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2章

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 連絡先を交換してこの場を離れる。
 
(黒田君、きっと僕のスマホをいじったりなんかしてないんだろうな・・・・・・僕の連絡先がだんだん増えていっても、自分の人脈で連絡先がパンパンで、僕の名前すら下の方に追いやられてるんだ) 

 スマホをポケットにしまって、次の授業に臨んだ。

「ヒロキ!!」

 就業終わりの田淵と待ち合わせていたディアゴが満面の笑みで声をかける。
 
(あ、この雰囲気、甘い時の黒田君と似てる)

 「早速今から俺が趣味で通ってるヒップホップのダンス教室に行こう! 飛び入りでもいいらしいよ」手を引くディアゴにパーソナルスペースを土足で踏み込まれる。だが、嫌ではない。

「ぼ、僕、本当に踊れないんだって!!」
「大丈夫! 今日は見学でいいし!」
「そ、それなら・・・・・・いいんだけど」

 「あ、一応帰りが遅くなること、同居してる人に連絡するね」スマホを取り出して、フリック入力で足早に連絡を済ませる。

「ヒロキ、家族いるの?」
「家族と住んでるわけじゃないけど・・・・・・恋人と住んでるよ」
「・・・・・・へぇ、恋人いたんだ!」
「あ、今失礼なこと考えたでしょ」
「どういうこと?」

 おちょくるディアゴに「中には物好きな人だっていてくれるんだから!! 十分幸せです!!」言い返した。

 ディアゴはいう。「でも――ストレスを、元気ないのを何も知らない恋人だったなら・・・・・・」。

「ん、何? 聞こえなかった」
「何でもないよ!! さ、行こ」
「ちょ、ディアゴ!! ちゃんと一緒に行くから、もう手は・・・・・・」
「・・・・・・」

 「そう? じゃ、離してあげるよ」降参ポーズをとって、繋がれた手を離した。

「男同士なら別に関係ないじゃん、て言おうと思ったけど、世の中それだけじゃ注意不足だから、ヒロキのそれは間違ってないよ」

 肩が跳ねた。

「ん? どうかした?」
「あ、いや――恋人が男女構わずヤキモチやく子だからさ」
「そうなんだ。想われてるんだね」

 いやに真顔でいうディアゴに、通奏低音がスタッカーティッシモのような短くて強い心音が体中に響き渡る。
 
(今更・・・・・・男同士とかにビビって何がしたいんだよ、僕は。外国じゃ日本よりもそういった理解があるのに。僕がディアゴを友人だと認識したから?)

 その状態で教室に着き、体内で作り出されるベースに乗って、一種の興奮状態に陥ったままディアゴに誘われる。
 速いテンポで流れる心音につられ、ぎこちないステップを刻みながら踊った。
 何かをして気を紛らわせたかった。

「ヒロキ、すごい下手くそ!!」

 屈託なく笑い、泣いているディアゴに既視感を覚えて――やはり、黒田と似ているからこそ、こんなにも打ち解けるのが早いのだと、痛感させられた。
 心の機微に気付いて、どうにかしようとしてくれる。

(僕が黒田君に言い出したことだけど、ここまで疎遠になるなんて、覚悟が足りなかったのは僕の方だよ――) 

 終わりに水を飲んで、一息つくといやな心音は鳴り止んでいる。

「・・・・・・ヒロキ、スッキリしなかったみたいだね」
「あ、ご、ごめんね。慣れないことして疲れちゃったの方が大きいだけだから」
「さみしい?」
「へ?」
「――俺と、みんなと一緒にいても直んないってさ、特定の人じゃないと埋められない何かがあるんでしょ? 恋人、最近うまくいってないの?」

 「学校では社交辞令? っていうのかな、当たり障りなく話してたけど、本当のところ、どうなの」汗で金髪がしっとり色濃くなったディアゴはいう。

「これからご飯とお酒と飲みながら、ゆっくり話そうよ」

 スマホを覗いて、「楽しんでおいで」と返信が来ていた。

「・・・・・・そうしようかな」

 返信に既読だけをつけると教室を後にした。
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