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2章
89——黒田——
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「ここだよ」と暖簾を先に潜るディアゴ。その後ろを初見のようについていく黒田。
「お、久しいな! ディー!!」
「大将! 今日は別の友人連れてきたよ!」
「おー! そうか――て、黒田社長じゃないか!!」
「ご無沙汰してます、大将」会釈しながらディアゴの座るカウンター席の隣に腰を下ろす。
「え、知り合いなの?!」
(社長であることは一応廣田しか知らないことなんだけどリアクションない。小さな雑誌に載ったくらいのものを確認しているのか? いや、ないな)
「知り合いも何も、うちに一つだけ、上等な酒を置いてるだろ? それを斡旋して注文できるようにしてくれたのがこの社長さんだよ!! おかげで、常連が増えてより活気がついたってもんよ!」
腹が支えて白Tシャツに横皺を入れながら頭を下げる。「本当にありがとうございました!」。
「飛露喜さんも常連だったんだー!」
「起業する時は何かとお金が必要だったし、此処にはすごくお世話になったんだ。居酒屋はやすい、はやい、うまい、だろ」
「ディーが友達にボトルキープしてあげたヤツ、あれは結構レアもんだからよ、こんなところにまで卸してくれるわけなかったんだから、お前も感謝しとけよー」
「ボトルキープ・・・・・・あ、えっと、大将」
「先につまみをいくつか貰っちゃおうかな!」いそいそと始めようとする。
「じゃあ、森伊蔵を貰っちゃおうかな」
「ありがとうございます! じゃあ、ボトルキープもしとやすか!」
「ええ、じゃあそうしようかな」
「名前は――」
「ヒロキで」黒田はディアゴの表情を横目で注視しながらいった。
「ん、そういやディーが連れてきたちっさい友達も同じ名前じゃなかったか?」
そう言うと、大将は奥へ消えていく。
「ディアゴ・・・・・・ヒロキさんを知ってるの?」
「ヒロキ? 知ってるけど、黒田のいうヒロキさんと同じ人物かは分かんないなー」
「俺のいうヒロキさんも小さい人なんだけど。――ついでに言うなら、先月に明らかにサイズの違う服を着て帰った日があったからさぁ。俺、すごく叱っちゃったんだよね」
「ほら、このボトルにヒロキって書いてあんだろ?」ボトルを片手にカウンターに戻ってくる。
「・・・・・・」
「本当ですね。実は、そのボトルの主と俺も知り合いでして」
「そうかそうか!! 同名同士で友人たぁ、聞こえが素敵だな!」
「俺もそう思います」
「黒田・・・・・・お前、ヒロキと連絡が取れなくなったのって、もしかして、お前が」正面を向いたまま腕組みをした。
(ヒロキ? ラベル見ても苛立っていたのに)
革靴の踵で自身と同等の大きさのある足を踏む。
「人のもんに手を出して、剰え着替えさせて帰らせるなんて、挑発的なことしてくれたな」じりじりと捻らせて圧を加え続ける。
「――大将、その主と一緒に暮らしてるんで、そのボトルごと購入して持ち帰ってもいいですか? 後で穴場として連れてこようと思ったけど、ディアゴに先を越されてしまったようなので」
「ディーが前払いしてるから、お代は要らねぇよ」
「いえ、追加でもう一本。キープとは他に。流石に貢献させてください。お世話になった恩を返したい」
それに気を良くした大将は、黒田がてきとうに頼んだ品を張り切って調理し始める。
2人はお互いに視線をあわせず、無言で酒を流し込む。
「お、久しいな! ディー!!」
「大将! 今日は別の友人連れてきたよ!」
「おー! そうか――て、黒田社長じゃないか!!」
「ご無沙汰してます、大将」会釈しながらディアゴの座るカウンター席の隣に腰を下ろす。
「え、知り合いなの?!」
(社長であることは一応廣田しか知らないことなんだけどリアクションない。小さな雑誌に載ったくらいのものを確認しているのか? いや、ないな)
「知り合いも何も、うちに一つだけ、上等な酒を置いてるだろ? それを斡旋して注文できるようにしてくれたのがこの社長さんだよ!! おかげで、常連が増えてより活気がついたってもんよ!」
腹が支えて白Tシャツに横皺を入れながら頭を下げる。「本当にありがとうございました!」。
「飛露喜さんも常連だったんだー!」
「起業する時は何かとお金が必要だったし、此処にはすごくお世話になったんだ。居酒屋はやすい、はやい、うまい、だろ」
「ディーが友達にボトルキープしてあげたヤツ、あれは結構レアもんだからよ、こんなところにまで卸してくれるわけなかったんだから、お前も感謝しとけよー」
「ボトルキープ・・・・・・あ、えっと、大将」
「先につまみをいくつか貰っちゃおうかな!」いそいそと始めようとする。
「じゃあ、森伊蔵を貰っちゃおうかな」
「ありがとうございます! じゃあ、ボトルキープもしとやすか!」
「ええ、じゃあそうしようかな」
「名前は――」
「ヒロキで」黒田はディアゴの表情を横目で注視しながらいった。
「ん、そういやディーが連れてきたちっさい友達も同じ名前じゃなかったか?」
そう言うと、大将は奥へ消えていく。
「ディアゴ・・・・・・ヒロキさんを知ってるの?」
「ヒロキ? 知ってるけど、黒田のいうヒロキさんと同じ人物かは分かんないなー」
「俺のいうヒロキさんも小さい人なんだけど。――ついでに言うなら、先月に明らかにサイズの違う服を着て帰った日があったからさぁ。俺、すごく叱っちゃったんだよね」
「ほら、このボトルにヒロキって書いてあんだろ?」ボトルを片手にカウンターに戻ってくる。
「・・・・・・」
「本当ですね。実は、そのボトルの主と俺も知り合いでして」
「そうかそうか!! 同名同士で友人たぁ、聞こえが素敵だな!」
「俺もそう思います」
「黒田・・・・・・お前、ヒロキと連絡が取れなくなったのって、もしかして、お前が」正面を向いたまま腕組みをした。
(ヒロキ? ラベル見ても苛立っていたのに)
革靴の踵で自身と同等の大きさのある足を踏む。
「人のもんに手を出して、剰え着替えさせて帰らせるなんて、挑発的なことしてくれたな」じりじりと捻らせて圧を加え続ける。
「――大将、その主と一緒に暮らしてるんで、そのボトルごと購入して持ち帰ってもいいですか? 後で穴場として連れてこようと思ったけど、ディアゴに先を越されてしまったようなので」
「ディーが前払いしてるから、お代は要らねぇよ」
「いえ、追加でもう一本。キープとは他に。流石に貢献させてください。お世話になった恩を返したい」
それに気を良くした大将は、黒田がてきとうに頼んだ品を張り切って調理し始める。
2人はお互いに視線をあわせず、無言で酒を流し込む。
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