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08話:果報者
しおりを挟む[子爵夫人と女医]
「それで?」
「はい、お嬢様が落ち着いてから心音を聞いたのですが、とても規則的で驚きました。」
「まあ、で、では・・。」
「はい、可能性が確信に変わりつつあります。」
「挙式後、もう少し様子を見て、私の思う通りでしたら旦那様方にお話しください。」
「ああ、希望が出てきたわ。」
挙式前日、ライルの両親も宿泊していた。
ライルの家族だけで歓談していた。
「夫人に、謝られてしまったよ。」
「父さん?」
「お金がなくて、身内だけの結婚式になることを。」
「そ、そんなこと・・。」
「ああ、わかっているよ。私たちはその方が気楽でありがたい。」
「お嬢様のお薬代が・・。」と姉のリリー。
「そうだね、心臓の薬はとても高価だ。」
「それと・・。娘がライルを置いて先に逝ってしまうかもしれない、ライルに辛い思いをさせてしまうのに・・と謝られてしまったわ。私たちは、ライルが幸福ならそれでいいのよ。」
「母さん・・。」
「初めて会ったが、美しいご令嬢じゃないか。」
「本当に。あれほど美しい方はなかなかいないわ。」
姉妹たちも、うんうんと頷いている。
「この果報者め、大切にしなさい。」
「はい、もちろんです。」
[挙式日]
翌日は、雲ひとつない晴天だった。
子爵は、娘の花嫁姿を見て、泣きそうになっていた。
「体が弱くなければ、王族にだって望まれてもおかしくないほどの美しいわが娘だ。」
「父上、子爵家の娘が王家に入れば身分がどうのこうのと苛められますよ。
私は、これで良かったと思います。」
「何より私の両親は恋愛結婚で今もこちらが恥ずかしくなるほど仲が良い。レティシアもそんな両親を見て育ちました。好きな男と結婚できて幸せですよ。」
「親をからかうんじゃない。・・わかっている。レティシアが幸せならそれでよい。」
レティシアは、父親の手を離れ、祭壇で待つ愛しいライルの元へ。
ばら色の頬に形の良い艶やかな唇をほころばせ、とても可愛らしく美しかった。
「レティ、きれいだ。」
「ライルも素敵。」
(レティが可愛すぎる。)
(俺だけを真っ直ぐに見つめる瞳。ああ、たまらない。)
(父の言う通り、俺は果報者だ。夜が待ち遠しい。)
挙式後、身内だけで和やかに食事をした。
皆、幸せな二人を温かい目で見ていた。
ライルは、どうしてもこの後のことで頭がいっぱいだった。
ウェディングドレスから、こぼれそうな胸が・・・。
俺は、それに触れることができる。
そして、レティの一番近くに行けるのは俺だけだ。
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