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第八話:告白。

03告白。

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「あ、白花しらはなさん」


声がして右の方を見れば、少し離れた縁側えんがわ柳瀬優一やなせゆういちは座っていた。

紗紀は一瞬動作がピタリと止まったが、観念したように彼の元へと足を運んだ。

それはちょうど左側から来ていたミタマが紗紀に声をかけようとしたタイミングだった。

なんとも間が悪い。

けれど紗紀はミタマには気付いていないようだった。


「柳瀬、さん」

「優一でいいよ。俺も紗紀さんって呼んでもいい?」

「さん、だなんて……、私の方が年下ですよ」

「じゃあ……紗紀」


突然呼び捨てにされて狼狽うろたえた。

その声がなぜだかミタマの声で再生されたからだ。


「あはは、そんな動揺しないで。やっぱり避けられてるみたいだね」


ぐっさり図星を刺されて口ごもる。

彼は相変わらず穏やかに笑っている。


『きみとなら同じ境遇だから分かり合えると思う。……俺と一緒に生きてほしい』


昨日、優一に言われた言葉が脳裏を過ぎって顔が火照る。

慌てて顔を左右に振り乱して思い出したものをかき消した。


「きみに避けられるなら言わければ良かったな。……ごめん。困らせてるね」


しょぼんとした優一に良心がキリキリと痛む。

そんな顔をさせたいわけじゃなかった。

紗紀ははかまをぎゅっと握りしめて、俯いたまま蚊の鳴くような声を絞り出す。


「……ちょっと、いや、物凄く対応に困ってるだけで、その……慣れてないだけなので。気にしないでください」

「その素直な所すごくいいね。きみってばまるで忍者みたいにご飯だけ準備して姿を一切見せないし、部屋に行っても居ないからさ、もうここで待ち伏せするしかないな、って」


優一はおかしそうにクスクスと笑った。

自分の行動を思い出して恥ずかしくなった紗紀は近くの縁柱えんばしらに頭突きをかまそうとした。

けれどそれはミタマの阻止そしによって失敗に終わる。


「紗紀、柱が可哀想だよ」

「……み、ミタマさん!」


思わず紗紀はねるようにして後退こうたいする。

役者が勢揃せいぞろいしてしまった。

オロオロする紗紀に優一は吹き出して笑う。


「ふはっ!紗紀の行動面白い」

「おも、面白くは……無いです」


紗紀がムッとして、赤面したままそっぽを向く。

その仕草が子供っぽくて優一がまた笑った。

ミタマはその状況がなんとも面白くない。

何より優一が”紗紀”と呼び捨てにしていた事が気に入らない。


「紗紀、話したい事がある」

「嫌です」


ミタマの言葉に間髪かんぱつ入れずに答える紗紀。


「……」


予想外の返答にミタマが瞳を丸くする。


「今、なんて?」

「嫌です」


どうやら聞き間違いでは無いらしい。

はっきりきっぱり断られて愕然がくぜんとする。


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