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第二十話:最終決戦。

01最終決戦。

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目が覚めると見覚えのある部屋に居た。

左を見れば、大きな窓の向こう側に、まんまるい満月と方舟のシルエットが見える。


(あれ?私、この部屋から抜け出したはずじゃ……?)


ズキズキと首が痛み、どことなく頭がぼんやりとした。


(そうだ、私、紅葉さんに気を取られて幸生さんから攻撃を食らったんだ)


明確になっていく意識の中、何かが暴れるような耳障りな音が、右側から聞こえる。

視線をそちらに向ければ、瞳を真っ赤に染めたミタマが、鎖で繋がれていた。


「ぐぁああああああああ!!!」


ガチガチとその鎖を引きちぎらんばかりに暴れ、普段より鋭い牙に、彼らしくも無く唾液が滴っている。

額には青筋が浮いていて、どう見ても正常では無かった。


「ミタマさん……ッ!!」


とっさに起き上がり、ズキズキと痛む頭を押さえる。

ミタマの姿はまるで、薬を飲んだ七曲のようだ。


(嘘だ……)


恐怖で鳥肌が立つ。

彼の元へ駆けつけようとベッドから飛び出す。

けれど、ミタマに後数歩届かない距離で足が何かにひっぱられて転んでしまった。

痛む足首にはかせが付いていて、それはベッドの足と繋がっている。

いつの間にか変化が溶けたのか、服装がウエディングドレスへと戻っていた。

嫌な焦燥感。

震えそうになる手。

回らない頭を、必死に働かせる。


(幸いこの部屋には今誰も居ない。落ち着け……)


紗紀は冷静さを取り戻すように小さく深呼吸をした。

コツコツと足音がこちらへと近づいて来る音がする。

紗紀は恐怖で真っ青になった。

ゆっくりと扉がきしみながら開く。

姿を現したのは幸生と、彼に連れられた優一の姿をした青年だった。


「やぁ。お目覚めだね。あははっ。本当にお前ってばお転婆娘てんばむすめだな。脱走とか考えてたの?悪い子」


幸生は見下すように紗紀を見た。

優一は相変わらず表情が読めない。

紅葉は一緒では無いようだった。


「紅葉には章の足止めを頼んだんだ。邪魔されると面倒だからね。お前は殺そうと思ったんだけど、紅葉の提案で実験台として生かしてあげることにしたんだよ。慈悲深いだろ?」

「実験、台……?」


その言葉に嫌な予感がした。

コツコツと、紗紀の側まで歩み寄ると、幸生は紗紀の胸倉を掴んだ。


「そう。これは章の為にもなるんだ。実験の内容は凄くシンプル。この章の魂の三分の一を入れた、器であるユウイチの子供を生むこと。その場合遺伝子がどちらになるのか確実性が欲しい。予測では器であるユウイチなんだけど、そうなると章の望む道に支障をきたしちゃうんだよね。悩みどころだろ?」

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