、ディーナが王太子の側室になる話だと浮かれていた。

一方レティシアとフィリアの顔色は悪かった。
ディーナは全く気負っていなかった。


「どうするのよ、ディー。このままじゃロリ王太子の餌食に・・。」

「心配しなくとも大丈夫。いざとなったらお母様やフィーたちの安全確保だけしたら、王宮ごと吹っ飛ばしてもいいし。他国で暮らすという手もある。こう見えて金を稼ぐことには長けているから心配すんなって。」

「そんなこと言って、8歳の子供なんて信用されないわよ。」

「見かけわな。中身は70歳のジジイだ。酸いも甘いもわかってるって。手足となる大人を隠れ蓑にすればいいだけさ。」



そして、通された部屋には、ライルとカイル、リリー、隣国の第3王子も牽制役としていた。


レティシアは、事情がわからぬまま愛しいライルの胸に飛び込んだ。

「ライル!ライル!!」

「俺のレティ!迎えにきたよ。遅くなってすまない。」
「いいえ、いいえ、私を許してくれるの?ライル。」

「許すも何も君は何も悪くない、そうだろう?」
「ライル、でも私は・・。」

「君が、俺以外の男を知らないってこともわかっているよ。」小声で。

真っ赤になったレティにライルは口付ける。

「一応、公衆の面前で王族もいるんですが、まあいいでしょう。」


「マリー先生、全てあなたの助言からはじまった。爵位の件もディーナの婚約の件も心からの感謝をあなたに。」
「ふふふ、いいのよ。気まぐれで国を出奔した末端の王族が、少しは役に立ったかしらね。」

「少しどころか十二分に。はじめまして、マリー殿下。」
「わかっていたけれど、ライルにソックリね。産まれたままの顔でそのまま育ったという感じだわ。」


「カイル。なにもしてあげられなくてごめんなさい。」
「いいえ、母さん、迎えが遅くなったのは俺のせいなんです。」

カイルから事情を聞き、「ごめんなさい、私の悪いところが遺伝してしまったのね。」とレティシアが悲しそうに言う。

「母さんはなにも悪くないよ。」
「それを言うならカイルもなにも悪くないわ。カイルを健康にしてくれてありがとう、ライル!」


「リリー姉様、本当にありがとう。ライルのところへカイルを連れて行ってくれたのね。」
「ふふ、この顔なら自分の子だと弟も疑いようがないと思って。」

「ありがとう。ライルのところほど安心な場所はなかったわ。そして、結婚おめでとう。」

「まさか私が結婚して子にも恵まれるとはね。乳兄妹同士で結婚するかもしれないわよ。」
「そうなったら嬉しいわ。」




「フィリア、ディーナ、不安だっただろう?迎えにきたよ。これからは俺が守るよ。」
「お父様!」「ライル父様、私のことも守ってくれるの?」

「勿論だ。ディーナの風除けとなってくれる王子殿下も一緒に来てくれている。」

「おや、私の風除け殿、よろしく。」とディーナは、唐突に第3王子に言った
「・・ああ。」




「フィリア、俺の半身、会いたかったよ。」
「カイル、私の半身、会えて嬉しいわ。」

2人は、ひしと抱き合った。









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