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■66  / 1963年、ウルグアイ / 妖魔王、1963年の地球を観光する

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魔人討伐の任務を終えた零、麻美、そして守田は、夜の冷たい風が肌に刺さるような感触を残しつつ、静かに神殿を後にした。
森の木々は闇に溶け込むように立ち並び、足元の土が乾いた音を響かせる。
三人の疲労は、戦いの激しさを物語っていたが、その瞳には新たな覚悟と使命感が揺らめいていた。
透明化する魔人との死闘で得た魔石は、これからの戦いにおいて極めて重要な鍵となることを、全員が無言のうちに理解していた。

零が月明かりに照らされた道を見つめながら、ふと呟く。「魔石の力…まだ完全に解き明かせてはいないけど、これで俺たちはまた一歩前に進めたんだ。」その言葉には、微かに滲む自信と不安が同居していた。

麻美は静かに微笑み、彼の言葉を優しく包み込むように答えた。「そうね。でも、この力を使う度に、私たちはもっと強くなれるわ。でも、その力を持つことで、同時に私たちに課される責任も大きくなるのよね。」彼女の声は、まるで森の風に乗って囁くかのような静けさを持ち、しかし、その奥底には深い決意が込められていた。

「力の使い方を誤れば、俺たち自身を滅ぼすことにもなりかねない。それを忘れるわけにはいかない。」守田は、冷静さを保ちながらもその言葉に一瞬の鋭い光を込めた。

町へと続く道は、まるで彼らを試すように長く続いていたが、彼らの足は止まらなかった。そして、ついに町へ辿り着いた時、零は無言のまま、店の扉を押し開けた。
店内に響く錆びたベルの音が、静寂を切り裂くように鳴り響き、古びた木の床が軋む音が重なり、空気に緊張感が漂う。

その瞬間、零の視界に入ったのは、頑丈そうな革のエプロンをまとった商人だった。彼の目は細いが、その奥に鋭い観察力が光り、経験豊富な冒険者を迎える慣れた表情を浮かべていた。しかし、今日の訪問には、何か違うものを感じ取っているかのようだった。

「いらっしゃいませ。今日は何をお求めでしょうか?」彼の声には、歳月を感じさせる落ち着きがあった。

零はその言葉に応えるように一歩前に進み、商人を真剣な眼差しで見つめた。「今回の戦いは、並みの物資じゃ足りない気がするんだ。役立ちそうなものを揃えたい。どんな状況にも対応できるようにしたい。」

商人は一瞬、驚いたように眉を上げたが、すぐに理解した表情を浮かべ、頷いた。「なるほど、しっかりとした準備が必要ということですね。少々お待ちください。」彼は店の奥へと消え、程なくして両手いっぱいにアイテムを抱えて戻ってきた。

彼の手に抱えられたアイテムは、零たちの予想を超えるものばかりだった。商人は一つ一つ、慎重にカウンターに並べていく。手際の良さが際立ち、その動きには無駄がなかった。

「まずはこちら。魔力の通る革手袋です。これを装着することで、接触した相手の微かな気配を感じ取ることができます。もし敵が透明になっても、この手袋を通じて感覚が研ぎ澄まされるでしょう。」

零は手袋を手に取り、じっとその質感を確かめた。「これなら…透明な敵の動きも、多少は感じ取れるかもしれないな。」

続いて商人が取り出したのは、小さな魔力の反射石だった。「こちらの石は、一定範囲内で敵の魔法攻撃を反射する力を持っています。攻撃的な用途には向きませんが、守備には大いに役立つでしょう。」

その石を手にした麻美は、興味深げにそれを見つめた。「これは…防御策として持っておけば、次の戦いで確実に役立つわね。」

「そしてこちらは閃光の火薬。これを使えば、強い閃光で敵の目を眩ませることができる。闇の中や透明化した敵を暴くためにも役立つはずです。」商人が次に差し出したのは、小さな袋に詰められた閃光の火薬だった。

零はそれを手に取り、じっくりと眺めた。「なるほど、これを使えば、透明な奴の動きを掴めるかもしれないな…」

商人はさらに、霊感の砂という名のアイテムを取り出した。「この砂を地面に撒けば、霊的な存在や透明な敵を明らかにすることができます。霧散の石と組み合わせることで、より効果的に追跡できるでしょう。」

「素晴らしい…これで、どんな敵でも対処できそうだ。」零は感嘆の声を上げ、麻美と守田に目を向けた。

守田は静かに頷き、「これだけの物資があれば、次の戦いに向けた準備は万全だな。ただ、全部持ち運ぶには工夫が必要かもしれないな。」と冷静に言葉を添えた。

その言葉に商人はにこやかに笑みを浮かべ、最後に小さな袋を差し出した。「これをご覧ください。この袋は拡張の袋といって、見た目以上に多くの物資を収納できる魔法が施されています。軽く持ち運べるため、非常に便利です。」

守田がその袋を手に取り、笑みを浮かべた。「これなら俺の空間魔法と併用すれば、十分すぎるほど物資を持ち運べるな。」

零は感謝の気持ちを込め、深く頭を下げた。「本当に助かるよ。」

すべてのアイテムを手に入れた零たちは、再び冒険への道を歩み始めた。彼らの背後には商人の真剣な表情が残り、彼らの心には、次なる戦いへの決意が一層強まっていた。



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1963年、ウルグアイのアルティガス地方。
広大な草原が広がり、青空の下、柔らかな風が大地を撫でていた。牧歌的な風景には、牧草地が延々と続き、牛や羊がゆったりと草を食む姿が見られる。
アルティガス地方は、農業と牧畜が盛んな地域で、地元の人々はその豊かな自然に支えられた生活を送っていた。

乾いた風が赤茶けた大地を渡り、アメジスト鉱脈を抱える山々の間を静かに吹き抜けていく。
夜の闇は静寂に包まれ、月がぼんやりと淡い光を大地に落としていた。採掘者たちの小さなランプの明かりだけが、山肌に不規則な影を生み出している。時折、スコップが石にぶつかる音や、遠くで夜の鳥が鳴く声が響く。だが、その静寂の中には、何か不気味で異質なものが混ざり始めていた。

「今夜は、なんだか空気が重いな…」年配の採掘者が呟き、額の汗を拭った。「こんなに静かな夜は久しぶりだ。」

彼の言葉に応えるように、若い採掘者が黙って土を掘り続ける。彼らは、アメジストを掘り出すために、この過酷な地で何日も作業を続けてきた。手には無数の傷が走り、身体中が疲れ切っていた。だが、ここ数日で見つかった結晶は予想をはるかに超える量で、村に戻れば大金が手に入ることは間違いなかった。

「見てみろ、この石だ…最高の紫色だ。」ひとりの採掘者が、土から引き抜いたアメジストをランプの光にかざして、輝きを確認する。月明かりに照らされたその結晶は、まるで内側から光を放つかのように美しかった。

「俺たちはついてる。これでしばらくは安泰だな。」もうひとりが笑いながら言った。

だが、その笑顔も束の間だった。空気が変わったのは、その時だった。目に見えない、しかし確かに感じられる圧倒的な存在感が、山の中に漂い始めた。風がぴたりと止み、周囲の木々も葉を震わせることなく、ただ闇の中に静まり返った。月明かりは薄く、遠くの地平線に沈み始めていた。

「な、なんだ…?」年配の男が周囲を見回し、不安げに立ち上がった。「何かが…近づいているのか?」

その瞬間、アメジストの結晶が微かに震えた。それはわずかな揺れだったが、異様なまでの不気味さを伴っていた。彼らの背筋が凍りつく。だが、その原因を知る者は誰もいなかった。

気づかれることなく、妖魔王リヴォールはすでにこの地に降り立っていた。彼の存在は、人間には知覚できないほど巧妙に隠されていた。まるで風そのものが彼の姿を隠し、影が彼の気配を飲み込んでいた。彼が姿を現さずとも、ただその意志だけで、アメジストたちは彼のもとに集まり始める。

「この力…アメジストの真髄は、私が手にする…」彼のつぶやきは風に乗り、夜の空気に溶け込んだ。

アメジストの結晶は、ひとつ、またひとつと地面から引き抜かれ、空中に浮かび上がっていく。まるで見えない糸に引かれるように、結晶たちはリヴォールのもとへと集まった。深い紫の光が夜空に差し込み、暗闇に隠れていた彼の手の中に静かに収まっていく。


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アメジストの結晶を奪った妖魔王リヴォールは、ふと気まぐれに地球を巡ってみたくなった。
彼は人間の目には見えぬ影となり、静かにこの星の景色を観光することにした。長い年月を生きる彼にとっては、地球の時代や文明など、一瞬の儚き幻のようなものだったが、その一瞬の輝きに興味を引かれることもあった。

まず彼が足を踏み入れたのは、ニューヨークの摩天楼がひしめき合う街。1963年のニューヨークは、文明の頂点を誇るかのごとくビルがそびえ立ち、昼夜を問わず明かりに満ちていた。彼はビルの間を縫うように飛び、地上の喧騒を上から見下ろした。車が行き交う音、人々のざわめき、輝くネオン、どれも人間たちが自らの小さな世界を大きく広げようとするエネルギーの結晶であった。だが、それらがいかに一時的であるかを思うと、彼は静かに目を細め、ビルの上に佇んでその煌めきを見つめた。人間には見えぬ彼の姿が、夜の風に溶け込む。

リヴォールはその後、静かに日本の京都へと舞い降りた。
竹林が揺れる小径をゆっくりと歩き、どこからともなく漂う線香の香りに誘われながら、彼は古の神社を訪れた。
神社の境内には人々の祈りが重ねられており、その小さな祈りが力を持たぬながらも、粛々と世界を支えているかのように感じられた。
人々の目には決して見えない存在でありながら、彼は人間が持つ静かな信念に一瞬だけ触れるように佇んでいた。竹林に風が吹き渡り、葉がさらさらと揺れるたび、彼の黒い影がわずかに伸びた。

次に訪れたのは、ブラジルのリオデジャネイロだった。熱帯の太陽が地平線に沈み始めるころ、彼は山の上にある巨大なキリスト像を見上げた。その象徴的な姿は、祈りを捧げる者たちの心を繋ぐ存在であり、人間が理想とする救済の象徴でもあった。リヴォールはふと笑みを浮かべ、キリスト像の影に潜みながら、人間が描く「神」の像を遠くから観察した。彼には理解し難い信仰の形であったが、彼らの想いが時代を越えて形を成す様に、一種の興味を抱かずにはいられなかった。熱帯の風が彼の姿を掠め、彼はそのまま静かに空へと舞い上がった。

やがて彼は、パリのエッフェル塔へと向かい、その鋼鉄の塔の上に佇んだ。夜のパリは無数の街灯と建物の窓から漏れる光に包まれ、まるで星々が地上に降りたかのような光景を作り出していた。人々が愛と夢を語る街であり、喜びと悲しみが絶え間なく生まれる場所。彼はそんな地上を、まるで違う次元から覗き込むように見つめ、時折、恋人たちが交わす言葉や、仲間たちの笑い声が微かに耳に届く。彼の目には無情であるように映るが、同時に儚い美しさも感じていた。

こうしてリヴォールは、ただの観光客のように1963年の地球を歩き回り、あちらこちらに影を落とした。だが、その一瞬に感じた地球の美しさと脆さは、彼にとって特別な記憶とはならないかもしれない。彼にとって、この星の光景は小さな泡のようなものに過ぎず、いつか消えてしまう存在でしかなかった。
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