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1章
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それにしても大倉へのフォローはどうすべきだろうか。その前にこのどでかく貼られた成績表をどうにしかしたい。
「んー・・・・・・」
「あ、一条」
「もしかして、会長なのにHRからサボりか?」柳瀬は目の前に貼られている順位に目もくれず、毅然としている。もはや王者の風格さえ感じる。
「柳瀬は順位を気にしないタチなのは褒められることだけど、少しは気にしたほうが・・・・・・いいかも」
「んぁ? ――あ、俺、ベベじゃん」
「名前書いて公表するつもりはなかったんだけどねー。何かの手違い――だといいけど、ミスがそのまま出ちゃってさ。剥がしたいけど立場上そうもいかなくって、むしゃくしゃしてるとこ」
「・・・・・・そうなのか」
見上げる柳瀬は「剥がしちゃいけねぇって言われたんだよな?」確認をする。
HRが終わる頃、一条と柳瀬は息も絶え絶えに美術室でへばっていた。
「柳瀬・・・・・・これは屁理屈の域だけど、なんかスッキリした」
「美術部の絵の具を拝借したことを黒板に書いたし、あとはいいだろ」
どでかいあの用紙を2人で裏向けて張り直し、記載内容に誤りがありました、とだけ絵の具で大きく書いておいた。
柳瀬は一条の書く文字に至極当然か、と言った風で褒めた。
「男で字が綺麗なのって、それだけで清潔感出て女にモテるよなー」
「柳瀬はモテなくていいから、気にしなくて良し。僕は僕でそもそも女の子に興味が無いから、これまたモテなくてよし」
「え、え? お前、女、だめなのか」
「うーん、そうみたいなんだ」
「それは初耳だ」
「そういや、一条9位だったな。俺の弁当もだけど、生徒会とひとり暮らし、両立できてすげぇな」
「・・・・・・それはありがとうなんだけど・・・・・・柳瀬は学校来るだけじゃなくて、お勉強もそこそこにやっとこうね。あ、僕が面倒見てあげればよかった」
「あ、いや、俺ちゃんと空欄全部埋めたぜ? 名前書き忘れたかな」
「おいおい・・・・・・」
「授業始まるけどどうする? このまま2人でサボっちゃう?」一条は聞いてみる。
「会長なら日常の行動にも責任をもて。急にやる気なくしたとか思われたら、終いだぜ」
「ケチ。あーでも、今日朝イチで職員室に乗り込んでいったから、もう時既に遅し」
「乗り込んだのかよ」
ふは、と自然に笑みを溢して「だったら、もうテスト返しだけだろうし、屋上で惰眠でも貪るとするか」伸びをする。
ここまでの親展に1年と少しを費やした。だが、厳密なところはこの2周間だ。
愛を受け取るのも与えるのも理由がないとしてくれなかったが、実際は理由を作ってやれば、対価がなくとも情で動いてくれることが分かった。
ウリでしか暴けなかった分、時間がかかってしまったけれど、柳瀬の隣はこんなにも穏やかで心地良い。
「屋上に行きますか」
「じゃんけんで負けたほうが枕役な」
「柳瀬以外あり得なくない?」
「なんでだよ、俺は一仕事終えて眠ぃんだよ」
「僕だって柳瀬に膝枕してもらいたい!」
「なっ、俺は頭に敷く枕がほしいだけだ! お前がそうしたいだけだろ!」
「んー・・・・・・」
「あ、一条」
「もしかして、会長なのにHRからサボりか?」柳瀬は目の前に貼られている順位に目もくれず、毅然としている。もはや王者の風格さえ感じる。
「柳瀬は順位を気にしないタチなのは褒められることだけど、少しは気にしたほうが・・・・・・いいかも」
「んぁ? ――あ、俺、ベベじゃん」
「名前書いて公表するつもりはなかったんだけどねー。何かの手違い――だといいけど、ミスがそのまま出ちゃってさ。剥がしたいけど立場上そうもいかなくって、むしゃくしゃしてるとこ」
「・・・・・・そうなのか」
見上げる柳瀬は「剥がしちゃいけねぇって言われたんだよな?」確認をする。
HRが終わる頃、一条と柳瀬は息も絶え絶えに美術室でへばっていた。
「柳瀬・・・・・・これは屁理屈の域だけど、なんかスッキリした」
「美術部の絵の具を拝借したことを黒板に書いたし、あとはいいだろ」
どでかいあの用紙を2人で裏向けて張り直し、記載内容に誤りがありました、とだけ絵の具で大きく書いておいた。
柳瀬は一条の書く文字に至極当然か、と言った風で褒めた。
「男で字が綺麗なのって、それだけで清潔感出て女にモテるよなー」
「柳瀬はモテなくていいから、気にしなくて良し。僕は僕でそもそも女の子に興味が無いから、これまたモテなくてよし」
「え、え? お前、女、だめなのか」
「うーん、そうみたいなんだ」
「それは初耳だ」
「そういや、一条9位だったな。俺の弁当もだけど、生徒会とひとり暮らし、両立できてすげぇな」
「・・・・・・それはありがとうなんだけど・・・・・・柳瀬は学校来るだけじゃなくて、お勉強もそこそこにやっとこうね。あ、僕が面倒見てあげればよかった」
「あ、いや、俺ちゃんと空欄全部埋めたぜ? 名前書き忘れたかな」
「おいおい・・・・・・」
「授業始まるけどどうする? このまま2人でサボっちゃう?」一条は聞いてみる。
「会長なら日常の行動にも責任をもて。急にやる気なくしたとか思われたら、終いだぜ」
「ケチ。あーでも、今日朝イチで職員室に乗り込んでいったから、もう時既に遅し」
「乗り込んだのかよ」
ふは、と自然に笑みを溢して「だったら、もうテスト返しだけだろうし、屋上で惰眠でも貪るとするか」伸びをする。
ここまでの親展に1年と少しを費やした。だが、厳密なところはこの2周間だ。
愛を受け取るのも与えるのも理由がないとしてくれなかったが、実際は理由を作ってやれば、対価がなくとも情で動いてくれることが分かった。
ウリでしか暴けなかった分、時間がかかってしまったけれど、柳瀬の隣はこんなにも穏やかで心地良い。
「屋上に行きますか」
「じゃんけんで負けたほうが枕役な」
「柳瀬以外あり得なくない?」
「なんでだよ、俺は一仕事終えて眠ぃんだよ」
「僕だって柳瀬に膝枕してもらいたい!」
「なっ、俺は頭に敷く枕がほしいだけだ! お前がそうしたいだけだろ!」
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