知性を与えられた猫たちは何を見る?

ChamalSei

文字の大きさ
3 / 68
序章 知性を与えられた日

知性を与えられた猫たちは何を見る? 第3話

しおりを挟む
ガチャン!!!
その時、外から物が聞こえた。

「ニャッ!」

茶丸が飛び上がる。私の心臓も飛び跳ねた。まさか、う、う、宇宙人・・・

「誰かいる?!」

私は窓の方を見た。

「ううん」

セイくんが耳を立てる。

「隣の庭から…植木鉢が倒れる音・・・と何か・・・」

深夜のしじまを壊すように、確かに何かが割れる音だった。

「行ってみよう!」

茶丸が興奮した様子で窓辺に駆け寄る。

「待って」

私は2匹を制する。宇宙人関係でないならいい、もう今日はこれでいっぱい。

「今日はもう寝ましょう」

もう何も考えたくない、とりあえず、すべて明日の私に任せよう。そうしよう。
ベッドに入ってからもしばらく考えがグルグルしていたが、何とか眠りについた。


翌朝。
「この子達をよろしくって、何それ、そもそもこの子達って、それ、うちの子だし」

コーヒーを飲みながらブツクサ言いつつ、ネットニュースを見ていた。

「○○市、続く停電。約3,200戸で被害」「ロボット開発、各社で進む」「AIの多様化進む」・・・

昨晩の出来事と比べると、どんなニュースにも驚かない自信があるな、そんなふうに考えていた時、玄関のインターホンが鳴った。

「あの、植木鉢のことなんですけど…」

隣に住んでいる佐藤さんが、ノートパソコンを手に真剣な表情で立っていた。30代半ばの彼女は、綺麗な庭作りで評判の主婦だ。

「昨日の夜中に、うちの庭で...」

ああ、昨日の物音のことか。
けれども開いたノートパソコンの防犯カメラの映像を見せられて、私は思わず息を呑んだ。ガーデンライトに映る大きな影。 まるで壁を這うように動く不気味な姿。 それは、間違いなく、猫の姿だった。

「野良猫か、それとも...」

佐藤さんがチラリと部屋の中にいるうちの飼い猫たちを見る。
私の横で、2匹の猫が居心地悪そうにしているのが分かった。

「え、えっとですね、うちは基本的に家飼いなので・・・」

と言いかけたが、先日、彼らが外に出ているのを見たではないか。

「いや、ちがう、あ、違うんじゃなくて、えっと・・・」

まるで自分が容疑者になったかのようにしどろもどろになってしまう。
昨日の出来事だけで頭の中いっぱいだというのに…何なのこれ。

佐藤さんに案内されて、外に出た。
外は雲一つない、いい天気である。近所の子供の声が朝から聞こえる。

佐藤さんの家の傍で、近くに住む女の子が泣きそうな顔でウロウロしていた。

「あらあら、里奈ちゃん、どうしたの」

佐藤さんが優しく聞く。

「キーホルダー、芽衣ちゃんからもらったキーホルダー・・・」

「無くしちゃったのね。私も気を付けて見ておくわ。見つけたら、里奈ちゃんに教えるから」

里奈ちゃんは半べそで頷く。

「こちらです」

佐藤さんは私をうながして、庭の中へ案内する。
庭はよく手入れされていて、植物園のようだった。

いくつか洋風のオブジェがあり庭園といったふう。ところどころにあるソーラーライトは夜間も見る目を和ませてくれるのだろう。

庭を少し入ったところで、スペイン製だろうか?高価そうな植木鉢が無残に割れていた。

「昨日は特に風が強かったわけでもないのに・・・」

「そうですよね・・」

植木鉢はそこそこ大きく、確かにちょっとくらいの風では倒れるようなものではなかった。

「残念だわぁ~、これ、気に入ってたのよねぇ・・・」

と言ってちらりと私を見る。
なんだかその目に責められているような気もする。

佐藤さんが疑うのも無理ない。佐藤さんの家の庭は高いフェンスで囲まれており、そのフェンスは猫が登れないタイプのもの。ただ、私の家との境だけは低い木の柵になっており、そこからだと猫が入ることも可能だ。それと防犯カメラの映像を合わせると疑うのも無理からぬ話だ。

その時、玄関チャイムが鳴った。

「あら、ちょっとごめんなさい、失礼していいかしら」

「構いませんよ。私、もう少し、見ていってもいいですか?」

「ええ」

植木鉢の回りを調べてみたが、特に何も見当たらない。
諦めて部屋に戻ることにした。

どうしたものか。
実際に自分の飼い猫がやったとか、百歩譲って少しでも疑わしいのであれば、弁償もしよう。だけど、昨日、彼らにはアリバイがあった。
しかしその証人が私では言い逃れと思われるだろう。もう一人の証人は無くは無いけど・・・・

自宅玄関のドアを閉めながら

「異星人が証人じゃね・・・」

とつぶやいた。

「茶丸―!セイくーん!」

部屋に戻ってきたものの、姿が見えない。
ふと窓を見るとわずかに隙間が開いている。

猫は、まさかこんな隙間からと思うような狭い隙間でも通り抜けていく。
どうしよう、どうしようと慌てていると、彼らが窓の外に現れた。

「ちょっとあなた達!」

「あ、律佳ちゃん!ごめんなさーい、ちょっと出てましたー」

「ごめんなさい」

「ってゆーか、あなたたち、どうやって窓のロックを・・・」

彼らは近くにあった定規やペンを使い、テコの原理を利用して器用にロックした。

「へへへ!」

「茶丸!最後までカチッとしなきゃ」

・・・いろいろ納得がいった。


「まったく、どこに行ってたのよ」

「僕たちもこっそり調査したんだよ」

「そんな、もし見つかったら、今度こそあなたたちのせいにされちゃうじゃない!」

「大丈夫だよー」「ねーっ!」

次から次へと心配事が増えていく。私の頭の中にあるTODOリストの「検討すべき事項」がまたひとつ増えた。


「で?何かわかったわけ?」

「うん!」

これには驚いた。

「ホント?!何、何?」

「まず、あの防犯カメラの映像だけど、ちょっと不自然だよ。」

「何が?」

「猫の影の揺れが茂みの揺れと一致してたでしょ。何か揺れる物体とか光源とかの影響を受けていると思う。それにあの後、音がね・・・」

「それとね、あのね、佐藤さんとこの庭にね、ローズマリーがあって、いい匂いなんだよー」

「茶丸、そうじゃないでしょ」セイくんがたしなめる。

「うん、わかってるよ。そのローズマリーの茂みの中にね、あるんだー」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...