イノセントキラー

ゴンザレス

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「竜ヶ崎さんに接触を図った時、既に来客が挨拶をした後だったみたいだったんですよ。それで、どこの学校かはわかりませんでしたが、さっき岡田らの学校だって知って辻褄が合うんですよ」

 どこまでも見透かされてる気分になり、見開いた瞳孔で桜木を睨む。それを桜木は軽くあしらい、ノーダメージで続ける。

「三浦先輩を別の場所まで退避させてるのは珍しいと思って。様子を窺ってたら、ああ、なるほどって。余裕がないから逃したんじゃなくて、三浦先輩に聞かれたくないことがあるから逃したんだなって」

 「全員をフルボッコにした後、三浦先輩の方が……ってくだりを聞きまして」桜木はこの時、初めから事の顛末を静観していたとしれっと暴露する。

「三浦先輩にはなるべく不安を感じさせないように、そうやって裏で裏番が抑止力となるように手を打った。これは守るための手段で、守るための強さじゃないんですか」

 「実際、根回しで事前に危険を回避するやり方は、三浦先輩を守れていたのでは? ——昨日までは」と刺々しくいう桜木。

  昨日の騒ぎを引き合いに出されては、正直に吐くしかなかった。

「……半分正解」
「えー。じゃあ完全解を教えて下さいよ」
「そもそも俺はイイ子じゃねぇ。だから、守るための手段なんて大仰な事じゃねぇんだよ」

 竜ヶ崎は瞳孔の開きが落ち着いた切れ長の眼で桜木を刺す。そして、自重気味に吐露する。「俺はただ、ゆづを誑かす奴が気に入らねぇから、噂を吹聴した。——ゆづに近づく人間を減らすことがメインで、抑止力なんてもんはおまけだ。それに、ゆづを誑かした女と岡田たちが同じ学校だったことを知ったのは、つい昨日だ」。

「わぁ、清々しいほどにひっそり執着やってたんすねー」
「……お前に言われるとすげぇムカつくわ」

(……コイツさっきから、しれっとストーカー発言してんの気づいてんのか?)

「ま、だから三浦先輩を誑かした女に仕組まれてたって気付かなかったというのも頷けるな」

 いちいち嫌味に聞こえる竜ヶ崎の耳は、相当桜木を嫌っているらしい。「ゆづを誑かしたのは女なんだけど、お前だったら女は庇うか?」と試すようなことを言ってみる。

 暫時の沈黙を作った後、桜木はいった。「彼女の目的によります」。

「それは女がゆづを求めていたら、話は変わってくるとでも?」

 その問いに、桜木は迷わず肯定した。

「三浦先輩も同じ気持ちなら、ですが」
「ゆづがそうであっても、俺は女を許さねぇ」
「——四肢が千切れても阻止します」

 桜木は頑として弓月の味方でいるらしい。それになぜか安心して、竜ヶ崎は「是非そうしてくれ」と安堵の笑みを漏らした。
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