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第十五話:拉致。

03拉致。

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どうしてこうも甘やかしてくれるのだろう。

紗紀はマジマジとミタマを見つめる。


「さて、状況的に言えば、本来の神社に影響が出てる分良くはないけど。まだ早朝だし、紗紀は妖力補給をしてしっかり眠ってほしい。昨夜は俺が熟睡してしまったからキミが番をしていてくれたんだろう?」


見張り番もそうだけれど、素直に眠れる状況では微塵みじんもなかったのは言うまでもない。

自然と口づけを交わす事は慣れつつあるのに、では今から妖力補給で口づけします、と宣言されるとやはりどうしても意識してしまう。

今までに何回口づけをわしてきたか分からない。

自ら奪いに出向いた事すらある。

それなのに、だ。

ミタマが手招くけれど、固まって動けない紗紀に、彼から近づく。

逃げはしなかった。

自分に妖力が必要なのは事実なのだ。

触れてくるミタマの手は普段通りに戻っていて、ひんやりと冷たい。

近づいてくる陶器のようななめらかな素肌に、綺麗に生えそろった純白のまつ毛。

黄金色の瞳は既に閉じられている。

紗紀もギュッと目をつむった。

触れる唇さえもひんやりとしている。

昨日の熱さが嘘のようだ。

口を介して体に巡っていく妖気は、ミタマの体温と反比例して温かい。


「紗紀は口づけの度に反応が変わるから良いよね。勇ましい時もあれば、淡々とこなす日もあって、もう何度も口づけてるのに緊張してみたり。ふふっ、本当飽きない」

「茶化してますか?」

「いいや。可愛いなと思ってね」

「茶化してるじゃないですか!」


恥ずかしさが上回って、ついつい怒り口調になってしまう。


「可愛いって茶化してる内に入るのかい?困ったね。本音すら言わせてもらえないなんて……」

「も、もう寝ます!」


ミタマの甘い言葉に当てられて、恥ずかしさの限界を越えてしまった。

紗紀は早々と布団に潜り込む。

そんな紗紀を見て、ミタマはどこか穏やかに笑った。


「おやすみ、紗紀」


とんとんと、あやすように一定のリズムで優しく叩く。

しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。

自分がお酒に弱いばっかりに、紗紀を徹夜させてしまった事を少しばかり反省する。

ミタマは寝息を立てる紗紀の額に口づけを落とすと、そっと部屋を後にした。


 ◇◆◇


居間に着くとそこではウカノが食事の準備をしていた。

なんだか変な気分だ。

最近はずっとここに化け狸のマミや雪女の雪音が立っていたからだ。


「兄様?あんなに飲んでおいて平気なんですか?」

「水をくれないか?」

「……やはりスッキリとはいきまけんよね」


ウカノは昨夜の事を思い出して笑った。

口元に袖を当てて笑う姿はミタマとそっくりだ。


「あのお酒嫌いな兄様があんなに飲むなんて」

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