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1章
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「正直、生徒会に内通者がいると見て、明日から監視することになってる」
「内通者、ね。まぁ、早いとこ落ち着かせた方が良いよな。委員会だっていつまでも我慢できるほど耐え性な奴なんかいやしねぇんだ」
「・・・・・・よく知ってるね」
「お前、生徒会の仕事のメインは委員会からの報告と提案だろ。しかも何でも思い通りに動いてほしい委員会ほど頻繁に提出してくるだろ」
「・・・・・・それだけ生徒の声を汲み取ってきてくれてるって思って、僕は掛け合ってはいるんだけどね。こういう形で行き違いが発生するとなると、委員会の長たちも信頼を寄せてくれなくなるな」
「バカいってんじゃねぇよ。内通者がいるから簡単に行き違いが発生させられたわけだぜ。お前、足元すくわれかけてたんだぞ」
「・・・・・・大倉先輩にも強制補習で不安を煽る結果となってしまったし。柳瀬の言う通りかも。最近浮かれてるのかも」一条は目の前に座る小さくも存在の大きい柳瀬の眼を射るようにみた。
「浮かれることでもあったのか」
「・・・・・・何でもない!!」
早朝に目が覚めたのは、柳瀬だった。時間的には登校するには早すぎる。シングルベッドで身を寄せ合い寝る関係性が、ウリ以上の何かであることに目を瞑ってふと気になるキャビネットに手をかけた。
1カートンまとめて買ったように、何箱も乱雑に入ったタバコがある。「真性の不良はどっちだよ・・・・・・」。
寝息を立てる一条の頭をガシガシと撫でた後、起き上がってキッチンへ向かった。
「料理をよくやるやつのキッチンは聖域ってもいうし、変に立ち入るの嫌かもしれないけど――ま、いっか」一条から借りたスウェットの袖を捲くりあげた。
ぱち。まどろむ過程なしに目が覚めた。いやにはじめから視界は明瞭である。
空いた隣を手探りで柳瀬を探してみる。けれど、シーツが冷たい。
朝帰りをされたのだと、落胆して上体を起こした。
「お、起きたか。朝飯、簡単だけど作っといたから食え」一段落して背伸びした柳瀬がいった。
「僕のために、作ってくれたの?」
「あ? 何いってんだ。暇だったからキッチン使うっていう嫌がらせをしてあげたんだよ」
「あー、よく使う人が拘り持つやつね! 僕、柳瀬ならウェルカムだった! なんとも思わない」
「うざいな」
先に椅子に座り一条に「早く座れ」と促す。
「卵焼き・・・・・・綺麗だね」
「それだけはなんか得意なんだよ」
「実は器用キャラ?」
「んだそれ」
湯気がのぼるまま、つやぴかの卵焼きを箸で割って口内へいれた。ほろ、とくずれ出汁の風味が口いっぱいに広がる。「嫁においで」。
「なんで俺が嫁なんだ。お前がこい――! やっぱ今のナシ」
「っ!! それはずるい!! 生徒会は多分佳境に差し掛かってるんだから、こんな時にそんな事言われたら飛びつきたくなるでしょ!」
咀嚼を止めない柳瀬は、静かに笑って「全て終わったら、お前に全部話すよ・・・・・・話したい」落ち着き払った態度でいう。
それを聞いて、今度はほぐしたサンマの身が喉につっかえて、何度もむせた。二度見したような感覚でむせるので、感情が焦りと驚きと嬉しさで混同する。
「内通者、ね。まぁ、早いとこ落ち着かせた方が良いよな。委員会だっていつまでも我慢できるほど耐え性な奴なんかいやしねぇんだ」
「・・・・・・よく知ってるね」
「お前、生徒会の仕事のメインは委員会からの報告と提案だろ。しかも何でも思い通りに動いてほしい委員会ほど頻繁に提出してくるだろ」
「・・・・・・それだけ生徒の声を汲み取ってきてくれてるって思って、僕は掛け合ってはいるんだけどね。こういう形で行き違いが発生するとなると、委員会の長たちも信頼を寄せてくれなくなるな」
「バカいってんじゃねぇよ。内通者がいるから簡単に行き違いが発生させられたわけだぜ。お前、足元すくわれかけてたんだぞ」
「・・・・・・大倉先輩にも強制補習で不安を煽る結果となってしまったし。柳瀬の言う通りかも。最近浮かれてるのかも」一条は目の前に座る小さくも存在の大きい柳瀬の眼を射るようにみた。
「浮かれることでもあったのか」
「・・・・・・何でもない!!」
早朝に目が覚めたのは、柳瀬だった。時間的には登校するには早すぎる。シングルベッドで身を寄せ合い寝る関係性が、ウリ以上の何かであることに目を瞑ってふと気になるキャビネットに手をかけた。
1カートンまとめて買ったように、何箱も乱雑に入ったタバコがある。「真性の不良はどっちだよ・・・・・・」。
寝息を立てる一条の頭をガシガシと撫でた後、起き上がってキッチンへ向かった。
「料理をよくやるやつのキッチンは聖域ってもいうし、変に立ち入るの嫌かもしれないけど――ま、いっか」一条から借りたスウェットの袖を捲くりあげた。
ぱち。まどろむ過程なしに目が覚めた。いやにはじめから視界は明瞭である。
空いた隣を手探りで柳瀬を探してみる。けれど、シーツが冷たい。
朝帰りをされたのだと、落胆して上体を起こした。
「お、起きたか。朝飯、簡単だけど作っといたから食え」一段落して背伸びした柳瀬がいった。
「僕のために、作ってくれたの?」
「あ? 何いってんだ。暇だったからキッチン使うっていう嫌がらせをしてあげたんだよ」
「あー、よく使う人が拘り持つやつね! 僕、柳瀬ならウェルカムだった! なんとも思わない」
「うざいな」
先に椅子に座り一条に「早く座れ」と促す。
「卵焼き・・・・・・綺麗だね」
「それだけはなんか得意なんだよ」
「実は器用キャラ?」
「んだそれ」
湯気がのぼるまま、つやぴかの卵焼きを箸で割って口内へいれた。ほろ、とくずれ出汁の風味が口いっぱいに広がる。「嫁においで」。
「なんで俺が嫁なんだ。お前がこい――! やっぱ今のナシ」
「っ!! それはずるい!! 生徒会は多分佳境に差し掛かってるんだから、こんな時にそんな事言われたら飛びつきたくなるでしょ!」
咀嚼を止めない柳瀬は、静かに笑って「全て終わったら、お前に全部話すよ・・・・・・話したい」落ち着き払った態度でいう。
それを聞いて、今度はほぐしたサンマの身が喉につっかえて、何度もむせた。二度見したような感覚でむせるので、感情が焦りと驚きと嬉しさで混同する。
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