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第三話:化け狸。
08化け狸。
しおりを挟む「でもお父さんやお母さんが心配するんじゃないかな?」
紗紀の言葉に子供達は顔を見合わせて、しょんぼりとした。
耳も尻尾も垂れ下がっている。
「お父さんもお母さんも居ない」
「死んじゃった」
「殺されたんだよ!」
「……こわいこわいだったー」
それぞれが一緒懸命に伝えて来た。
その内容は衝撃的で、一瞬頭が真っ白になった。
(殺された……?なんで……?……どうして。こんな小さい子達が居るのに)
「ミタマさん」
「……なんだい?」
ミタマには何となく紗紀が言い出しそうな事が分かっていた。
紗紀はミタマへ視線を送るとそのまま向き直る。
「この子達を使役する方法を教えてください」
地面に正座した紗紀は手をついて深く深く頭を下げた。
草木がさわさわと葉音を鳴らす。
しばしの沈黙の後、ミタマは溜め息まじりに口を開いた。
「そんな小さな子を使役してなんになるんだい?」
「……使役すれば、ここで一緒に暮らせるんじゃないかって」
「一緒に暮らす?ここはそんなに生温い場所じゃないよ。子供達の保護所じゃない」
「分かってます。分かってます!……この子達は子供だけれど、だからこそ伸び代は無限大だと思うんです!」
「お願いします……お兄ちゃん!」
お願いします!!紗紀に習って正座する子供達は女の子の声を皮切りに各々にそう言って頭を下げる。
ミタマはあからさまに面倒臭そうに溜め息をついた。
「……はぁ。どうなったって知らないよ。責任は取れないからね。……でも、ここは紗紀の場所だから。キミの好きにしたらいい」
「……ミタマさん!……ありがとうございます!」
「ありがとう狐さん!」
ありがとう!ありがとう!と両手を上げて喜ぶ子供達。
ミタマは懐から真っ白な御札を取り出した。
それを紗紀に手渡す。
受け取ったその御札には何も書かれていなかった。
紗紀は首を傾げてミタマを見る。
ミタマは袖口から筆ペンを取り出すと今度はそれも手渡した。
それを見た紗紀は思う。
なんてシュールなんだろう。
ミタマさんから筆ペンを渡されるって。
ツッコミを入れたくなって必死に飲み込む。
「硯も要らず墨を作る手間も省ける、便利な筆でしょ?本来の世界にいた時に購入したんだ」
紗紀の内心を知ってか知らずか、淡々と話して聞かせる。
子供達はその筆ペンを見て、なんだなんだとワクワクとしていた。
「これにそれぞれ名前を書いて。血印を押して」
「血印って、血!?」
「そうだよ。名前だけじゃ同じ名前の子とか居たらどうするんだい?」
(確かに。それならミタマさんの御札にも名前と血印が予めされてあったんだ)
ミタマの答えに納得する。
紗紀は結界から手を出して御札と筆ペンを地面へと置いた。
子供達はそれに名前を書き、血印を押していく。
「これで晴れて君達は紗紀の下僕となったわけだ。彼女を困らせないように。彼女の力になってね」
「はい!!」
子供達は元気に返事をすると御札と筆ペンを持って結界内へと足を踏み入れた。
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