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『初戦闘』と『レベルアップ』
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「———クエストの内容は?」
「受けてくれますか?」
「とりあえず話を聞くだけだ」
(何もしないよりはまだマシだろうしな)
俺はとりあえずこのローブから、クエストの内容だけでも聞くことにした。
今の俺でもクリアできる内容だったら受けた方が得だし、今は少しでも金や装備、経験値を手に入れたい。
「…。あるモンスターの討伐です」
(あ、これ無理なやつかもしれない)
さっきも言ったが、今の俺は初期装備で《技能》は一つだ。
こんな舐めた装備で勝てるモンスターがいるなら、むしろ俺が教えてほしい。
「あ、大丈夫ですよ。装備はこちらで用意してあるので」
「あのさ⁉ さっきから当然のように心読むのやめてくれないかな、この世界にはプライバシーって無いの⁉」
「…。ぷらいばしー?」
本当にコイツは人の心が読めるスキルでも持ってるのか? 至極当然のように人の心を読みやがって。
あと『プライバシー』の英単語、AIの言語エンジンにインプットさせとけ運営ぃ! 海外サービスの時どうすんだよぉ!
はぁはぁ、まあ今それは置いとくとして。
装備は出る、か。
それなら今の俺には受けるメリットが十分にある。
クエストクリアできれば報酬は出るだろうし。
なら、これは俺にとってとてもおいしい話ということにる。
まだ、何を倒してこればいいか聞いてないけど。
「討伐対象は何だ?」
「それは言えません」
(…。まさかのシークレットですか)
ローブは先ほどまでとは打って変わり、申し訳なさそうな声を出す。
俺は内心舌打ちをする。
討伐対象が分からないのでは対策の仕様が無い。
おそらくここでコイツを問いただしても有用な情報は手に入らない。NPCとはそういうものだ。必要以上の仕事はしない。いや、正確には出来ない、というべきか。
となると、このクエストは一気に怪しくなる。
今まで聞いた情報を整理する。
装備は向こうが用意する。報酬もでる。つまりお金も経験値も手に入る。もしかしたら一緒に装備も手に入るかもしれない。ただ、何を倒せばいいか分からない。最悪ボスとの戦闘すらあり得る。そうなった場合、現在ソロプレイ中の俺は間違いなくやられる。
(クエストクリアの割合はよくて五割。いやもっと低いか)
断るべきだ。
心のどこかからそう聞こえた。
現在のタクは周りと比べても遅れている方だ。なら重視するのは速度と安全。
故にこのクエストを受けるとしても、まだ、その時ではない。
このゲームのデスペナルティ。つまりゲーム内で死んでしまった場合は、一時間の一部スキルの停止とステータス減少が行われる。
つまるところ運営側は『一時間街から出るな』と言いたいらしい。
このクエスト受注がいつまで続くか分からない、がここはスルー安定だった。
そう考え俺は眼の前のローブに声をかける。
「…悪いな。今回は———」
しかし、その時俺は見てしまった。
ローブの袖から少し出て震えている小さな手を。
(…。子供?)
無意識のうちに言葉が止まる。
「…。」
「…。」
一瞬の沈黙。
そして俺は再び口を開く、
「分かったよ。受ける。さっさと装備をくれ」
思考の結論とは反対の言葉を。
「———へっ?」
明らかにローブの方が驚いていた。
お前から持ち掛けてきた事だろ。何を今更遠慮してるんだか。
俺は一刻も早くこの場を離れるために、手早く装備を受け取りクエスト受注を選択。
用事は済んだとばかりにその場を後にしようとして、ローブに袖を掴まれていることに気付いた。
「本当にすいません」
僅かにフードの奥に見えた瞳は申し訳なさそうに一瞬伏せられていたが、すぐに確固たる意志を浮かべ、俺の灰色の眼を真っすぐに見つめると託すように言葉を続けた。
「本来なら、これは他人に託すべきではないことです。でも———あたっ」
ローブの言葉を遮るように、俺は頭に手刀を落とした。勿論手加減して。
「そういうのは全部終わってからでいいだろ。俺はまだお前に何もしてない。だからお前に礼を言われる筋合いはない」
俺はそれだけ言い残すとローブに背を向け、広場を出る。再びのノイズ音と共に俺の周りに人々が現れる。
俺はもう一度振り返り噴水の淵を確認する。既にそこに見知ったローブは見当たらず、NPCの兄妹が仲良く焼き菓子を分け合うという温かい光景だけがあった。
ピコン。
視界左下のログが更新される。
『異常依頼【死者への安らぎ】』
【受注を確認しました】
■■■
街の外には森が広がっていた。
「ほえぇ~」
聳え立つ木々は俺の身長の五倍程高く、幹は俺の胴体の六倍は太かった。昔一度富士の樹海に行ったことがあるが、今目の前に映る森は俺が知っているどの森よりも鬱蒼とし、大自然を体現していた。
そんなことをのろのろと考えつつ、俺は森の奥へ奥へと散策。もとい探索していた。
初心者が最初に戦闘することを仮定して設計されたであろう森の中を、タクはズカズカと進んでいく。タクの現在のレベルはあいかわらず『一』である。
いくら初心者御用達のエリアであろうと、いきなり深い場所に行くのは少々危険である。
勿論タクはそれを知っていた。が、タクにはそうしなければならない理由があった。
というのもこの森———《誘いの森》の浅い部分には、俺と同じ初期のプレイヤーが多すぎて《MOB》が沸いてもすぐに狩り取られるてしまうのだ。そのためとてもソロでレベル上げができる環境ではなかった。
故にタクはどんどん森の奥へと踏み込んでいった。奥の方が強いモンスターも沸きやすいだろうし。
タクは攻略を行う上で、安全をはかりにかけるのを辞め、ただひたすらに強くなるための速さだけを考えた。
今のタクの装備は先程までの初期装備から変わっており、《上半身2》《下半身》《足》の装備を依頼主のローブから受け取り装備していた。
【《薄闇》シリーズ・上2】
DEF+5 STR+3
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のジャケット。
【《薄闇》シリーズ・下】
DEF+5 AGI+2
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のズボン。
【《薄闇》シリーズ・足】
DEF+5 AGI+3
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のハーフブーツ。
初期装備の防御力に比べ、倍以上にDEFが高く、おまけにステータスに補正もついている。想像以上の装備を手に入れてしまった。
思わぬ収穫に緩む頬を引き締めつつ森の中を探索していると。
「…。ん?」
そこで俺は前方の木下が仄かに発光していることに気付く。
俺は発光元に駆け寄り、タップする。
すると発光元が爆ぜるように消え去り、目の前にメニュー欄が表示された。
【ククル草】
下級のポーションを作る際に使用するもの。 食べると少しHPが回復する。
へぇ、なるほど。こうやって素材集めをするのか。確かにこうやって光ってれば分かりやすいな。
タクはゲームシステムに感心しつつ、辺りに存在する、発光元を手当たりしだいに乱獲していく。
雑草が生い茂った地面をザクザクと踏みしめ、森の中を進んでいく。森の中には、タクの足音だけが響いていた。
『KIISYAAAAAAAAA!』
すると、背後から金切り声が聞こえた。
振り返るとそこには腰布を巻いて樹の棍棒を持った何かが立っていた。緑色の肌をした子供位の身長の———ん? いや、コレ子供か?
…いや、違いました。
緑色の子供の頭上に表示された赤い逆三角錐のアイコン。
それは敵性MOBの証。《モンスター》やプレイヤーに危害を加えるものに表示されるアイコンだった。
そして続けてその上に名前が表示された。
【緑小鬼】と。
つまり、この緑色の肌をして醜悪な顔した子供みたいな化け物はモンスターということか。
緑小鬼と言ったら、ファンタジー皆勤賞のモンスター。しかし、リアル緑小鬼は俺も初見なので、警戒し即座に距離を取る。
距離を取り改めてタクは緑小鬼を確認する。確かによく見ると———いや、よく見なくても中々に気持ち悪いな…。むき出しの歯の間から零れ落ちる涎とか無駄にリアルだし。
緑小鬼との距離は五メートル。
三歩で詰められる距離、かな。
いつでも切り捨てられるように刀を抜き、構える。
瞬間。緑小鬼はその小さな体躯からは想像できない速さで突撃を敢行する。右腕に握られた棍棒を振り上げての突進。速度は中々だが狙いは直線的。
俺は僅かに体を右にずらすだけで緑小鬼の棍棒を回避する。
体の横を棍棒が割と凄い速度で通り過ぎていく。確実に頭を叩き潰すつもりだったであろう一撃。
「おっと」
タクの額に冷や汗が浮かぶ。
もしかしたら、ゴブって割とSTRが高めなのか。
『GYAA⁉』
避けられたことに対してか、緑小鬼の鳴き声に疑問の色が混ざっている気がした。生憎と【緑小鬼語】は分からないため、俺の勝手な予想だが。
あ、でも【緑小鬼語】とか《技能》にありそうだな。
緑小鬼は攻撃後の硬直から復帰すると、即座に地面に振り下ろした棍棒を左方向———俺のわき腹辺りを狙って振りぬく。
『GUU⁉』
だが、その攻撃もタクに当たることはなく虚しく空を切った。再び驚愕の鳴き声を上げる緑小鬼。
しかし、それは己の攻撃が外れたからではなかった。
そして今回の驚いた理由は俺でもわかった。とても簡単な理由だ。
(まあ、戦闘中に敵の姿を見失ったら、そりゃあ慌てるよな)
タクは緑小鬼の背後で刀を軽く振るう。それは緑小鬼を斬るための一閃ではなかった。
文字通りタクの刀は空を斬る。
刀に張り付いていた赤い光粒が、刀の軌跡に合わせて地面に叩きつけられ砕け散った。
ボトッ。少し遅れて静かな森に何かが落ちる音がする。
何度目か忘れたが、もう一度説明しよう。ここはそこそこ森の奥なので、少しの物音でも耳に届く。人間は勿論、緑小鬼にだって聞こえる。
(どうせ緑小鬼も俺が森を歩く音を聞いて、近づいてきたのだろう)
だから、今の音も聞こえただろう。
自分の頭が落ちる音が。
パリン。今度はガラスが割れるような、甲高い破壊音が森に響き渡る。緑小鬼の体が光になって砕け散る音だった。
モンスターが消えるところは初めて見たが、なかなか綺麗なものだな。
それがタクが最初に浮かべた感想だった。人工的とはいえ生き物を殺めた、だがタクはそれを気にすることは無かった。別にタクは『殺すの大好きっ子』ではない。
ただ、俺を殺しに来たんだから、殺されても文句ないよねぇ。という理論の持ち主であるだけ。
そう、タクは割り切りのいい子なだけであった。
「———ほら、お前らもさっさと出て来いよ」
タクは近くの草むらに向けて声をかけた。
草むらの高さは五十センチ。子供位のサイズの生き物が屈めば、十分隠れられる高さだった。
『GYURUU…』
わずかに草むらが揺れ、そこから五体の緑小鬼が現れた。三体はさっきの緑小鬼と同じく棍棒だが、残りの二匹の緑小鬼はショートソードを装備していた。
おそらくは今の緑小鬼の仲間だろう。あの緑小鬼と戦い始めた最初からこいつらはあの草むらに潜伏していたのは分かっていた。
多分さっき倒したのは斥候。こいつらが本隊といったところか。
だが、仲間が殺されても出てこないのは予想外だったが。
もしかしたら本当は他人、いや他ゴブだったか?
(まあ、そんなことはどうでもいいか)
そう、タクからしたら仲間かどうかは些細なことであった。何故ならタクからすれば『経験値』と『金』が向こうから寄って来てくれたようなものだから。
…もう一度言っておこう。
タクはサイコではない。
効率重視のプレイヤーはみんなこんな感じである。
緑小鬼五匹とタクの距離は七メートル。先ほどの戦闘よりも離れていた。これは、正直タクからすればありがたいことだ。
今回の場合のような、多対一の戦闘では囲まれてしまった場合、多対一の間に圧倒的な力量差が無ければ、一は簡単に押しつぶされてしまう。
一番正しい対処法としてはこういう状況にならないことだが。今回はなってしまったのでしょうがない。
では、こういう場合どうするかだが。
答えは簡単。一対一を繰り返せばいい。
さっきの戦闘で分かったが、レベル一の俺でも装備補正と《刀》スキルで一体の緑小鬼程度なら圧倒できることが分かっている。
なら、今から俺が行う行動は一つ。
敵の分断。
(そうと決まれば———)
俺は振り返ると同時に走り出す。進行方向にあるのは生い茂る木々。一瞬後方に視線を向け、緑小鬼たちが追いかけてきていることを確認する。ありがたいことに慌てて追いかけてきてくれている。
連携も何もなく、それぞれが俺だけを見て追いかけてきていた。
さらに俺は木々を縫うように走り、自分の姿を視認しにくくする。
(…で、ここ。今!)
そして、タイミングを見計らい、一本の巨木の後ろに隠れる。すると、あら不思議、奴らは俺を見失う。
後ろからは緑小鬼たちの騒ぎ声が聞こえる。それぞれの小鬼が思い思いの鳴き声を上げていた。困惑、怒り、恐怖。
そして、小鬼たちはバラバラに俺を探し始める。
(やっぱりこいつらINTは低めだな)
待ってました、と言わんばかりに俺は再び移動を開始する。緑小鬼たちに見つからないように木々の影を利用して忍び寄る。
そして手早く一番近くにいた小鬼の背後の木の影に潜み、息を殺す。気分は暗殺者だった。
緑小鬼は俺を探し、辺りを見回す。
そして、小鬼は俺に背中を見せる。
(———。今!)
瞬間、俺は影から飛び出す。できる限り音が出ないようにした、が緑小鬼は何かを感じ取ったかのように、勢いよく振り向く。
緑小鬼の瞳が俺の姿をとらえた。
緑小鬼は慌てたように棍棒を構え、迎撃態勢に入ろうとしていた。
だが、それよりも俺の方が速かった。
腰だめから繰り出された一閃が緑小鬼の首を斬り飛ばす。赤い鮮血のようなダメージエフェクトが切断面から散り――――タクはもうその緑小鬼を見てはいなかった。
即座に次の緑小鬼めがけ疾駆する。
後方でパリンとガラスが砕けるような音が鳴る、今倒した緑小鬼の崩壊した際の効果音だ。
さっきも言ったがこの辺りの《誘いの森》にはプレイヤーが少なく静かである。
故に今の音は致命的であった。残りの緑小鬼たちが一斉にこちらに目を向ける。
即座に俺は一番近くにいた緑小鬼に斬りかかる。
ガードのつもりか棍棒を体の前に持ってくるが、既にその時には俺の刀は緑小鬼の体に深く食い込んでいた。
胴体の半ばまで達していた刀をあらん限りのSTRを活用し振りぬく。
『GUSYAA!』
小鬼の体を上半身と下半身、見事に二等分した。
(あと、三体!)
再び走り出そうとした瞬間。耳元でファンファーレのような音が鳴り響いた。
一瞬意識が緑小鬼から離れる。走り出そうとしていた俺の体が、前傾体勢のまま不自然に停止する。
そしてそれを狙うように左前方から走ってきた小鬼がショートソードを俺に向かって振り下ろした。
「ッチ!」
俺は舌打ちと同時に全力で後方に飛び退る。
再び小鬼と俺の間に距離が空く。戦闘開始時と同じように多対一の形に戻ってしまう。
(…。くそっ、ヤバいな)
だがさっきとは違い、もう恐らく分断作戦は使えないだろう。流石の緑小鬼でも、同じ手をこんな短時間で喰らうはずがないからだ。その証拠に三匹の緑小鬼たちは、お互いの間合いを守るように固まって動こうとしていない。
俺は怒りを覚えつつ、今のファンファーレ音の原因を調べる。すると、左上にある名前の横にある数字が増えていることに気付いた。
俺は怒りを忘れ、右下のログを確認する。そこには先ほどの三匹目の小鬼討伐で、プレイヤーレベルと《刀》スキルのレベルが上がったことが示されていた。
そしてもう一つ、ログにはお知らせがされていた。
それを見て俺はにやりと笑った。
例の不気味な笑顔で。
『GYAGYA⁉』
小鬼たちが何か喚いているが。今はガン無視だ。
俺は超特急でステータス欄のスキルの詳細を開く。【刀】スキルを確認し目当ての物を見つけ説明を読む。
この間僅か五秒。
俺はステータスウィンドウを閉じ、緑小鬼に向き直る。
いまだに口元が吊り上がっている所為で小鬼たちは引き気味だった。
「受けてくれますか?」
「とりあえず話を聞くだけだ」
(何もしないよりはまだマシだろうしな)
俺はとりあえずこのローブから、クエストの内容だけでも聞くことにした。
今の俺でもクリアできる内容だったら受けた方が得だし、今は少しでも金や装備、経験値を手に入れたい。
「…。あるモンスターの討伐です」
(あ、これ無理なやつかもしれない)
さっきも言ったが、今の俺は初期装備で《技能》は一つだ。
こんな舐めた装備で勝てるモンスターがいるなら、むしろ俺が教えてほしい。
「あ、大丈夫ですよ。装備はこちらで用意してあるので」
「あのさ⁉ さっきから当然のように心読むのやめてくれないかな、この世界にはプライバシーって無いの⁉」
「…。ぷらいばしー?」
本当にコイツは人の心が読めるスキルでも持ってるのか? 至極当然のように人の心を読みやがって。
あと『プライバシー』の英単語、AIの言語エンジンにインプットさせとけ運営ぃ! 海外サービスの時どうすんだよぉ!
はぁはぁ、まあ今それは置いとくとして。
装備は出る、か。
それなら今の俺には受けるメリットが十分にある。
クエストクリアできれば報酬は出るだろうし。
なら、これは俺にとってとてもおいしい話ということにる。
まだ、何を倒してこればいいか聞いてないけど。
「討伐対象は何だ?」
「それは言えません」
(…。まさかのシークレットですか)
ローブは先ほどまでとは打って変わり、申し訳なさそうな声を出す。
俺は内心舌打ちをする。
討伐対象が分からないのでは対策の仕様が無い。
おそらくここでコイツを問いただしても有用な情報は手に入らない。NPCとはそういうものだ。必要以上の仕事はしない。いや、正確には出来ない、というべきか。
となると、このクエストは一気に怪しくなる。
今まで聞いた情報を整理する。
装備は向こうが用意する。報酬もでる。つまりお金も経験値も手に入る。もしかしたら一緒に装備も手に入るかもしれない。ただ、何を倒せばいいか分からない。最悪ボスとの戦闘すらあり得る。そうなった場合、現在ソロプレイ中の俺は間違いなくやられる。
(クエストクリアの割合はよくて五割。いやもっと低いか)
断るべきだ。
心のどこかからそう聞こえた。
現在のタクは周りと比べても遅れている方だ。なら重視するのは速度と安全。
故にこのクエストを受けるとしても、まだ、その時ではない。
このゲームのデスペナルティ。つまりゲーム内で死んでしまった場合は、一時間の一部スキルの停止とステータス減少が行われる。
つまるところ運営側は『一時間街から出るな』と言いたいらしい。
このクエスト受注がいつまで続くか分からない、がここはスルー安定だった。
そう考え俺は眼の前のローブに声をかける。
「…悪いな。今回は———」
しかし、その時俺は見てしまった。
ローブの袖から少し出て震えている小さな手を。
(…。子供?)
無意識のうちに言葉が止まる。
「…。」
「…。」
一瞬の沈黙。
そして俺は再び口を開く、
「分かったよ。受ける。さっさと装備をくれ」
思考の結論とは反対の言葉を。
「———へっ?」
明らかにローブの方が驚いていた。
お前から持ち掛けてきた事だろ。何を今更遠慮してるんだか。
俺は一刻も早くこの場を離れるために、手早く装備を受け取りクエスト受注を選択。
用事は済んだとばかりにその場を後にしようとして、ローブに袖を掴まれていることに気付いた。
「本当にすいません」
僅かにフードの奥に見えた瞳は申し訳なさそうに一瞬伏せられていたが、すぐに確固たる意志を浮かべ、俺の灰色の眼を真っすぐに見つめると託すように言葉を続けた。
「本来なら、これは他人に託すべきではないことです。でも———あたっ」
ローブの言葉を遮るように、俺は頭に手刀を落とした。勿論手加減して。
「そういうのは全部終わってからでいいだろ。俺はまだお前に何もしてない。だからお前に礼を言われる筋合いはない」
俺はそれだけ言い残すとローブに背を向け、広場を出る。再びのノイズ音と共に俺の周りに人々が現れる。
俺はもう一度振り返り噴水の淵を確認する。既にそこに見知ったローブは見当たらず、NPCの兄妹が仲良く焼き菓子を分け合うという温かい光景だけがあった。
ピコン。
視界左下のログが更新される。
『異常依頼【死者への安らぎ】』
【受注を確認しました】
■■■
街の外には森が広がっていた。
「ほえぇ~」
聳え立つ木々は俺の身長の五倍程高く、幹は俺の胴体の六倍は太かった。昔一度富士の樹海に行ったことがあるが、今目の前に映る森は俺が知っているどの森よりも鬱蒼とし、大自然を体現していた。
そんなことをのろのろと考えつつ、俺は森の奥へ奥へと散策。もとい探索していた。
初心者が最初に戦闘することを仮定して設計されたであろう森の中を、タクはズカズカと進んでいく。タクの現在のレベルはあいかわらず『一』である。
いくら初心者御用達のエリアであろうと、いきなり深い場所に行くのは少々危険である。
勿論タクはそれを知っていた。が、タクにはそうしなければならない理由があった。
というのもこの森———《誘いの森》の浅い部分には、俺と同じ初期のプレイヤーが多すぎて《MOB》が沸いてもすぐに狩り取られるてしまうのだ。そのためとてもソロでレベル上げができる環境ではなかった。
故にタクはどんどん森の奥へと踏み込んでいった。奥の方が強いモンスターも沸きやすいだろうし。
タクは攻略を行う上で、安全をはかりにかけるのを辞め、ただひたすらに強くなるための速さだけを考えた。
今のタクの装備は先程までの初期装備から変わっており、《上半身2》《下半身》《足》の装備を依頼主のローブから受け取り装備していた。
【《薄闇》シリーズ・上2】
DEF+5 STR+3
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のジャケット。
【《薄闇》シリーズ・下】
DEF+5 AGI+2
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のズボン。
【《薄闇》シリーズ・足】
DEF+5 AGI+3
【黒狼】の毛皮から作られた装備。
濡羽色のハーフブーツ。
初期装備の防御力に比べ、倍以上にDEFが高く、おまけにステータスに補正もついている。想像以上の装備を手に入れてしまった。
思わぬ収穫に緩む頬を引き締めつつ森の中を探索していると。
「…。ん?」
そこで俺は前方の木下が仄かに発光していることに気付く。
俺は発光元に駆け寄り、タップする。
すると発光元が爆ぜるように消え去り、目の前にメニュー欄が表示された。
【ククル草】
下級のポーションを作る際に使用するもの。 食べると少しHPが回復する。
へぇ、なるほど。こうやって素材集めをするのか。確かにこうやって光ってれば分かりやすいな。
タクはゲームシステムに感心しつつ、辺りに存在する、発光元を手当たりしだいに乱獲していく。
雑草が生い茂った地面をザクザクと踏みしめ、森の中を進んでいく。森の中には、タクの足音だけが響いていた。
『KIISYAAAAAAAAA!』
すると、背後から金切り声が聞こえた。
振り返るとそこには腰布を巻いて樹の棍棒を持った何かが立っていた。緑色の肌をした子供位の身長の———ん? いや、コレ子供か?
…いや、違いました。
緑色の子供の頭上に表示された赤い逆三角錐のアイコン。
それは敵性MOBの証。《モンスター》やプレイヤーに危害を加えるものに表示されるアイコンだった。
そして続けてその上に名前が表示された。
【緑小鬼】と。
つまり、この緑色の肌をして醜悪な顔した子供みたいな化け物はモンスターということか。
緑小鬼と言ったら、ファンタジー皆勤賞のモンスター。しかし、リアル緑小鬼は俺も初見なので、警戒し即座に距離を取る。
距離を取り改めてタクは緑小鬼を確認する。確かによく見ると———いや、よく見なくても中々に気持ち悪いな…。むき出しの歯の間から零れ落ちる涎とか無駄にリアルだし。
緑小鬼との距離は五メートル。
三歩で詰められる距離、かな。
いつでも切り捨てられるように刀を抜き、構える。
瞬間。緑小鬼はその小さな体躯からは想像できない速さで突撃を敢行する。右腕に握られた棍棒を振り上げての突進。速度は中々だが狙いは直線的。
俺は僅かに体を右にずらすだけで緑小鬼の棍棒を回避する。
体の横を棍棒が割と凄い速度で通り過ぎていく。確実に頭を叩き潰すつもりだったであろう一撃。
「おっと」
タクの額に冷や汗が浮かぶ。
もしかしたら、ゴブって割とSTRが高めなのか。
『GYAA⁉』
避けられたことに対してか、緑小鬼の鳴き声に疑問の色が混ざっている気がした。生憎と【緑小鬼語】は分からないため、俺の勝手な予想だが。
あ、でも【緑小鬼語】とか《技能》にありそうだな。
緑小鬼は攻撃後の硬直から復帰すると、即座に地面に振り下ろした棍棒を左方向———俺のわき腹辺りを狙って振りぬく。
『GUU⁉』
だが、その攻撃もタクに当たることはなく虚しく空を切った。再び驚愕の鳴き声を上げる緑小鬼。
しかし、それは己の攻撃が外れたからではなかった。
そして今回の驚いた理由は俺でもわかった。とても簡単な理由だ。
(まあ、戦闘中に敵の姿を見失ったら、そりゃあ慌てるよな)
タクは緑小鬼の背後で刀を軽く振るう。それは緑小鬼を斬るための一閃ではなかった。
文字通りタクの刀は空を斬る。
刀に張り付いていた赤い光粒が、刀の軌跡に合わせて地面に叩きつけられ砕け散った。
ボトッ。少し遅れて静かな森に何かが落ちる音がする。
何度目か忘れたが、もう一度説明しよう。ここはそこそこ森の奥なので、少しの物音でも耳に届く。人間は勿論、緑小鬼にだって聞こえる。
(どうせ緑小鬼も俺が森を歩く音を聞いて、近づいてきたのだろう)
だから、今の音も聞こえただろう。
自分の頭が落ちる音が。
パリン。今度はガラスが割れるような、甲高い破壊音が森に響き渡る。緑小鬼の体が光になって砕け散る音だった。
モンスターが消えるところは初めて見たが、なかなか綺麗なものだな。
それがタクが最初に浮かべた感想だった。人工的とはいえ生き物を殺めた、だがタクはそれを気にすることは無かった。別にタクは『殺すの大好きっ子』ではない。
ただ、俺を殺しに来たんだから、殺されても文句ないよねぇ。という理論の持ち主であるだけ。
そう、タクは割り切りのいい子なだけであった。
「———ほら、お前らもさっさと出て来いよ」
タクは近くの草むらに向けて声をかけた。
草むらの高さは五十センチ。子供位のサイズの生き物が屈めば、十分隠れられる高さだった。
『GYURUU…』
わずかに草むらが揺れ、そこから五体の緑小鬼が現れた。三体はさっきの緑小鬼と同じく棍棒だが、残りの二匹の緑小鬼はショートソードを装備していた。
おそらくは今の緑小鬼の仲間だろう。あの緑小鬼と戦い始めた最初からこいつらはあの草むらに潜伏していたのは分かっていた。
多分さっき倒したのは斥候。こいつらが本隊といったところか。
だが、仲間が殺されても出てこないのは予想外だったが。
もしかしたら本当は他人、いや他ゴブだったか?
(まあ、そんなことはどうでもいいか)
そう、タクからしたら仲間かどうかは些細なことであった。何故ならタクからすれば『経験値』と『金』が向こうから寄って来てくれたようなものだから。
…もう一度言っておこう。
タクはサイコではない。
効率重視のプレイヤーはみんなこんな感じである。
緑小鬼五匹とタクの距離は七メートル。先ほどの戦闘よりも離れていた。これは、正直タクからすればありがたいことだ。
今回の場合のような、多対一の戦闘では囲まれてしまった場合、多対一の間に圧倒的な力量差が無ければ、一は簡単に押しつぶされてしまう。
一番正しい対処法としてはこういう状況にならないことだが。今回はなってしまったのでしょうがない。
では、こういう場合どうするかだが。
答えは簡単。一対一を繰り返せばいい。
さっきの戦闘で分かったが、レベル一の俺でも装備補正と《刀》スキルで一体の緑小鬼程度なら圧倒できることが分かっている。
なら、今から俺が行う行動は一つ。
敵の分断。
(そうと決まれば———)
俺は振り返ると同時に走り出す。進行方向にあるのは生い茂る木々。一瞬後方に視線を向け、緑小鬼たちが追いかけてきていることを確認する。ありがたいことに慌てて追いかけてきてくれている。
連携も何もなく、それぞれが俺だけを見て追いかけてきていた。
さらに俺は木々を縫うように走り、自分の姿を視認しにくくする。
(…で、ここ。今!)
そして、タイミングを見計らい、一本の巨木の後ろに隠れる。すると、あら不思議、奴らは俺を見失う。
後ろからは緑小鬼たちの騒ぎ声が聞こえる。それぞれの小鬼が思い思いの鳴き声を上げていた。困惑、怒り、恐怖。
そして、小鬼たちはバラバラに俺を探し始める。
(やっぱりこいつらINTは低めだな)
待ってました、と言わんばかりに俺は再び移動を開始する。緑小鬼たちに見つからないように木々の影を利用して忍び寄る。
そして手早く一番近くにいた小鬼の背後の木の影に潜み、息を殺す。気分は暗殺者だった。
緑小鬼は俺を探し、辺りを見回す。
そして、小鬼は俺に背中を見せる。
(———。今!)
瞬間、俺は影から飛び出す。できる限り音が出ないようにした、が緑小鬼は何かを感じ取ったかのように、勢いよく振り向く。
緑小鬼の瞳が俺の姿をとらえた。
緑小鬼は慌てたように棍棒を構え、迎撃態勢に入ろうとしていた。
だが、それよりも俺の方が速かった。
腰だめから繰り出された一閃が緑小鬼の首を斬り飛ばす。赤い鮮血のようなダメージエフェクトが切断面から散り――――タクはもうその緑小鬼を見てはいなかった。
即座に次の緑小鬼めがけ疾駆する。
後方でパリンとガラスが砕けるような音が鳴る、今倒した緑小鬼の崩壊した際の効果音だ。
さっきも言ったがこの辺りの《誘いの森》にはプレイヤーが少なく静かである。
故に今の音は致命的であった。残りの緑小鬼たちが一斉にこちらに目を向ける。
即座に俺は一番近くにいた緑小鬼に斬りかかる。
ガードのつもりか棍棒を体の前に持ってくるが、既にその時には俺の刀は緑小鬼の体に深く食い込んでいた。
胴体の半ばまで達していた刀をあらん限りのSTRを活用し振りぬく。
『GUSYAA!』
小鬼の体を上半身と下半身、見事に二等分した。
(あと、三体!)
再び走り出そうとした瞬間。耳元でファンファーレのような音が鳴り響いた。
一瞬意識が緑小鬼から離れる。走り出そうとしていた俺の体が、前傾体勢のまま不自然に停止する。
そしてそれを狙うように左前方から走ってきた小鬼がショートソードを俺に向かって振り下ろした。
「ッチ!」
俺は舌打ちと同時に全力で後方に飛び退る。
再び小鬼と俺の間に距離が空く。戦闘開始時と同じように多対一の形に戻ってしまう。
(…。くそっ、ヤバいな)
だがさっきとは違い、もう恐らく分断作戦は使えないだろう。流石の緑小鬼でも、同じ手をこんな短時間で喰らうはずがないからだ。その証拠に三匹の緑小鬼たちは、お互いの間合いを守るように固まって動こうとしていない。
俺は怒りを覚えつつ、今のファンファーレ音の原因を調べる。すると、左上にある名前の横にある数字が増えていることに気付いた。
俺は怒りを忘れ、右下のログを確認する。そこには先ほどの三匹目の小鬼討伐で、プレイヤーレベルと《刀》スキルのレベルが上がったことが示されていた。
そしてもう一つ、ログにはお知らせがされていた。
それを見て俺はにやりと笑った。
例の不気味な笑顔で。
『GYAGYA⁉』
小鬼たちが何か喚いているが。今はガン無視だ。
俺は超特急でステータス欄のスキルの詳細を開く。【刀】スキルを確認し目当ての物を見つけ説明を読む。
この間僅か五秒。
俺はステータスウィンドウを閉じ、緑小鬼に向き直る。
いまだに口元が吊り上がっている所為で小鬼たちは引き気味だった。
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