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■1 大自然の壮大な景色に圧倒される。

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薄暗い午後の光が、東京の喧騒を忘れさせるように、パワーストーンショップ「結びの石」に静かに降り注いでいた。
店内は、まるで異次元の風景に包まれたかのような静けさと神秘が漂っている。
外の繁忙な街並みとは対照的に、ここでは時がゆっくりと流れているかのようだった。

石たちが光を受けて微かに輝きを放っている。
東京の中心にありながら、異なる世界に迷い込んだかのような錯覚を覚える場所。

並べられたパワーストーンたちは、長い年月を経て自然の中で力を蓄えたものばかりで、その神秘的な輝きは人々の心の奥底にまで響くと言われていた。
無意識に潜む恐れや願望までも映し出すというその力は、訪れる者たちに深い影響を与え、ただの装飾品ではなく魂と共鳴する石が見つかる「聖域」として崇められていた。

一条 零(いちじょう れい)、20歳。

零は手元の石を磨きながら、その力を感じ取るかのように瞑想していた。
幼い頃から両親が営むこの店で、彼は石に込められたエネルギーを直感的に感じ取る能力を身につけていた。両親が選び抜いた石たちは、ただ美しいだけではなく、人々に必要な癒しや力を与える存在であると評判だった。零もまた、その感覚を自然に受け継ぎ、石と向き合うたびに、それ以上の何かを感じ取っていた。

「石はただの物ではない。人の魂と繋がる存在だ。」
零はそう感じながら、ブレスレットとして編んで身に着けているルビーを、さらに深く見つめた。
ルビーの赤い輝きが脈動し、まるでその力を発する準備をしているかのようだった。 
零は腕に感じる微かな振動に集中した。
ルビーの脈動が、まるで心臓の鼓動のように彼の体に響いてくる。この瞬間、彼は石がただの装飾品ではなく、何かもっと深いものを持っていると確信した。
「この石には…何かが宿っている。」

傍らにいるソマリ猫のハルが、店内を駆け回る姿に、零は自然と微笑んだ。
彼女の茶~黄金色の毛並みは、光を受けて輝き、店内に静かに流れる時間に生き生きとした活力を与えていた。ハルは単なるペットではなく、零にとっては心の支えであり、店の守り神のような存在だった。
ハルは普段はかなり、遊び好きな活発な子だったが、今は少し眠そうにしている。

そんな静けさを破るように、扉が静かに開かれた。「いらっしゃいませ。」零の声が店内に響くと、外の光と共に鈴屋 麻美(すずや あさみ)が入ってきた。
麻美は21歳、看護学校を卒業したばかりで、新しい生活をスタートさせたばかりだが、どこか心に癒しを求めているかのような表情を浮かべていた。
麻美はその端正な顔立ちと落ち着いた佇まいで、訪れる場所に自然な和やかさをもたらす。

麻美が店内に足を踏み入れると、心の中にずっと押し殺していた疲れが、ゆっくりと解放されるような感覚が広がった。
「やっぱり…ここの石たちには何か特別な力があるのかもしれない…」
麻美はそんな思いを抱えながら、心の奥で静かに癒されていくのを感じた。

「こんにちは、零君。今日は何か特別な石が見つかるかしら?」麻美の声は、零にとっていつものように優しさに満ちていたが、その瞳には何か特別な期待が感じられた。

「今日は特別な入荷があったんだ。」零は微笑みながら、棚の奥から深紅のルビーを取り出した。その光はまるで燃え盛る炎のようで、石そのものが生きているかのように見えた。「火の魔力を宿しているなんて説もあるみたいだよ。」

麻美はその光に見入った。彼女の瞳はルビーの輝きを映し出し、まるでその内なる情熱に呼び覚まされたかのようだった。「魔力…もし本当にそうなら、すごいわね。」
 「このルビーを持っているだけで、心の中に隠れた情熱を呼び覚まし、自分自身を奮い立たせる力があるってね。だから、何か新しいことを始めようとしている人にはぴったりかもしれない。」
零はそう言いながら、ルビーの輝きが麻美の手に伝わるようにと手渡した。

零は肩をすくめながらも、「まぁ、実際に魔力があるかはわからないけどね。でも、なんか特別な力を感じるんだ」と微笑んだ。


━━その瞬間━━

店内の空気が重くなり、静寂が押し寄せた。
空間が揺らぎ、別次元から何かが引き寄せられるような感覚に包まれる。
激しい光が零、麻美、そして常連客の守田 龍夜(もりた りゅうや)を包み込む。

「何だこれは?」零はカウンターに手を伸ばし、掴もうとしたが、光に飲み込まれ、意識が遠のいていく。
麻美の声も守田の鋭い表情も、全てが光に飲み込まれ、次の瞬間には、異世界の草原が彼らを迎えていた。

「ここは…どこ?ハル…どこだ…?」零は周囲を見渡しながら、愛猫がいない事に気づく。

━━━━眼前には大自然の壮大な景色が広がっていた。



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