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第十一話:七曲。
21七曲。
しおりを挟む「え?」
紗紀に言われてから七曲も自分の手を見てみる。
確かに手の輪郭が光って見えた。
るとジワジワと内側から温かい物が込み上げて来るのが分かる。
そうこうしている間にも七曲は光に包まれてしまった。
「な、何!?」
訳が分からずに紗紀は思わず叫んだ。
不安がる紗紀の腰にミタマは腕を回すと、光が治まってくるのを眺めながら言った。
「使役した主の血を飲むことは、一つの契を交わすのと同意。本来制限されていた力を引き出して、尚且コントロールさせる事が出来る。これは紗紀にそれだけの力が無いと出来ない事だよ」
難しすぎて良く理解は出来ないけれど、何やら凄い事だけは理解出来た。
光が消え、目の前に現れた七曲はいつもと雰囲気が変わっていた。
顔に赤い模様のようなモノが浮かび上がっているし、髪型も肩ほどだったモノが長く伸びていた。
ましてや衣装まで変化していて紗紀は思わず瞬きを繰り返す。
「七曲、さん……?」
「……なんだろう。力が内側から溢れてくる」
「凄い……」
傍らで見ているだけでも、その芯から溢れ出る力を感じ取れた。
「へぇ~。ヤルね。予想以上で何より」
そう呟きパチパチと拍手を送る白狼を、みんなで見やる。
紗紀はハッとした。
白狼の立つ向こう側、かなり距離はあるが微かに見える。
優一が倒れ伏している姿が。
「白狼!!あなた……」
「はぁ?俺様が悪いってか?弱いくせにケンカふっかけて来たのはあっち!」
紗紀が厳しい顔をして怒れば、白狼は驚いたようにそう言って、最後には不機嫌そうに親指で優一を指し示す。
そして次に七曲へと指を向けた。
「んで、力が欲しいって言うからくれてやっただけだろ?なぁ?」
何か間違った事をしたか?そう言いたげだ。
「あんなの……力だなんて言わない」
七曲は白狼を睨み据える。
それに対して白狼は面白く無いと言わんばかりに盛大な溜め息をついた。
「はぁ。せっかく俺様が親切心でしてやったっつーのにさ」
「親切心?面白半分の間違いじゃない?」
七曲は冷めた目で白狼を睨んだ。
「違いねぇ!アッハハハ!だがよ?面白いモン、見れたろ?」
ニタリ、口端を上げて白狼は笑って見せた。
七曲は地面を蹴ると白狼へ詰め寄り重い拳を振るう。
以前なら軽くひょいと避け切ったはずであろう、その拳は力強く白狼の頬を殴りつけた。
その反動で白狼は飛ばされ地面を転がる。
周りがポカンと驚いたように七曲を見た。
七曲本人も驚いたようでその拳をマジマジと見やる。
紗紀はツカツカと歩くと転がった白狼の側へと寄った。
厳しい眼差しで白狼を見る。
「謝って。あなたが傷付けたたくさんの者達に謝りなさい」
怒っているのに流れる涙。
そんな紗紀を見て心底不思議そうに白狼は呟く。
「なんでオマエは……。オマエらはそっち側なんだろうな?」
紗紀の涙を拭おうと伸ばした白狼の手を、ミタマがガッチリ掴む。
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