心、買います

ゴンザレス

文字の大きさ
上 下
26 / 32
1章

1-26

しおりを挟む
 それにしても大倉へのフォローはどうすべきだろうか。その前にこのどでかく貼られた成績表をどうにしかしたい。

「んー・・・・・・」
「あ、一条」

 「もしかして、会長なのにHRからサボりか?」柳瀬は目の前に貼られている順位に目もくれず、毅然としている。もはや王者の風格さえ感じる。

「柳瀬は順位を気にしないタチなのは褒められることだけど、少しは気にしたほうが・・・・・・いいかも」
「んぁ? ――あ、俺、ベベじゃん」
「名前書いて公表するつもりはなかったんだけどねー。何かの手違い――だといいけど、ミスがそのまま出ちゃってさ。剥がしたいけど立場上そうもいかなくって、むしゃくしゃしてるとこ」
「・・・・・・そうなのか」

 見上げる柳瀬は「剥がしちゃいけねぇって言われたんだよな?」確認をする。

 HRが終わる頃、一条と柳瀬は息も絶え絶えに美術室でへばっていた。

「柳瀬・・・・・・これは屁理屈の域だけど、なんかスッキリした」
「美術部の絵の具を拝借したことを黒板に書いたし、あとはいいだろ」
 
 どでかいあの用紙を2人で裏向けて張り直し、記載内容に誤りがありました、とだけ絵の具で大きく書いておいた。
 柳瀬は一条の書く文字に至極当然か、と言った風で褒めた。
 
「男で字が綺麗なのって、それだけで清潔感出て女にモテるよなー」
「柳瀬はモテなくていいから、気にしなくて良し。僕は僕でそもそも女の子に興味が無いから、これまたモテなくてよし」
「え、え? お前、女、だめなのか」
「うーん、そうみたいなんだ」
「それは初耳だ」
「そういや、一条9位だったな。俺の弁当もだけど、生徒会とひとり暮らし、両立できてすげぇな」
「・・・・・・それはありがとうなんだけど・・・・・・柳瀬は学校来るだけじゃなくて、お勉強もそこそこにやっとこうね。あ、僕が面倒見てあげればよかった」
「あ、いや、俺ちゃんと空欄全部埋めたぜ? 名前書き忘れたかな」
「おいおい・・・・・・」

 「授業始まるけどどうする? このまま2人でサボっちゃう?」一条は聞いてみる。

「会長なら日常の行動にも責任をもて。急にやる気なくしたとか思われたら、終いだぜ」
「ケチ。あーでも、今日朝イチで職員室に乗り込んでいったから、もう時既に遅し」
「乗り込んだのかよ」

 ふは、と自然に笑みを溢して「だったら、もうテスト返しだけだろうし、屋上で惰眠でも貪るとするか」伸びをする。
 ここまでの親展に1年と少しを費やした。だが、厳密なところはこの2周間だ。
 愛を受け取るのも与えるのも理由がないとしてくれなかったが、実際は理由を作ってやれば、対価がなくとも情で動いてくれることが分かった。

 ウリでしか暴けなかった分、時間がかかってしまったけれど、柳瀬の隣はこんなにも穏やかで心地良い。
 
「屋上に行きますか」
「じゃんけんで負けたほうが枕役な」
「柳瀬以外あり得なくない?」
「なんでだよ、俺は一仕事終えて眠ぃんだよ」
「僕だって柳瀬に膝枕してもらいたい!」
「なっ、俺は頭に敷く枕がほしいだけだ! お前がそうしたいだけだろ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

処理中です...