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剛は足を組み直して、タバコを蒸し始める。
「……それに、知識は武器になります。下手な鉄砲も数打てば何とやらって、あれ、下手でも頭使えば弾数減らせるじゃんって話ですよねー。僕はそういう頭が欲しい、それだけなんです。獅子王組の若頭なら、分かってくれますよね? 現にウチのシマで頻繁に遭遇して、多少は頭を使って此処に来られているでしょうし? まさか連絡を取り合って、仁作と待ち合わせしているなんて有り得ないでしょう?」
「ホント、ここら地域の人らも怖がるんで、管轄外の極道もんは来ないでくださいよ」と鴬は見下ろされる事を甘受して、尚も下から見上げた。わかり切った虚勢であっても、仁作を離さんとする輩に対しては、断固拒否する姿勢を取り続けなければならない。
「……ガキのくせして、調子ぶっこいとるなぁ」
「仮にも本部長に任命されたんですから、それだけの能力と頭を買われたって事ですかね?」
互いに鋭利な視線で交戦的に睨み合う。周りのキャバ嬢も火花を散らされて、完全に萎縮してしまっている。
「剛さん、アンタの目つきは人殺しの目つきしとるわ。お姉さんたちのためにも凶悪なその眼を取り換えてくださいよ」と鴬はいう。
そこでトイレから戻ってきた仁作が、定位置に着こうとして立ち止まる。目線の先には、仁作が座っていた場所に剛が座っている。
「……お前ら、俺がいないところで仲良くするよな」
「それはない」阿吽の呼吸で返事を繰り出した2人に、仁作は疑いの目を晴らすことはなかった。
「……あーあー、これ以上コイツと仲良ぅ思われんのは嫌やし、帰るわ! 仁作、今度ここでキープした酒一緒に飲もうな」
「ああ」
「それと」
鴬の胸倉を掴み引き寄せ「お前の目論みが俺ら獅子王組なら受けて立つが、仁作の面潰すような裏切りしてみろ? ——殺すぞ。いや、どちらにしても、殺すわ」とガン飛ばした後に口角をくい、とあげた。
それから「ほいじゃ」掌をひらひらとさせて去っていく。
仁作には聞こえなかったのかもしれないが、2人がピリついた空気だったことは察してくれたらしい。
「——喧嘩なら、俺に相談しろ。お前と剛じゃ分が悪過ぎるだろ」
「……う、うん。ありがとう、すごく、怖かったよ……」
唖然としたことを悟られまいと、仁作にしんなりひっついて、顔を隠した。ついでに、キャバ嬢も呆気にとられているだろうが、鴬が八方美人を存分に使っていたところで社交辞令や忖度といった言葉が鴬を守る。
「ったく、剛も7個も下の子に兄弟喧嘩のような目を向けてんだか」
「……」
やはり、ここに居る限り、兄弟の1人としか捉えてもらえないのだ。仁作の胸に隠した素顔は、徐々に陰りに支配されていく。暗澹たる空模様のように。
「……それに、知識は武器になります。下手な鉄砲も数打てば何とやらって、あれ、下手でも頭使えば弾数減らせるじゃんって話ですよねー。僕はそういう頭が欲しい、それだけなんです。獅子王組の若頭なら、分かってくれますよね? 現にウチのシマで頻繁に遭遇して、多少は頭を使って此処に来られているでしょうし? まさか連絡を取り合って、仁作と待ち合わせしているなんて有り得ないでしょう?」
「ホント、ここら地域の人らも怖がるんで、管轄外の極道もんは来ないでくださいよ」と鴬は見下ろされる事を甘受して、尚も下から見上げた。わかり切った虚勢であっても、仁作を離さんとする輩に対しては、断固拒否する姿勢を取り続けなければならない。
「……ガキのくせして、調子ぶっこいとるなぁ」
「仮にも本部長に任命されたんですから、それだけの能力と頭を買われたって事ですかね?」
互いに鋭利な視線で交戦的に睨み合う。周りのキャバ嬢も火花を散らされて、完全に萎縮してしまっている。
「剛さん、アンタの目つきは人殺しの目つきしとるわ。お姉さんたちのためにも凶悪なその眼を取り換えてくださいよ」と鴬はいう。
そこでトイレから戻ってきた仁作が、定位置に着こうとして立ち止まる。目線の先には、仁作が座っていた場所に剛が座っている。
「……お前ら、俺がいないところで仲良くするよな」
「それはない」阿吽の呼吸で返事を繰り出した2人に、仁作は疑いの目を晴らすことはなかった。
「……あーあー、これ以上コイツと仲良ぅ思われんのは嫌やし、帰るわ! 仁作、今度ここでキープした酒一緒に飲もうな」
「ああ」
「それと」
鴬の胸倉を掴み引き寄せ「お前の目論みが俺ら獅子王組なら受けて立つが、仁作の面潰すような裏切りしてみろ? ——殺すぞ。いや、どちらにしても、殺すわ」とガン飛ばした後に口角をくい、とあげた。
それから「ほいじゃ」掌をひらひらとさせて去っていく。
仁作には聞こえなかったのかもしれないが、2人がピリついた空気だったことは察してくれたらしい。
「——喧嘩なら、俺に相談しろ。お前と剛じゃ分が悪過ぎるだろ」
「……う、うん。ありがとう、すごく、怖かったよ……」
唖然としたことを悟られまいと、仁作にしんなりひっついて、顔を隠した。ついでに、キャバ嬢も呆気にとられているだろうが、鴬が八方美人を存分に使っていたところで社交辞令や忖度といった言葉が鴬を守る。
「ったく、剛も7個も下の子に兄弟喧嘩のような目を向けてんだか」
「……」
やはり、ここに居る限り、兄弟の1人としか捉えてもらえないのだ。仁作の胸に隠した素顔は、徐々に陰りに支配されていく。暗澹たる空模様のように。
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